「人と人が繋がれる場所でありたい。」やさしさで溢れた「たこ湯」②

大阪府豊中市にある「露天風呂たこ湯」は、外観、浴室、食べ物、オリジナルグッズなどのちょっとした小物……どこをとっても名前の通り、”たこ”がたくさん。心が躍ってしまうワクワクした仕掛けがありながらも、銭湯特有の落ち着く感じもあって……。
前回は、たこ湯のコンパクトながらもしっかりとあたたかいサウナ室や、屋号にもなっている露天風呂などの浴室、そして”たこ焼き屋”など、施設全体をご紹介しました(未読の方はぜひ→たこ湯①)。

たこ湯は、店主の濱岡佳子さんとそのご主人、息子さん、そして先代である佳子さんのお母さんという家族経営の銭湯。取材時もご家族で迎え入れてくれました。今回は、店主である佳子さんにたこ湯ができた背景、思いなどを伺いました。

目次

前身は、”お風呂屋さん”と”たこ焼き屋さん”

――まずは、たこ湯ができたきっかけを教えてください。

元々は「有田温泉」という昔ながらのお風呂屋さん……銭湯をやっていまして、そこを継ぎました。私で3代目。銭湯生まれ、銭湯育ちなので、ここをやることになったのは必然という感じやったかな。もともと、たこ湯周辺には風呂なしのアパートが多くて。みなさんに利用してもらっていました。たこ焼き屋もね。

――え、たこ焼き屋?

そうそう(笑)。両親が銭湯をやって、私は、今のたこ湯の自転車置き場あたりで「たこ焼き屋さん」の屋台をやっていて。流行ってたんですよ。10個100円やし、近所の子どもたちも買いに来てましたね。今はたこ焼きも値上がってしまいましたけど……。

――10個で300円。じゅうぶん安いと思いますよ。

確かに今の時代では手にとってもらいやすいかも。まぁ、いろんな人に食べてもらいたいからね。

――”有田温泉”と”たこ焼き屋さん”はどうして一緒になったんですか?

阪神淡路大震災で倒壊したんよね。家族で「どうする?」って話になって、「合体しよか」って言って一緒に。当時、通ってくれていたお子さんが”たこ湯”って名付けてくれて、”たこ湯”になりました。私が設計を考えたんですけど、憩いの場を作りたくて。お風呂とたこ焼き食べたりするコミュニケーション広場みたいなのを作りたかったので、今の形になりました。

――じゃあ”たこ湯”になったのは、震災があった年ですかね?

せやね、95年の6月20日に再オープンしました。ちょうど30年。当時は本当に大変で。本当にいろいろあって……やっと再開できた。再オープンした時はすごかったですよ。

――お客さんは喜んでくれたでしょうね。

喜んでくれましたよ。やっぱり当時そういうことがあったから、余計に、人と人が繋がれる場所を作りたくて。

コンパクトな空間だからこそ生まれるコミュニティー

――そういう思いが、たこ湯のコミュニュケーション広場に繋がったわけですね。

ここ(飲食ができるエリア)もそうやけど、番台に立っていても同じことで。でも一方で、お客さんがお風呂やサウナに入っている間は”命を預かっている”って感覚やね。バイタルチェックしている感じやで(笑)。うちにはたくさんのいろんな人が来てくれはる。生後1カ月くらいの小さい子、耳が聞こえにくい方、ほんまにたくさんの方。そういうお客さんがおる時は、他のお客さんに声がけをして、見守ってもらうようにする。とにかく、みんなが安心してお風呂に入ってもらえる場所でありたい。地域密着でおりたいんです。

――本当にいろんな意味であたたかい場所ですよね。あたたかいといえばサウナ室。最高でした。ここは再オープン時からあるんですか?

せやね、サウナ室は狭いけど(笑)、お客さんが大切にしてくれている。マナーもいいしね。

――狭くても良いサウナ室だと思います。愛されてきたのが伝わります。

イスが一段しかないから、誰かが出て空いたらそっと詰めて、新しく入った人は奥に座る……みたいな流れになっていたり。ほんまに狭いから自然と会話が生まれるのか、オフ会?みたいなのもできて、みんなでランニングしたりゴルフしたり飲み会なんかもしてる。それこそ、うちで一杯やったりね。

安心できるお風呂を目指してやるべきこと

――まさにそれって濱岡さんが理想としている、コミュニケーションの場、社交場的な感じですよね。

そうなってくれてるのは、うれしいよね。ほんまに人が好き。おせっかいかもしれんけど、ほんまに人が好きやから、かまってしまう(笑)。お客さんには昔やんちゃしていた子とかもおるよ。いまは大人になって、ちゃんと仕事して……ときどきまだやんちゃしたりな(笑)。でも、どんな時でもたこ湯に来てほしい、誰かの帰れる場所であってほしい。

――濱岡さんのそのやさしさやあたたかさを(取材中)ずっと感じることができました。ありがとうございました。

コミュニケーションの場所であってほしい、誰かの帰れる場所であってほしい、そう思うからにはまだまだ頑張らなあかんね。一回でもたこ湯に来たら、もう常連やからね! また来てな!

屋号に惹かれて訪れた「露天風呂 たこ湯」。のれんをくぐった時……いや、濱岡さんに「よう来たね〜」と声をかけられた時から感じていた、あたたかさとやさしさ。その理由が少し分かった気がしました。”少し”と記したのは、たこ湯にはもっともっと奥深い魅力があるから。またすぐにでもそのあたたかさに触れに再訪したい。そう思わせてくれるぬくもりが、たこ湯にはありました。

露天風呂たこ湯
■住所=大阪府豊中市曽根東町6-7-15
■営業時間=15:00~24:00
■定休日=木曜日、第3水曜日
■入浴料=<大人>入浴料600円、入浴料+サウナ750円
※そのほかの詳細は公式HPからご確認ください

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