名古屋に登場した超狭小サウナ「SAUNA.」(サウナドット)。第1回、第2回では、コンパクトながら充実した設備についてご紹介しました。限られたスペースの中に数々の工夫が見られ、妥協なきサウナ愛が伝わってくる施設は、どうやって生まれたのか? 訪れる人にどのような価値を提供したいのか? 今回は、施設オーナーである河野亮磨社長に話を聞きました。
目指したのはとにかく清潔感のあるサウナ
――2023年秋にリリースを見たときになぜ「超狭小」なのだろう、と思いました。逆張りの発想がユニークですよね。どうして、あえて狭いスペースにサウナをつくろうと思ったのですか?
「まず、以前からサウナ施設をつくりたいとは考えていました。しかし、出店する場所を探す中で、これ! と思える物件がなかなか見当たりませんでした。悩みながらいろいろと内見をしていたのですが、一緒に物件を見て回っていたサウナ王太田さんが、ここがいいよ、と言ってくださいました。天井が高い点が気に入った理由で、そうなの? じゃあ、ここでやってみるか、と決断しました」
――目指した施設のイメージというのはあったのでしょうか。
「とにかく清潔感のあるサウナ施設ですね。僕は床のぬめりなどが気になってしまうタイプなのできれいな施設をつくろうと思いました。スタッフが気を付けて清掃を徹底していれば、ずっと清潔なままキープできると思うし、まずはその点を第一に考えました」
座りやすい高さと絶妙な角度の長いすをオーダーメード
――施設内の設備は、かなり細かいところまで工夫されているそうですね。
「例えば、サウナ室のドア横にあるメガネ置きは市販の棚を買ってきて取り付けたものではなくて、特注でイチから作ってもらいました。サウナハット掛けもそうです。かけやすいようにサウナハットを掛けるフックの穴を小さくしてもらうように頼みました。あとはロフトの下の長椅子。ベストな高さと角度で作ってもらっています」
――あの長椅子は、実際に使いましたが座りやすい高さになっているなと感じました。角度が絶妙で、ゆったりとくつろげました。
「オーダーメードで、こちらで計算したベストな傾きに固定されています。だから角度の調節ができないんです。さらには第2サウナ室のサウナバケットが置いてある丸太の台も、使い勝手のよい高さと収まりのよい幅を測って、ベストなサイズで作っています」
――上下2段のロフトはどちらも居心地がよくて、すごく落ち着けました。一人しか入れないスペースなので、周りの人が気にならず、くつろいで過ごせますね。
「これまで会社で飲食・サービスの店舗などを手掛けてきましたが、空間デザインは結構、設計士の方との相性に左右されることが多いと感じていました。それが今回はすごく相性が合った手応えがあり、イメージした通りの空間に仕上がりました」
ぜいたくな気分を味わって楽しく過ごしてもらう空間に
――社長は個人的にサウナへ行かれたりしますか。個人的に好きな施設があれば教えてください。
「行きます、行きます! どの施設が好きかと言われると少し困ってしまいますが、池袋のかるまるは好きですね」
――アクリル製の第1水風呂「名古屋ソルジャー」は、こちらと同じく太田さんがプロデュースした、かるまるの「アクリルアヴァント」に似ています。キンキンに冷たかったので、何秒か浸かっただけで、バイブラのボタンは押せませんでしたけど……。
「バイブラを作動させると、痛いと言われますね。それぞれ好みがあると思うので、手動にしています」
――サウナストーブにHelo(ヘロ)を選んだのは、なぜだったのでしょうか。
「Metos(メトス)の展示会へ行って、その時にリリース予定として展示されていた新製品でした。せっかくですから、いち早く導入したいと思いました。それだけでなく、見た目のインパクトと熱がしっかりとサウナ室内に回る感じがあったのでこのストーブにしたいと思って。あとはセルフロウリュができたり、これでいきたい、と思いましたね」
――そのHeloストーブが2基設置されている第1サウナ室。第2サウナ室もHeloのストーブを使用。コンセプトはケロサウナですね。
「ケロの古木の香りを満喫してもらいたくて、雰囲気もできるだけサウナの本場・フィンランドに近付けたいと思い、ログハウスのサウナ小屋のような作りにしました」
――第1サウナ室の奥に第2サウナ室がある……サウナ室の奥にもう一つサウナ室があるサウナ・イン・サウナ。室温は第1サウナ室「ヘロヘロ」が96℃で、第2サウナ室「ケロパッチ」が92℃に設定されています。これには何か意味があるのでしょうか。
「第1サウナ室は30分に一度のオートロウリュですが、第2サウナ室はセルフロウリュができるようになっています。第2サウナ室はサウナストーンに水が掛かる頻度がより多く、体感温度が上がって熱く感じるタイミングが増えるので、元々の設定温度を少し低めにしています。換気をしっかりして、空気を入れ替えた方が衛生面でもよいと思いましたので」
――見えないところまで意識して心配りされていることが、よく分かりました。さらに、これから変えていきたい点などはあるのでしょうか。
「シャワーヘッドをRefaに替えようかと考えています。レディースデーを開催してみて、女性にも喜んでいただけると思えたので……。せっかく来ていただくわけですから、ぜいたくな気分を味わい、テンションを上げて、楽しく過ごしていただきたい。それで細かい点まで充実させています。休憩椅子のLafumaも、そういった気持ちで置いています。体感して、違いをぜひ確かめてほしいです」
遊び場をちょっと抜け出してくつろげる隠れ家に
――来店してくれる人に、知っておいてほしいことは何かありますか。
「いかんせん収容人数が13人ですから、すぐに入れない時があるので、その点がとにかく申し訳ないです。わざわざ遠方から足を運んでくださる方もいらっしゃいますし……」
――スムーズに入れる狙い目の時間帯、混み合うことが多い時間帯などはあるのでしょうか。
「今のところ、開店直後ならスムーズに入れると思います。昼間はタイミングにもよりますが、空いている場合も比較的あります。混むのは夜7時以降でしょうか」
――人気のサウナ施設がたくさんある名古屋で、この「SAUNA.」に足を運んでくれる人に、どのような利用してほしいですか。
「繁華街の栄にありながら、賑わいのど真ん中ではなくて、少し離れたところに出店したのは、遊び場からちょっと抜け出せる場所を作りたかったから。落ち着きたくてサウナに入りたい人は多いはず。ですから、いくらかのお金を払って、静かな環境でサウナを楽しみ、くつろぐ時間を買う……そういった使い方をしていただきたいと思っています。普段からこの近辺で働いていたり、遊んだりしている方々の、喧騒からの逃げ場というか、隠れ家のように利用していただいて、地域に根付いていければうれしいですね」
超狭小サウナ「SAUNA.」は施設に入れる人数が13人。ロッカーと下駄箱もその数だけ。満員で入れない場合もありますが、視点を変えれば、一番混んでいる時の人数が自分を含めて13人。それ以上の混雑はありません。清掃が行き届き、設備が充実し、細かいところまで心配りされた、居心地のよい空間。コンパクトながら魅力満載で、サウナをしっかり満喫できます。
土地は狭くても、工夫次第で満足の高い充実した施設が作れる。「SAUNA.」は、そのことを証明したサウナ施設といえるのではないでしょうか。ぜひ栄に訪れた際には13人限定のサウナ室を体験してみてほしい。
SAUNA.(サウナドット)
■住所:愛知県名古屋市中区栄3-20-20
■営業時間:後0:00〜深0:00(最終受付は後11:00まで)
■料金:平日90分コース=2,380円、金・土・日・祝日・祝日前90分コース=2,640円(※コースに限らず延長料金30分ごと=330円)
※詳細は公式Instagram(https://www.instagram.com/sauna.dot)または、公式HPをご確認ください。
撮影/長谷繁郎
取材・文/吉牟田祐司