
今、「自分を大切にする旅」が、ひとつのぜいたくなのかもしれません。
発売中の「SAUNA BROS.vol.10」では、“女性におすすめのカプセルホテル”を特集。その中で紹介されている「神戸レディススパ」(兵庫県神戸市)は、サウナ・温泉・カプセルホテル・レストランがすべて揃った、女性専用の癒し空間です。慌ただしい日常を離れて、心も身体もほぐれるひとときを過ごしてみたくて、東京からひとり、神戸・三宮を目指しました。
東京から三宮へ。「自分を見つめて癒す」やさしい1泊
実は、日帰りで神戸レディススパへ行ったことはありましたが、カプセルホテルに泊まるのは今回がはじめて。少しだけ緊張しながらも、それ以上に好奇心が勝っていて、「どんな時間が待っているんだろう」と前日から胸が高鳴っていました。
朝の東京駅。ひんやりとした空気の中、少しだけ早起きしたことも、旅の始まりを感じさせてくれます。新幹線で新大阪まで向かい、そこから在来線に乗り換えて三宮へ。移動時間はおよそ3時間。カフェラテを片手に、流れていく景色を眺めているうちに、心がだんだんと旅モードに切り替わっていきました。

日常から少し離れるだけで、自分の感覚がみずみずしくなる。そんな予感を胸に、「神戸レディススパ」へ向かいます。

神戸レディススパへついにチェックイン
三宮駅から歩いて5分ほど。1階にアイスクリームショップがあるビルの2階~4階に「神戸レディススパ」があります。受付は3階、エレベーターのドアが開くとそこはまるで異国のリゾートホテルのよう。白を基調とした造りはどこか宮殿のような優雅さすら感じさせます。非日常の空間にすっと身をゆだねられるような、そんな“ときめく静けさ”が漂っていました。
ちなみに、2階は岩盤浴など、4階には女性のカプセルと、23年11月に誕生した「神戸サウナ&スパ プラス」 と呼ばれる完全個室型のプライベートサウナがあります。


2種類のサウナと温泉で、深く息を吐く時間
まず最初に足が向かったのは、ドライサウナ。
サウナ室はL字型で奥にストーブが1台。座面は2段で、およそ10人が無理なく座れる広さ。天井は高すぎず低すぎず、ちょうどよい熱がふんわりと行き渡っていました。ほんのり照らされた明かりと木の色合い、まるでロッジのサウナのような、不思議な落ち着きに包まれます。
腰を下ろし、静かに呼吸を整えていくと、じんわりと身体の奥から温まってきます。湿度がしっかりとあるおかげで、90℃を指す温度計よりずっとやさしい肌当たりの熱。最初の1分はじわじわ穏やかに温まっていき、2分を過ぎた頃から、腕や背中に汗が一気にあふれてきました。身体の中でうごめいて滞っていたものが、汗と共に浄化され解きほぐされていくようで、思わず目を閉じて汗が流れ落ちるのを感じていました。
しばらくすると、ほかのお客さんが2人ほど静かに入ってきました。誰ひとりとして会話はなく、それぞれが自分と向き合うように、ゆったりと熱を味わっている様子。出入りの動きにも音が立たず、その所作のひとつひとつに、サウナ時間を大切にする心持ちのようなものが感じられて、ますますこの空間が好きになっていきました。
誰かがいるのに静かで、気配はあるのに煩わしさがない。そんな絶妙な距離感の中で、ただじっと熱に身を委ねる時間。初対面の方との無言の信頼感はサウナならではの、かけがえのないひとときでした。サウナを愛する施設にはサウナを愛する人が集まるんだな、とますます神戸レディススパのファンになりました。
肌と心を包み込む、やわらかなミストサウナ
ドライサウナでしっかり1セットしたあとは、もうひとつのサウナ「ローズテルマリウム」へ。
神戸レディススパの女性専用フロアにあるこのミストサウナは、やわらかで湿度たっぷりの空気に包まれる空間で、高温のドライサウナとはまた異なる癒しがあります。ここのミストサウナの特徴は温度は約45℃と低めに保たれており、長くゆったりと入れること。サウナ初心者の方にも入りやすい設計です。
もうひとつの特徴はなんと言ってもローズソルト。グラスに入れたローズソルトを手にミストサウナに入ります。ローズの優雅な香りとトロリとしたソルトを体にやさしく塗り、やわらかな蒸気にしっとりと包み込まれます。照明は落ち着いたトーンで、静かな空間の中、椅子に座って目を閉じていると、ローズの香りが心地よく、まるで深い呼吸の中に自分が溶けていくような感覚に。じっくりゆっくりソルトが溶けたら、ホースでソルトを流して外へ。そのまま水風呂へ行ってもいいけれど、念のためシャワーでさらに体についてローズソルトを流していると、お肌が信じられないくらいツルツルしっとりになっていて驚愕。その後水風呂に入っても、外気浴をしていても、うれしくてずっと肌をスリスリさわっていました。
お風呂は天然温泉。丸太入りのお風呂も!
ドライサウナとミストサウナそれぞれ1セットしてから、温泉タイム。
神戸レディススパの浴室には、いくつかのタイプの湯船があって、そのときの気分や身体の状態に合わせて選べるのも魅力です。
なかでも印象的だったのが、神戸サウナの名物(?)とも言われている「丸太入りのお風呂」。以前、レディースデーで神戸サウナ&スパ(同じ建物内にある男性専用施設)を体験したときに、露天のお風呂にあったんです、丸太が。そのミニ版ともいえるお風呂が神戸レディススパにもありました。浴槽の中に本物の丸太がぷかぷかと浮かんでいて、そっと体あずけると自然に浮いていくような感覚に。お湯のぬくもりと木の手ざわりに包まれているうちに、あぁ神戸に来たなーと実感。心の奥のほうまでふっとゆるんでいくのがわかりました。
そのほかにも、水流が心地よく刺激してくれるジェットバスや、ゆったりと身体を預けられる広い浴槽など、違った心地よさがあります。しっかり癒したい日も、ぼんやり過ごしたい日も、ここならその日の自分に合った“よりどころ”が見つかるはず。(たまにしか来られない私は、すべてのお風呂を体験)
すべての浴槽に使われているのは、神戸市西区の地下1500メートルからくみ上げた天然温泉「神乃湯温泉」。泉質は単純温泉(低張性・弱アルカリ性)で、湯ざわりはなめらか。とろんと肌になじんで、まるで湯そのものにやさしく包まれているようなお湯です。
神戸レディススパの浴場入り口付近に足元用のシャワーが設置されています。小さなその仕掛けは、足を清めながら入浴スペースへ入れるようになっていて、とてもさりげなく、でもとても丁寧。こんな風に、目立たないところにまで気配りが行き届いている場所って、そう多くはありません。心までそっと洗われたような気持ちになりました。
レストランで夜のごほうび。あれこれ悩んだ末の「ガパオライス」
サウナとお風呂で、心も身体もゆるんだあとは、夕食タイム。
館内のレストランは、落ち着いたつくり。ひとりでも気兼ねなく過ごせる心地よさに包まれながら、椅子に腰を下ろし、メニューを開いた瞬間――そこには、かなり本気で悩まされる三択が待っていました。
ひとつは、冷たくて野菜たっぷり。しかもヘルシー。サウナ後の身体が歓喜しそうな「野菜たっぷりトマトラーメン」。
もうひとつは、スパイシーなのにヘルシーというバランス感が魅力的な「6種の具材のヘルシービビンパ」。
そして最後が、しっかりごはんで、ちょっと刺激がほしい気分にぴったりな「スパイシーガパオライス」。
冷たいラーメンとトマトのさわやかさで火照った身体をクールダウンさせるのもいいし、ビビンパのご飯感と野菜感も捨てがたい。でも、今日は刺激が欲しい、しっかり食べたい。そんな気分が背中を押してくれて、最終的に選んだのは「ガパオライス」でした。
ほどなくして運ばれてきたお皿は、ごはんの上に茶色い鶏ひき肉と目玉焼きがぽん、とシンプルにのったひと皿。正直、見た目だけで言えば、インパクトはありません。でも、スプーンを入れて、ひと口食べてみた瞬間に、その第一印象は静かにくつがえされました。
しっかりめに味つけされた鶏肉に、辛すぎず、それでいてじんわり身体の内側を刺激してくるスパイス感。ごはんと絶妙に絡み合っていて、サウナ後の身体に濃い味がすっと馴染んでいくようでした。
今回は選ばなかったトマトラーメンも、ヘルシービビンパも、きっとまた今度。



カプセルホテルで迎える、深い眠り
夕食を楽しんだあと、女性専用のカプセルエリアへ移動しました。サウナを楽しみ、食事をしてそのまま「カプセル泊ができる」という導線……最高です。サウナ好きの夢ですよね。その夢を叶えてしまうんだ、と思いながらカプセルがある4階へ向かいます。
カプセルエリアへ行くまでに通った共用部は清潔に整えられていて、質感のある床・壁やさりげない間接照明など、女性が居心地よく過ごせる配慮が感じられました。リラクゼーションスペースや休憩所など、館内には自由にくつろげる場所もあり、こうした空間は、事前調べで「女性専用らしい居心地のよさがある」という評価も多く見られました。
カプセルルームに入ると、19インチ液晶テレビや照明、コンセントが完備され、すっきりとしたパーソナルスペースが整っています。圧迫感のない奥行きと高さを確保しており、“狭くて寝るだけ”というカプセルホテルのマイナスイメージを刷新した設計です。寝具にはテンピュール社製のマットレスと枕、羽毛布団が使用されていて、身体がすっと受け止められるような感覚。案内板にも「快眠できる」とあるとおり、ぐっすり休める環境が用意されていました。


実はこの夜、「翌朝は早起きして朝サウナをたっぷり楽しもう!」と気合を入れていたのですが……あまりの快適さに寝過ごしてしまいました。ベッドが気持ち良くて熟睡。目覚めたときはまだ30分くらいしか経っていないような感覚でしたが、実際は4時間経過していました。そんなに長い時間たっているの!? という驚き以上に「しっかり休めた」という実感が勝り、心地よい朝を迎えました。
さらに、女性専用フロアにはワークエリアもあります。急ぎの仕事が入っても、パソコンを広げられる環境があるのは本当に助かりました。快適な滞在スペースと、ちょっとした仕事時間を両立できるというのは、働く女性にはありがたいことです。
神戸レディススパのカプセルホテルは、ただ寝るだけの場所ではありません。しっかり休んで、次の朝に備えられる“エネルギー補充基地”のような印象です。パウダーエリアなどの共用エリアも清潔に整えられており、一人で宿泊しても安心して過ごせる居場所でした。

三宮の街を歩いて、旅の余韻にひたる
チェックアウトは12時とゆっくりめだったので、バイキング形式のこだわりの朝ごはんをしっかり食べられました。パンもご飯もあり、和洋そろっています(私はヨーグルトと、朝カレーをいただきました)。ワークスペースで少しだけ仕事を片づけてから身支度を整えチェックアウト。
せっかくなので、近くを少し歩いてみることにしました。
まず向かったのは「生田神社」。神戸レディススパから徒歩数分の場所にある、地元ではとても親しまれている神社です。鳥居をくぐると、都会の喧騒がすっと遠のいたように静かで、境内をゆっくり歩いていると、心がすっと整うような感覚がありました。
そのあと、北野異人館のほうまで足をのばして、洋館を見上げたり、旧居留地の石畳をコツコツと歩いたり。おしゃれで少しよそゆきな雰囲気のある神戸の街は、何度歩いてもどこか新鮮で、なのに不思議と居心地もよくて、気がつけば呼吸が深くなっていました。
途中、小さなベーカリーを見つけて立ち寄ってみたり、焼きたてのパンを片手に近くのベンチでひと休みしたり。観光をしたというより、旅の余韻にひたるようなひとときでした。
予定を詰めこまず、ただ自分のペースで過ごす。そんな時間が、こんなにもぜいたくに感じられるのは、きっと前日の夜にしっかり休めたからなのかもしれません。

また訪れたいと思える、静かなやすらぎ
神戸レディススパで過ごした1泊は、ただ泊まるだけでは終わらない、自分の固まってきた心と身体をゆるめてあげるための時間でした。
サウナで温まり、お風呂で肩の力をほどき、お腹を満たして、静かな空間で深く眠る。ひとつひとつはとてもシンプルなのに、そこに気遣いや安心感が添えられていて、いつの間にか自分自身にやさしく向き合えていたように感じます。
女性専用という点も大きな魅力で、館内のどこにいても静けさと居心地のよさに包まれていました。人の目を気にせず、自分のペースで過ごせることが、こんなにも心をほぐしてくれるとは思いませんでした。予定を詰め込むでもなく、流れるままに過ごす時間が、思いのほか満ち足りていたのです。
「また来たい」と自然に思えたのは、自分らしくいられる空気がここにあったからだと思います。
東京から足をのばして訪れた価値は、十分すぎるほどにありました。すぐに行ける場所ではないけれど、「次はいつにしよう」と考えるだけで気持ちが和らぐ。そんな心のよりどころをひとつ見つけられたことが、今回の旅のいちばんの贈り物だったように思います。

【お詫びと訂正】
『SAUNA BROS.vol.10』の「女性におすすめのカプセルホテル特集」内にて掲載いたしました「神戸レディススパ」の住所に誤りがございました。関係者の皆さまおよび読者の皆さまにご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。今後は同様の誤りがないよう、細心の注意を払ってまいります。
正しくは、以下の通りです。
【正しい住所】
神戸レディススパ
兵庫県神戸市中央区下山手通2丁目2−10 神戸サウナビル
カプセル:チェックイン15:00、チェックアウト翌12:00
料金ほか詳しくは公式HP(https://www.kobe-sauna.co.jp/ladies-floor/)でご確認ください
※2025.7.27から女性外気浴テラスがメンテナンス中。再開予定は随時公式HPにて更新予定