銭湯サウナの人気施設が多い京都で「大人の社交場」として独特の存在感を放つ「サウナ&カプセルホテル ルーマプラザ」。SAUNA BROS. vol.8では「夏に行こう!新規&リニューアルの注目サウナ」としてご紹介しています。温浴施設として半世紀の歴史を刻み、2023年12月にリニューアルした老舗施設。その魅力はまだまだたくさん。誌面では伝えられなかった点も含め、深掘りして、このSAUNA BROS.WEBで3回に分けてお伝えします。まず今回は浴室エリアから。本誌とあわせて、ぜひお楽しみください。
「祇園さん」の参道にポップなネオンサイン
1000年以上にわたる歴史を誇り、東京の神田祭、大阪の天神祭とともに日本三大祭に数えられる八坂神社の祭礼・祇園祭で賑わう京都・祇園。「サウナ&カプセルホテル ルーマプラザ」(以下、ルーマプラザ)は、祇園四条駅から約200m、地元の人が親しみを込めて「祇園さん」と呼ぶ八坂神社に続く参道・祇園商店街にあります。京都観光の拠点に絶好のロケーション。なおかつ、温浴施設、宿泊施設としてサービスが行き届いており、ここ自体がサウナ旅の目的地になります。
京都には銭湯サウナの人気施設が数多くあります(京都特集はこちらから)。その中でサウナ&カプセルホテルとしてひと味違う存在感を放ち、半世紀もの歴史を築いてきた老舗施設。古都・京都の街並みを一望できるロケーションでの外気浴がたまりません。足繁く通う常連客も多く、居心地の良さは折り紙付きです。
祇園四条駅を出て、南座の前から祇園商店街を八坂神社に向かって歩いていると……おっ、ポップなネオンサインを発見! ここがルーマプラザの入口です。エレベーターで6階に上がればサウナ専用のフロント。サウナ利用は24時間。毎日前9:00から後0:00まで順番に行われる浴室の清掃時間帯でも、清掃中でないエリア、清掃が終わったエリアは利用可能です。宿泊の場合は、3階でチェックインします。
フロアマップでは浴室は6階と7階の2フロア。ですが……実はそれだけではありません。リニューアルで7階のさらに上に温浴槽と外気浴スペースが誕生。おかげで実質的に浴室エリアは3フロアに。サウナは、6階に広々としたロウリュサウナ、7階にフィンランドサウナと塩サウナがあり、あわせて3つ。浴槽は6階に白湯、電気風呂、ジェットバス、水風呂。7階に温度が異なる2つの水風呂、信楽の天然水を沸かした温浴槽があり、新設フロアに美泡風呂がお目見えしました!
検討を重ねてオートロウリュ3秒→送風20秒に決定!
メインサウナである6階のロウリュサウナはリニューアル前、ロッキーサウナの名称で親しまれてきました。ロッキーサウナとは、ストーブの上にサウナストーンが山のように積まれた、ロッキー山脈に由来するサウナの名称です。長年にわたって熱気にさらされてきたベンチや壁板の木材を張り替えただけでなく、サウナ室内のデザインを一新。熱源は新しいストーブに入れ替え、さらに1基を増設。2基を稼働させて、熱気をパワフルに生み出しています。
名称が変わっても、山を成すサウナストーンは変わらず。ストーブはメトスのikiとジールの2基を設置。20分ごとにオートロウリュが作動します。90℃に設定されたサウナ室の体感温度がぐっと上がります。3秒間の放水の後、送風機で20秒にわたって熱気が届けられ、肌に当たってさらにアチアチに。しっかり熱さを楽しめる仕掛けが施されているのです。夕方以降(後4:30、後6:30、後8:30の3回)は、スタッフによるアウフグース「熱波ロウリュ」を味わえます。
ロッキーサウナ時代にもオートロウリュとアウフグースのサービスはあったものの、オートロウリュから送風の流れは、リニューアルするにあたって、とくに力を入れた点のひとつ。どの時間帯に訪れてもアツアツの風を受けられるように、サウナ室の設計を依頼した建築士、ストーブメーカーであるメトスの担当者と打ち合わせを重ねて、アウフグースのサービスに引けをとらない満足感を得られるように試行錯誤しながら検討を重ねたそうです。
当初の予定ではオートロウリュは30分ごと、放水時間は5秒だったのが、「もっと回数は増やした方がよいだろう、5秒の放水では体感が熱すぎる」とスタッフの意見が一致して、オートロウリュが作動するのは20分ごと、放水は3秒に改め「これがベスト!」と言える設定が決まったそうです。
さらにサウナ室の一角には……寝転がれるスペースが設けられました! 寝サウナが好き、体の上から下までムラなく温めたい、そんな人にはうれしい限りです。
水風呂はリニューアル前より広くなり、サウナ室を出た正面にあります。水温は17℃。すぐ横に7階に上がる階段があって、スムーズに外気浴に向かえます。内湯スペースにもアディロンダックチェアがずらりと並んでいて、フロアを移らず、そのまま休憩するのもよし。支配人によると、休憩がより快適にできるように、フットレストの設置も検討しているそう。ロウリュサウナに出入りするドアの横にある保冷機に冷タオルがあるのもうれしい配慮。サウナで火照った体をしっかりクールダウンできます。
フィンランドサウナの特注ラドルに技ありの工夫
7階のサウナ室は、フィンランドサウナと塩サウナの2種類。リニューアル前は、バックヤードだったスペースに新設されました。利用者に開放されるスペースが広がったことになります。浴槽もサウナ室も数が増え、真新しくてピカピカ。これまでルーマプラザになかったスタイルのサウナが登場しました。
リニューアルで新設されたフィンランドサウナは、「自分たちの手でロウリュを楽しみ、サウナを満喫してもらいたい」という意図で設置されたルーマプラザ初のセルフロウリュができるサウナ室。80℃に設定された室内は、ほの暗く、耳にやさしいBGMが静かに流れています。
ストーブはメトスのジールで、サウナストーンは蓄熱性に優れたケルケスストーン。アロマ水をかけ回すと歯切れのよい音が鳴るとともに、すぐさま熱気と香りが広がります。特注のラドルは、たっぷり500ml以上をすくえる大きさ。側面に6つの穴が空けてあります。サウナストーンに少しずつ注げるようにした「技あり!」の工夫です。柄が60cmあるのは、やけどをしない配慮。自分がいる位置からもっとも奥にロウリュする場合も、腕がストーブの真上に来ることなく、アロマ水をまんべんなく全体にかけ回せます。据え付けられている砂時計を返すことで10分計れ、ロウリュする間隔の目安にできるのも助かります。
塩サウナは以前もありました……が、リニューアルを機に場所を変えて一新。サウナ室には信楽焼のタイルが貼られていて、陶板浴で体を温めながらの塩サウナが楽しめます。使われているのは日本海の天然塩。粒は粗めです。いきなり肌に塩を塗り込むのではなく、汗で溶け、白から透明に変わったところで、やさしくマッサージするのがルーマプラザ推奨の楽しみ方。浸透圧の効果でより発汗がよくなり、皮脂が排出され、角質が取れて、肌がすべすべに。ビフォーアフターではっきり違いが分かります。
7階にある3つ並んだ浴槽は、2つが水風呂。14℃の強冷水と20℃の冷水で、好みで使い分けるのもよし、冷々交代浴を楽しむもよし。その後に待っているのがルーマプラザ名物の外気浴です。空を見上げながら、体を伸ばしてのんびりと……。観光客で賑わう祇園にいることを忘れてしまいそうになります。
外気浴スペースはもう1つ。リニューアル後に開放された、美泡風呂がある展望浴スペースにも。らせん階段を上ると、そこが本当の最上階! 生まれ変わったルーマプラザを象徴するスペースといえるでしょう。眺めも外気浴の心地よさも控えめに言って最高!
至るところに「大人の社交場」ならではの心配りが
グレードアップしたのは、もちろんサウナ室、水風呂だけでなく温浴槽も。リニューアルで7階にあった薬湯がなくなってしまったものの、信楽の天然水風呂、美泡風呂がお目見えしています。
6階の内湯は、浴槽自体はつながっていますが、手前にある白湯、奥にある電気風呂とジェットバスで温度が違うというから驚きます。白湯は41.9℃の設定。低周波の電流、水流で体を刺激してほぐす電気風呂、ジェットバスはそれより少し低い40℃になっています。浸かり心地を意識して微調整された湯加減になっているという細やかさ。そういった配慮が随所に見られるのです。
関西のサウナ施設らしく、サウナパンツが用意されていて、サイズは2種類。体形にあわせて選べます。アカスリタオルは硬めと柔らかめを用意。パーテーションで区切られた洗い場のシャワーフックは3カ所に。立ち、座り、横向きでシャワーを浴びるのにちょうどよい位置に取り付けられ、3段階の角度調整ができるようになっています。鏡は正面に取り付けてあるだけでなく、パーテーションにも! これがまた、鏡を見ながらひげを剃るのにちょうどいい位置なのです。体を洗っているだけでも、さりげなく、行き届いた心配りがされていることに何度も気付いて、はっとさせられました。
7階の信楽の天然水風呂は、まるで温泉。というか、温泉でないことが信じられないくらいです。体が芯から温められる感じは、きっと信楽焼のタイルから発せられる遠赤外線効果のおかげ。わざわざ滋賀から運んでくる天然水の水質のよさは肌で感じ取れます。とろみのある化粧水に浸かっているようで、肌がすべすべになりました。
屋上エリアにある美泡風呂も浴槽タイルは信楽焼。細かな気泡が体を包み込むバイブラ風呂で、やさしく全身をマッサージされているよう。ソフトな刺激でゆったり浸かることができます。浴槽の中に仕込まれたLED照明が少しずつ色を変え……、夜は幻想的な雰囲気に! 光の移り変わりが囲いの上から見える京都タワーのイルミネーションに呼応しているようにも見えて、ずっと眺めていられます。
歴史ある寺社仏閣が残る、趣ある京都の街並みを一望できるロケーションで、24時間サウナを楽しめるルーマプラザ。「大人の社交場」サウナ&カプセルホテルならでは居心地のよさがあります。食事やリラクゼーションなど、アフターサウナもしっかり楽しめますので、次回、詳しくご紹介します。
ルーマプラザ
■住所:京都府京都市東山区祇園町南側575 フジビル
■営業時間:[サウナ]24時間営業(清掃時間=前9:00~後0:00※各エリアを順次清掃)、[カプセルホテル]チェックイン=後2:00、チェックアウト=翌後0:00
■利用料金:[サウナ]レギュラーコース(前9:00~後11:00/前1:00)=2,600円、ナイトコース(後11:00~翌前5:00/後0:00)=3,200円、モーニングコース(前5:00~9:00/前10:00)=1,800円、1時間コース=1,700円(前9:00~翌前5:00 )、ナイト3時間コース(後11:00~翌前5:00)=2,600円
※その他詳細は公式HPをご確認ください
「SAUNA BROS.vol.8」<発売中>
■定価:1,137円(いいサウナ)
■発行:株式会社東京二ュ―ス通信社
全国の書店、ネット書店(Fujisan.co.jp<https://www.fujisan.co.jp/product/1281703515/new/?>ほか)にてご購入いただけます。
撮影/佐藤佑一
取材・文/吉牟田祐司