最新号SAUNA BROS.vol7の「京都銭湯サウナ特集」で紹介している「五香湯」をクローズアップ! 本誌では紹介しきれなかった「五香湯」。
「五香湯」さんがあるのは、京都の大動脈である五条通と大宮通が交わる、五条大宮交差点から歩いて1〜2分ほどのところ。五条通から50メートルほど北上すると左手に見えてきます。 マンション風の外観ながら、実は1934年(昭和9年)創業で、2024年に90周年を迎える超老舗の銭湯です。90年ってすごい……。さらっと戦前の数字が出てくるあたり、取材早々やはり京都だなぁと強く実感したのでした。
戦前からこの五条大宮の地で銭湯を営んできた「五香湯」さん。今の外観となったのは昭和63年のリニューアルの時で、サウナ自体はその前からあったそうです。 「サウナがいつできたかは分からんけど、僕が小さい頃にはもうあったねぇ」と話す現在の店主、松林浩史さん。3代目である松林さんがお父様から店を引き継ぎ、暖簾を守っています。
以前から、京都をはじめ関西圏の間では「五香湯」さんは人気があり、サウナ好きのお客さんは足繁く通う人気施設でしたが、2021年にドラマ「サ道」で紹介されたことから、客足が急激に増えたそうです。今では全国からサウナ好きが訪れる施設となりました。
「ドラマを観て、ウチのサウナに入るためだけに九州から京都に来ましたって方もいたりして、そういうのを聞くとやっぱりうれしいね!」
メディアで取り上げられたことによる急激なお客さんの増加にも、好意的に喜んでくださっている松林さんのお言葉を聞け、我々取材陣もホッとしたのでした。
2つのサウナ室。灼熱の空間
ドラマの舞台にも選ばれる「五香湯」さんのサウナ、何がそこまで魅力的なのでしょうか!?
その前にお知らせしておきたいのですが「五香湯」さんは、男女に広さや設備の差がありません! 左右対称に反転しているだけで、湯船やサウナなどすべての大きさが基本的に一緒です。
男性側と女性側で設備や広さに違いがある施設も多いなか、それだけで女性にはうれしいですよね。
サウナ室を見てみましょう。SAUNA BROS.vol.7でもご紹介しましたが、「五香湯」さんのサウナ室は「サウナ室の奥にまたサウナ室」があります。面白い作りです。
サウナ室の中に、仕切りがあるんです。何でしょう、ガラス1枚隔てるだけで、客観性が出て、サウナを楽しんでいる人を端から見ている……まるでテレビでサウナ室を見ている様な気さえします。サウナ室にいるので実際に熱いんですけどね。
扉を開けて手前の部屋は遠赤外線のサウナ室(仮に「遠赤の部屋」と呼びましょう)、80度くらいの少し低めの設定温度です。しかし、遠赤効果もあり、熱すぎないので長く入ることもでき、しっかり汗をかいて楽しむことができます。
「遠石の部屋」では20~30分に1度、オートロウリュがあるのも魅力。
さぁ仕切りの扉を開けて、奥の部屋へ行きましょう。上述したように奥の部屋はボナサウナの部屋(こちらは「ボナの部屋」と呼びます)。イスの下にあるヒーターから熱が発せられ、座っていると足下、というかふくらはぎからじわじわと熱を感じます。
この「ボナの部屋」はとにかく熱い! とはいえ踏力的なヒリヒリする熱さではなく、湿気も十分あっての「熱いサウナ」。サウナ室の中のサウナ室なので、扉の開閉による温度低下の影響も一切なく、ひたすら熱いんです。座るとすぐに、逃げ場のない熱が、マットや背もたれなどを熱くしていることに気付くはず。
でも、そんな高熱のマットや背もたれを、だんだん自分の体温に慣らし、その熱を支配していった時、えも言われぬ達成感と安心感があるのは私だけでしょうか? そして我慢すればするほど、その後の水風呂が気持ち良い……。というわけで、高温のサウナを求める方は皆「遠赤の部屋」を素通りし、奥の「ボナの部屋」へと向かいます。
店主の松林さんに何度くらいあるのか伺って見ると、なんと設定では90度くらいなのだそう。筆者が120度くらいあるんじゃないですかと問うと、「みんな温度だけを見るんやけど、サウナの熱源には電気・ガス・ボナって大きく分けて3つあって、それぞれ体感温度に差があってボナの方が低い温度で体感は熱く感じるんよ。ボナが85度やったら、電気(サウナ)は110度くらいにしてやっと体感温度的には同じくらいやね」とのお言葉。いやぁ、体感温度ってアテにならないものなんですね。しかし、「五香湯」さんのボナサウナは、数字では測れない、実際に入らねば分からないものがあるのも事実。是非、直接肌で体感していただきたいです。ちなみにテレビは手前の「遠赤の部屋」にしかありませんが「ボナの部屋」にもスピーカーが設置されているので、透明ガラス越しに「ボナの部屋」からでも映像を楽しめます。
京都の地下水の魅力と半外気浴
次は水風呂へ。サウナ室を出るとすぐ目の前に水風呂が大きな懐(面積)と優しさ(軟水)で待ってくれています。動線もスムーズです。
水風呂は地下の天然水、掛け流し。年間通して18度程度で、入ってみると「はぁ〜ちょうどいい〜」と心の声が漏れる適温具合です。
京都の地下水は年間通して17〜18度くらいで、冷たい水風呂を好む人からすると少し物足りないくらいなはずなんですが(筆者もシングル好き)何故か物足りなく感じないんですよね。
やはり地下水という水質の特性に秘密があるように思います。実際、18度くらいの水風呂の施設だと、夏場などはずっと水風呂に入っている人がいたりして、水風呂での混雑がおこりがちですが、「五香湯」をはじめ京都の銭湯でそういった光景を見たことがありません。
恐らく、山から流れた雪解けの水などが地下へと流れ、長い年月の間にミネラルを含みながら軟らかくなっていく中で、一切外気温に触れず、水温変化がないことが、実際の水温より冷たく感じる性質に変化しているように思います(個人の考察です)。
水温が低くなくても長時間入っていなくても、しっかり身体を冷やし満足感を味わえる水風呂。それが京都の地下天然水を使った水風呂の実力なんだなぁ、と思い知らされます。
気付いた方もいるかもしれませんが、筆者がここで「軟水」と書いているのですが、水風呂の壁に「硬水」と書かれたプレートがあります。これは以前に機械を入れて超軟水の「京軟水」(ヌルッとした肌触りの水)というものを作っていたことがあり区別するために「硬水」と書いてあるのだそう。
そんなわけで「硬水」のプレートがありますが、天然の地下水掛け流しですので安心して下さい。京都の軟水です!
水風呂の隣の扉を開ければそこは露天風呂スペース。外気浴用イスもしっかり用意されています。窓際などにも座れるので、「座るところがない」心配もありません。
地元の方も、一見さんも、外国人も、皆混ざって思い思いの場所で半外気浴。屋根のあるエリアですが、窓が開けられているので、時折、心地よい微風が通り抜けていく……たまりません。こんな素敵な空間で素敵なサウナと水風呂でセットをこなし、外気浴してる最中にふと思い出しました。ここはマンションの2階なんですよね……。信じられますか? 気分は完全にリゾートサウナでした。
男性用の外気浴スペースを見せていただいていると、背もたれ付きの立派なイスがあり、「ドラマ当時はなかったよな?」と思い、松林さんに伺ってみました。すると、京都のサウナを愛する有志で結成された「京都サウナクラブ」からドラマ「サ道」の後に寄贈されたとのことでした。
イスの裏に立派なプレートが付いていましたが、湿気などではがれてしまったようです。
「五香湯」さんも入っているこのクラブ。京都サウナクラブのメンバーにはドラマ「サ道」のプロデューサーさんもいることから、テレビ出演を記念して寄贈されたそうです。この記念ベンチは男性側にしかないのですが、男性のみなさん、外気浴の際はぜひチェックしてみて下さい!
今回はサウナに関するところだけをご紹介しましたが、「五香湯」さんは銭湯施設として、とにかく設備が充実している銭湯でもあります。次回はその設備について、深掘りしてご紹介していきたいと思います!
現在発売中のSAUNA BROS. vol.7では、ダイナミックな写真とともに「五香湯」の魅力を特集しています。是非そちらも併せてご覧ください!
五香湯
■住所:京都府京都市下京区黒門通り五条上ル柿本町590-12
■営業日:平日=後2:30~深0:30 日曜=前7:00~深0:00 祝日=前11:00~深0:00
■定休日:毎週月曜、第3火曜
■料金:490円(サウナ込み)
「SAUNA BROS.vol.7」
■発売日:2023年12月13日(水) ※一部、発売日が異なる地域がございます
■定価:1,137円
SAUNA BROS.STORE(https://saunabros.stores.jp)でも販売中! 全国の書店、ネット書店(honto:https://honto.jp/netstore/pd-book_32948979.html)などでも購入できます。
撮影/長谷繫郎
取材・文/鈴木健介