京都・祇園でサウナ施設として半世紀もの歴史を築き、長く愛され、足繁く通う人も多い「サウナ&カプセル ルーマプラザ」(以下、ルーマプラザ)。SAUNA BROS. vol.8「夏に行こう! 新規&リニューアルの注目サウナ」で4ページにわたってご紹介、このSAUNA BROS.WEBでも深掘りしてきました。前編、中編に続く後編では、リニューアルに至った経緯と狙い、これからのビジョンについて、支配人の三好彦治さんに聞いたインタビューをお届けします。
半年休業して30年ぶりの大リニューアルを敢行
――八坂神社につながる参道の祇園商店街にあって、まさに観光地のど真ん中。こんなところにサウナ&カプセルがあって、外気浴は絶景の眺め! 泊まってみて非常に快適でした。リニューアルのための休業期間は半年間。結構大掛かりな工事だったのですね。
「そうですね。設備だけでなく、施設全体も古くなってしまっていましたから。前回の大規模リニューアルからは約30年。施設全体でいえば、およそ50年が経過していたので」
その昔、カプセルホテルのエリアは女性用サウナだった!?
――そんなにも長い歴史があるわけですね。もしかしてルーマプラザになる以前もサウナ施設があったわけですか?
「ここにビルが完成した時点でサウナはあったそうです。この建物はフジビルという名前で、たしか「フジサウナ」か「サウナフジ」いう名称だったと聞いています。男性専用ではなく女性も受け入れていて、現在はカプセルホテルになっているエリアが女性用サウナだったそうです。それが約30年前のリニューアルで男性専用のサウナ&カプセルになったみたいです」
――それが「サウナ&カプセル ルーマプラザ」として今に至るわけですね。施設名の意味は、直訳した「うわさの広場」みたいな……。
「そういうことですね。話題性のある施設ということで」
入浴エリアが拡大! とくに屋上フロアがグレードアップ
――なるほど。そして今回のリニューアルでは7階から4階までのサウナ施設部分が全面改装されました。老朽化した部分に手を入れただけでなく、かなり大掛かりな工事だったわけですが、どういった点に重きを置いてリニューアルされたのでしょう。
「まずはご利用いただくお客様をお待たせすることがないように、省力化を図りました。具体的にいえばレストランでのタブレット端末を使ったオーダーシステムとか、お会計時の自動精算機とか、新しい機器を積極的に導入したほか、設備関連を一新しました。
そしてサウナをはじめとする入浴エリアはスペースの拡大ですね。最新の設備を導入するとともに、お客様にご利用いただけるスペースをできる限り広くしました。とくに屋上フロアは以前から、多くの方に喜んでいただけていたので、かなり力を入れて、グレードアップさせています。7階のフィンランドサウナ、塩サウナが並んでいる部分、新しく美泡風呂を設置したもう1つ上のフロアは、以前はバックヤードで、お客様には開放されていませんでした。」
オートロウリュとセルフロウリュに数字のマジック
――サウナ室に関してリニューアルで意識されたことは?
「特定の人をターゲットにするのではなく、お客様に選んで楽しんでいただけるよう、バリエーションを持たせることを考えました。リニューアル前のロッキーサウナでもオートロウリュはありましたが、より満足していただけるように工夫しました。本当はスタッフによるアウフグースの回数をもっと多くしたいのですが、人員配置や人材育成の都合でなかなか難しい。それでオートロウリュが作動して、その熱気をお客様に届ける送風機を6階のロウリュサウナに設置したほか、お客様ご自身の手によるセルフロウリュを楽しんでいただけるフィンランドサウナを7階に増設しました」
――以前はロッキーサウナと塩サウナの2つだったのが、現在はロウリュサウナ、フィンランドサウナ、塩サウナと3つ。リニューアルによってサウナ室は1つ増えていますね。ロウリュサウナのオートロウリュは20分間隔です。この設定はどうやって決められたのでしょうか。
「実際に試して決めました。オートロウリュの間隔のほか、水の量、送風の強さと時間も含めて検討。当初は30分に1回の予定でしたが、それでは物足りないという意見があり、最終的には経営判断を下す社長の指示で、20分ごとにして回数を増やしました。注水と送風の時間も検討を重ねた結果、水を3秒注いで風を20秒送る設定に決まりました。当初は5秒注水する予定でしたが、試してみたら熱すぎましたね。それで変更しました」
ラドルにたこ焼きの「粉つぎ」のような仕掛けが
――寝サウナできるスペースがあるのもうれしい点です。また7階に新しくできたフィンランドサウナではロウリュするラドルが大きくて驚きました。しかも、たこ焼きの生地を鉄板に注ぎ入れる「粉つぎ」のように側面に穴が空いていて、アロマ水をまんべんなくかけ回せます。柄が長いので、手がストーブの上にくることなく、奥までしっかり届きますし。
「サウナ室の空間デザインは建築士の方と話し合い、メトスさんにも意見を聞いて決めました。ラドルは特注です。ストーブの上に手がくると、やけどしてしまう危険性がありますから、柄は60cmあります」
信楽焼の陶板を浴槽にもサウナ室にも採用
――塩サウナはリニューアル前も7階にありましたね。
「日本海の天然塩を使用している点などは変わりませんが、以前とは場所が変わって新しくなりました。壁や座面などには、リニューアル前は塩サウナがあった場所に新設した信楽の天然水風呂と同じ、信楽焼の陶板を使っています。遠赤外線を放つ素材ですので、気持ちよいだけでなく、健康面にもよい影響があると期待しています」
――フィンランドサウナ、塩サウナが並び、その前に温度の違う2つの水風呂、信楽の天然水風呂が並んでいます。14℃の強冷水、20℃の冷水と選択肢があるのもありがたい!
「人それぞれ好みがありますので、選んでいただくのが良いと考えています」
――温浴槽も6階の大きな湯船に白湯、電気風呂、ジェットバスがあり、7階に信楽の天然水風呂、さらに美泡風呂と、バリエーション豊かですね。それぞれ違った入り心地があります。
「信楽の天然水風呂は、滋賀の信楽から天然水を運んできて沸かしています。信楽焼の陶板は、細かな泡が絶えず吹き出している美泡風呂でも使用しています」
京都のサウナ&カプセルホテルを守り、より良く育てていきたい
――実際に入ってみて、体に良い成分がしみ込んでいくような感じがしました。京都の街並みを一望できて、眺めが抜群。夜、美泡風呂のお湯が京都タワーのイルミネーションと呼応するように色を変えて、ものすごく幻想的でした。半年間のリニューアル工事中、通っていた常連の方はさびしい思いをされていたかもしれませんが、かなりグレードアップしているので、喜んでいただけるのではないでしょうか。リニューアルをきっかけに、お客様の層もさらに広がっていきそうですね。
「京都では今、個室型のプライベートサウナは別として、新しいサウナ施設をオープンさせるのが難しくなっていると聞いています。コロナ禍で閉店したサウナ&カプセルもあるようですので、私たちとしては、この施設を大切に守り、より良く育てていかなければならないと思っています。
ご近所で会社を経営している社長さんや商店主さんなど、昔から通い続けてくださっている常連のお客様も、おかげさまでたくさんいらっしゃいますが、若い世代の方にもぜひ足を運んでみていただきたいですね。私たちの施設は、銭湯やスーパー銭湯とはお客様の層が異なり、お子様連の方はお見えになりません。”大人の社交場”として楽しんでいただければ」
スマホ持ち込み可。外気浴しながらタバコで一服も
――なるほど。それにしても、露天スペースの張り紙には驚かせられました。「当店では、露天エリアでゆっくりされるお客様や、景色の撮影をされるお客様のため、屋上エリアに限り携帯電話の持ち込みは禁止しておりません」と書いてあります。思わず二度見してしまいました。喫煙コーナーがあって、一服できるのもびっくりです。これもリニューアル前からそうだったようですが……。
「お客様の良識に委ねている部分は大きいですね。施設としてはタオルやサウナパンツなどをご用意していますが、サウナハットはもちろん、ポンチョ、ガウン、サウナマットなどを持ちこんでいただくのも自由です。マナー違反は困りますし、何かあれば、ご遠慮なくスタッフにお声掛けいただければと思いますが、基本的にはお客様それぞれが自由に楽しんでいただけることが一番だと考えています」
グレードアップした施設に息づく老舗の文化
古都・京都を一望できる絶景の外気浴が名物のルーマプラザ。施設・設備が一新されてグレードアップしつつも、長年の歴史を紡いできた老舗施設ならではの文化があり、その魅力はリニューアル後も変わらず、そのまま受け継がれています。リニューアル前を知っている人にも、初めて訪れる人にも、きっと満足していただけるはず。「大人の社交場」ならではの満ち足りた時間が過ごせます。
ルーマプラザ
■住所:京都府京都市東山区祇園町南側575 フジビル
■営業時間:[サウナ]24時間営業(清掃時間=前9:00~後0:00※各エリアを順次清掃)、[カプセルホテル]チェックイン=後2:00、チェックアウト=翌後0:00
■利用料金:[サウナ]レギュラーコース(前9:00~後11:00/前1:00)=2,600円、ナイトコース(後11:00~翌前5:00/後0:00)=3,200円、モーニングコース(前5:00~9:00/前10:00)=1,800円、1時間コース=1,700円(前9:00~翌前5:00 )、ナイト3時間コース(後11:00~翌前5:00)=2,600円
※その他詳細は公式HPをご確認ください
「SAUNA BROS.vol.8」<発売中>
■定価:1,137円(いいサウナ)
■発行:株式会社東京二ュ―ス通信社
全国の書店、ネット書店(Fujisan.co.jp<https://www.fujisan.co.jp/product/1281703515/new/?>ほか)にてご購入いただけます。
撮影/佐藤佑一
取材・文/吉牟田祐司