銭湯&サウナの新しいあり方を目指して/東京・錦糸町「黄金湯」②

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試作に2年! 素材もレシピも徹底的にこだわった絶品の味。ぜひご賞味あれ!

はい。続いて「コガネキッチン」のメニューをご紹介しましょう。まずはこちら。看板メニューの「ラムラムキーマ」です。

実は’20年に初めて黄金湯を取材させていただいた際に、店主の新保朋子さんから「サウナ後に美味しいカレーを皆さんに食べてほしいから、2階に食事処をつくろうと思っている」というコメントをいただいていました。そして(銭湯なので)そんなにたくさんの種類のメニューは提供できないと思います。ひょっとしたらカレーだけになるかもしれない。だからじっくりと、美味しいものを開発したいと思ってるんです」とも。

そのコメントから、およそ2年後。試作に試作を重ねたというこのキーマカレーを’22年夏に初めて食べたときは……その美味しさ、完成度の高さに驚きました。

とても銭湯の食堂のものとは思えない本格的なキーマの味わい。スパイスの風味がしっかり効いていて、焼き野菜やパクチーとの相性もばっちりです。ラム肉を使っているのは「お肉の中でも、ラム肉には身体を冷やさない効果があるから」なんだそう。こだわり抜かれた美味しさに加えて、スープ付きで1,280円というのは、お得感しかありません。


ほかに、やはりスパイシーな味わいがたまらない「チキンカレー」もおすすめです。こちらは、やはりスープ付きで……なんと850円!


そしてこちらは、やはり人気メニューの「鳥の塩麹丼」(スープ付きで850円)。手作りの塩麹でしっかりとうま味が引き出された鶏肉の、なんとやわらかいこと! 半熟の温泉卵がトロリと絡めば、さらに美味度UPです。

かつて「メニューはカレーだけになっちゃうかも」と言っていたことを、あらためて朋子さんに問いただしてみた(笑)ところ、
「そう思っていたんですよ、たしかに最初は(笑)。でも、ほかにもメニューがあった方がやっぱり皆さんに喜んでもらえるかなと思い始めてしまって。それに皆さんからリクエストをいただいてしまうと、ほかにも作りたいなっていう思いが、ますますどんどん強くなっちゃって(笑)」と。

まぁ、そうなりますよね、朋子さんなら。でも「コガネキッチン」のポリシーとして、「メニューはそんなに簡単には(安直には)増えない」というのも書き加えておきます。2年をかけた「ラムラムキーマ」の例を引くまでもなく……とにかく試作に試作を重ねて、納得がいく味ができるまで、お店には出されません。「どなたかに(レシピを)監修してもらうとかにすれば、きっともっと早いんでしょうけど、やっぱりここでお出しするからには、自分たちでつくりあげたいんですよね。なんなら材料の野菜も自分たちでつくりたいくらいなので(笑)」(朋子さん)。


ちなみに、これが現在のお品書きです。右半分の「SNACK」欄に並ぶ、ちょっと小腹を満たすのにもぴったりな一品料理もぜんぶ美味しいですよ。


さらに、そのメニューにはまだ掲載されていない「唐揚げ定食」(980円)が下の写真。もちろん、めっちゃ美味いです。唐揚げもやっぱり、ニーズがありますからね……。というように、料理のラインナップは少しずつですが確実に増え続けています。もう少ししたら、一気にメニューのページ数が増えるかもしれません(笑)。


要望があれば、応えてしまう。それも全力で。そもそも、そういった気持ちの現れが、この2階フロアにある「コガネキッチン」や「黄金湯 お宿」の存在なのですよね。

ちなみに「コガネキッチン」はお風呂やサウナに入らずに食事だけでの利用も可能。なので、お昼どきには、近くで働く人たちが普通にランチタイムをここで過ごす姿もたくさん見かけます。
そうなんです。銭湯好き、サウナ好きのみならず、黄金湯の一生懸命なサービスは「地域」にも認められ、愛されているんですよね。

サウナの気持ちよさもロウリュコーヒーの楽しさも、すべては「銭湯文化」の良さを知ってもらうため

もうひとつ、おそらく全国でもここにしかないであろうメニューを紹介させてください。その名も「ロウリュコーヒー」です。焼いたストーンの上からお湯をドリップするという、まさにロウリュに見立てたコーヒー抽出体験が……実に楽しいんです!

オーダーすると、ミルでコーヒー豆を自分たちで挽くところから体験させてもらえます(希望すれば、お店で挽いてもくれます)。

数杯分がとれるため、カップルやグループで訪問した人たちが笑顔でロウリュ(=ドリップ)してカップに注ぎあっている姿をよく見かけます。きっとめちゃくちゃ素敵な思い出になってるんだろうなぁ……。

ゴリゴリと自分たちで挽くと、愛情もひとしお!
粉の上に焼いた麦飯石を設置。蒸気が
ジュワーッと立ち上るさまは、まさにロウリュ!
コレ、やる人も見る人も楽し〜い!
ドリップを終えて石をどけると、さらにいい香りが!
香ばしさがたまりません。
ヨモギのクッキーももちろんウマし!

「(黄金湯に)来てくださった方に『気持ちよかった』というのはもちろんですけど、『楽しかったなぁ』って感じて帰ってもらえたらすごくうれしいんですよね。
『キッチン』や『お宿』を始めたのは、もとはと言えば“銭湯”の良さや“銭湯文化”そのものに触れてもらいたいという思いからなんです。銭湯ってもともと、街の人たちが毎日顔を合わせては、その日あった他愛もないことを話したり、うれしい出来事を喜び合ったり。その延長で、何か悩みや困りごとがあったらお互いに相談したり、一緒に解決したりなどもしてきた場所。人と人を結ぶ、街や暮らしにとってとても大切な存在なんですよね……。
そういった側面を、銭湯の良さを知らない若い世代やまだ体験したことのない多くの人に知ってもらうにはどうしたらいいか。いつも考えています。そして、少しでも魅力を感じてもらえるように、新たな銭湯のあり方みたいなものをいつも考えているんです。
黄金湯に来てみたことがきっかけになって、銭湯を好きになったり、いろんな銭湯に行ってみたり。良さをいろいろな人に広めたりしてもらえたら、もう最高ですよね」
(朋子さん)


「気持ちいいサウナ」、「気持ちいいお風呂」と、さらに“その先”にある安らぎ、楽しさ――。

まさに“心までうるおう場所”としての銭湯を目指し続ける黄金湯のチャレンジは、まだまだ終わりません。

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