心地よさを進化させ続ける銭湯サウナ! 東京・錦糸町「黄金湯」①

6月30日に発売した「SAUNA BROS.vol.10」では、巻頭企画として「銭湯サウナ」の大特集を掲載しました。vol.1=第1号を刊行して以来、約4年半にわたって全国でさまざまなサウナ施設を取材してきた弊誌ですが、10号目というちょっとした節目にあたり、“暮らしている街にある”、(料金も含め)“手軽&気軽に行くことができる”などの理由から、銭湯のサウナは我々にとって、最も身近なサウナ施設なのかもしれないとあらためて感じたからです。

その大特集の最初のページを飾っていただいたのが、東京・錦糸町の「黄金湯」。実はvol.1でも(以降も何度も)取材させていただいたというご縁もあるのですが、サウナ浴&入浴時の気持ちよさはもちろんのこと、さまざまなサービスのあり方などで、まさに全国各地にある「銭湯という空間の素晴らしさを体現」しつつも、「唯一無二」といえる存在だとも思えるからです。

1932(昭和7)年ごろの創業(※確認できる最古の資料が同年で、実際はもう少し古いかもしれないそう)以来、1世紀近く人々をあたため続けてきた老舗銭湯が、サウナを軸にした大幅なリノベーションを敢行し、リニューアルオープンしたのは2020年のこと。
この年の1月にいったん営業を休止してからおよそ半年後……。8月に生まれ変わった黄金湯は、たちまち都内の、いや全国のサウナ好きたちの間で高い注目とアツい支持を集めました。でも、そこで歩みが止まることはまったくなく、現在に至る約5年の間にも(いまも!)、さらなるアップデートが繰り返されているのです!

みんな大好きなあの検索アプリ「サウナイキタイ」で、「イキタイ」の件数が全国1位なのも納得なんですよね。

目次

古き良きものは残し、機能やセンスは最先端。まさにリノベ銭湯のトップランナー

全国屈指の人気銭湯サウナだけに、実際に訪れたことがある方は本当に多いことでしょう。そして弊誌を含め、さまざまなメディアで情報を見聞きしている方もまたたくさんいらっしゃるとは思います。
とはいえ、まずはしっかりと浴室、サウナ室の魅力をあらためて紹介させて頂こうと思います。

最寄駅は錦糸町駅、もしくは押上駅。どちらからも徒歩6〜7分で、この趣きのあるどこか懐かしい看板を掲げたスタイリッシュな外観が見えてきます。

打ちっぱなしのコンクリートに真っ白な暖簾。広くとられた入り口の引き戸を開けば、「沸いてます」の白い半紙。シンプルで清潔感のあるスペースがそこには広がっています。

受付を済ませて浴室に入っても、その印象は変わりません。コンクリートとベージュのタイル。据え付けのシャワーヘッドが並ぶカランに、「あつ湯」、日替わりの「薬湯」、高濃度炭酸泉などが整然とレイアウトされた落ち着く空間。

ほしよりこ先生による、江戸の庶民の一生が絵巻のように描かれた壁絵もキュートです。産まれてまもない男の子が産湯をつかい、少年に成長し、やがて好きな女性ができて、結ばれて、また新しい命が……。男湯側から女湯側へと物語は続くので、男女入れ替え日(毎週水曜)を利用してぜひすべてを見届けてください!

気持ちよさには理由があります! クールで超ホットなこだわりのサウナ室

さて。普段は男湯側となる浴室の、一番奥の扉を開くと、さっきまでと地続きではあるけれど、どこか雰囲気が変わります。
2020年の改装前……かつて薪で湯を沸かしていた頃に「釜場」として使用していた場所をサウナエリアにリノベーション。よく見ると煤(すす)で少し黒くなっていたりなどさまざまな味わい深い名残りもそこかしこに残っています。ベージュ系の淡い色味はなくなり、天井や壁、梁はコンクリート打ちっぱなしだったり灰色のブロックがそのまま見えていたりと無機質なのですが、それがまたクールでモダン!

10〜12人ほどが入れそうなサウナ室は、蓄熱性にすぐれた麦飯石を壁全面に使用していて、入った瞬間にカァ〜ッとした高温に全身がくるまれます。温度計を見るとおよそ110℃ほど。壁からの輻射がしっかりあるので、熱の圧がスゴイのなんの。加えて、ストーン式のヒーターには15分おきにオートロウリュが発動。アツい空気&蒸気が室内をめぐるのが体全体に感じられます。
ベンチ下の照明とガラス扉からのうっすらとした外光だけが明かりのため、自然と没入している自分がいます。気がつけば、滝のような汗。めっちゃ気持ちいいですね。

この男湯側のサウナエリアは、外気にも通じた半露天のスペースにあるにもかかわらず、人が出入りしても(冬でも)熱がほとんど流失しないように感じます。やや細めのドアの形状であったり、何より壁の材質。麦飯石のパワーによるものがたぶん大きいはず。もともとサウナが好きだったという店主、オーナーの新保朋子さん・卓也さんご夫妻のこだわり、慧眼に敬服してしまうサウナ室です。

やさしい水質のキンキン水風呂で一気にクールダウン。神秘的なビジュアルも最高!

しっかりと体の芯まで熱が入ったら、そろそろ水風呂へ。扉を開けばすぐ目の前に、肌あたりやわらかな地下水の水風呂がスタンバイしています。90センチの深さも、男性が5〜6人入って手足を伸ばしても余裕がある広さも、実に快適そのもの。

チラーによって保たれた水温は、夏場のどんな暑い日でも14〜15℃を上回りません。年間通してキンキンです。異世界みのある洞窟風の造形も、やや暗めの水中をほのかに照らすライトの視覚効果もまた最高! さっきまでアチアチだった体を一気に引き締め、クールダウンできます。

外気浴エリアにはアディロンダックチェアが並びます。さりげなく足先を置ける箱台があったり、それほど広くはないスペースを最大限に有効活用したイスの配置など、“席数”と隣のイスとの“距離感”がベストバランスなのも、いつもあらためて感心してしまうポイント。

自然の風、そして場所によっては扇風機の微風に心地よく吹かれつつ、ふと見上げれば視界には空と黄金湯のシンボル、煙突が。
ぼんやりと眺めながら、あのオリーブの木は5年前に比べてだいぶ大きくなったなぁと思ったり、そういえば初めてここに来たときにも1セット目で見事な“あまみ”がくっきりと出たなぁなんて思いつつ自分の足を見てみると……今日もまたくっきりと!! 体は正直なんですよね。

ここからは筆者の個人的な愉しみ方ですが、ルーティーンによっては、この「麦飯石オートロウリュサウナ室」から「大きな水風呂」に入ったあと、いちど浴室に戻ってマイルドな水風呂(こちらはチラーなどなく、完全に地下水かけ流しの自然の温度。およそ19℃ほどですかね)に入ったりも。

“アチアチ”からの“キンキン”によってキュゥ〜ッと引き締まっていた肌や気管が、マイルドな水質&水温の浴槽で静かに再びゆるんでくるような感覚。クセになるんですよね。この「冷々交代浴」をはさむことで、その後の外気浴や浴後の心地よさがまた、一味も二味も豊かなものになるんですよね。

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