2024年7月、山中湖にリニューアルオープンしたサウナ宿が、早くも話題になっています。その名も「しずく」。こちらの最大の特徴は、なんとすべての客室にサウナが付いているということ。それだけにとどまらず、客室インテリアの世界観はどこもかしこもフィンランド。どこを見ても「かわいい！」という言葉を思わずつぶやいてしまう。見るものすべてが「söpö（＝フィンランド語で「かわいい」の意）」な、デザイナーズ旅館です。
気になる「しずく」の前身は、「山中湖畔の宿 多賀扇（たがおぎ）」。ここで「ああ、なるほど」と合点がいったサウナ好きも多いのでは。なんでも多賀扇の若旦那・山口哲弘さん（以下、山口さん）は、大のサウナ好き。多賀扇の大浴場にあったサウナは、入るとすぐに「サウナ好きが作ったんだろうな」とひしひしと感じとれる、きめ細やかな気配りが散りばめられていました。その「多賀扇」が全面リニューアルしたサウナ宿となれば、これは、期待大！
今回は「しずく」若旦那・山口哲弘さんにインタビュー。しずくの立ち上げのエピソードや山口さんのサウナに対する思いまで、たっぷりとお伺いしました。
お話をうかがったのは、「しずく」若旦那・山口哲弘さん。
――”全室サウナ付き”というキャッチコピーに期待に胸を膨らませて伺いましたが、まず門構えにびっくり。通常の旅館とは一線を画すアートな感じが、すごくかわいいです！ 入る前から、かなりワクワクしました。
「ありがとうございます！ とはいえ、今回のリニューアルは客室中心で行なったので、外観は多賀扇時代と、ほとんど変えていないんですよ。ただ、いわゆる『普通の旅館』感は払拭したかったので、門構えを黒塗りにし、フィンランド風のデザインアートを施しました」
――黒っぽい門構えに、抽象的でほっこりしたパステルカラーのアートワーク。あ、絶対におしゃれな宿だなと、入る前からひしひしと伝わってきました。旅館の門をくぐると、フィンランドの世界観が目の前に広がっていて。客室に入る前から、すでに心が躍っています。
「『しずく』のデザインワークは、EAP（イープ）というデザインチームにディレクションをお願いしました。遊び心のあるデザインがインテリアやアメニティーに散りばめられているので、ぜひ楽しんでいただけたらと思います」
――もしかしてスタッフさんの制服のシャツ、「しずく」と刺繍されていますか……？
「あ、気づかれました（笑）？ スタッフの制服は『途中でやめる』というアーティストさんに手がけていただきました。シンプルなシャツにリメイクで刺繍をしていて、『しずく』『SZK』『くるくる』の3種類があります。よーく見ると、宿名が刺繍してあるデザインが、おもしろいですよね。今みたく、お客さんとのコミュニケーションのネタになればいいかなと思って。遊び心です」
――キーのデザインも、めちゃくちゃかわいい。本当に細かいところまで、こだわりつくされていますね！
「今でこそカードキーやスマホキーが主流になっていますが、こうやって目で見て手で触れてデザインやアートを楽しんでいただけるのもいいかなと思って。オリジナルグッズも作っているんですよ。おすすめは、富士山サウナハット。多賀扇時代から継承しているもので、デザインをしずく仕様にリニューアルしています。多賀扇時代に、このサウナハットだけを買いに来た人がいたんですよね。『サウナに入っていかれないんですか？』と聞いたら、『急いでいるんで！』と（笑）。サウナハットが宿のPRになればいいなと思っていたので、『サウナハットを見て調べてきました』というサウナ好きの方がいると、うれしいですね。サウナポンチョやオリジナルビール『SZK BEER』も販売しているので、ぜひチェックしてもらいたいです」
サウナ体験がメイン。サウナを部屋の中心に据えた個性が光るアートな客室
――（部屋にあがると……）これまたびっくり。めちゃくちゃいいじゃないですか！ 各部屋で、テーマが違うんですね。
「気温が低いフィンランドでは室内で過ごすことが多く、インテリアが大切にされているカルチャーがあります。そういったカルチャーを受け継ぎたいという思いで、部屋のインテリアは大切にしました。落ち着いたグレージュをベースにした、スモーキーなアースカラーでデザインしました。オブジェなどもすべて、自然からインスパイアされています。ととのいスペースも部屋のテイストに合わせて、部屋ごとに変えています。部屋は全14室、7タイプ。うち富士山ビューは9部屋で、反対側は山中湖ビューとなっています」
――アメニティーも、とってもかわいいです。こういうちょっとしたことが、うれしいですよね。サウナが部屋のど真ん中にあるのも珍しい。
「客室にサウナがある宿は数ありますが、部屋の片隅にサウナがあったり、露天風呂のようにバルコニーにサウナがあることが多いのかなと思います。そこをしずくでは、サウナをメインに据えました。これは、しずくに来たらサウナを自由に楽しんでもらいたいという思いからです。例えば、カップルで訪れた場合、男性がサウナに入りながら女性はソファに座っておしゃべり……という楽しみ方もしていただけます。これって、サウナが部屋の中心にあるからこそ、できるんですよね。ガラス張りのデザインにしたのも、そういった理由からです」
