神戸クアハウスの軌跡と魅力②水風呂、サウナの秘話と気になる今後

1991(平成3)年の創業から33年。「布引の水」として、その水質の良さを知られる名水をそのままかけ流しで味わえる水風呂や、2種の異なる温泉(どちらも絶品!)、スタッフのホスピタリティーなどで愛され続けてきた名施設「神戸クアハウス」が、設備の老朽化などにより、今年の3月31日をもって長期休業に入り、現在の建物は解体・リニューアルされることに。

発売中の「SAUNA BROS.vol.7」でも、あの水風呂やサウナ室をはじめ、館内に満ちあふれるやさしい雰囲気を後世にまで語り伝えたいという思いから、グラビア特集を組ませていただいています。

その取材の際に、創業当初から神戸クアハウスに勤務され、30年以上にわたって支配人業務を担われてきた坂本順子さん(支配人代行)にもお話を伺いましたが、紙の誌面では文字数に限りがあったこともあり、泣く泣く紹介をあきらめた貴重なエピソードも、たくさん!

そこで、このSAUNA BROS.WEBでも2回にわたってあらためて坂本さんへのインタビューを“ほぼ完全版”として掲載! <前編>(←未読の方は、ぜひ併せてお読みください)では、創業当時や「私たちの原点の一つ」とおっしゃられる逸話や思い出を綴らせていただきました。

<後編>の今回も、サウナ室や水風呂のアップデートの歴史などを中心に、さらに神戸クアハウスの魅力に迫りたいと思います。

長期休館、改装まであと2カ月あまり。「まだ行ったことがない」という方はもちろん、何度も訪問されているという愛好家にも、もう1度、いや、1度と言わず何度でも、その目に、肌に焼き付けてほしい。今、そんな思いでいっぱいです。

目次

「奇跡」と言っても過言ではない!? 「神戸ウォーター」の心地よさの秘密

――訪問するたび、利用させていただくたびに「なんで神戸クアハウスの水風呂はこんなに気持ちがいいんだろう」と心から思うんです。こちらの“神戸ウォーター/布引の水”は、いわゆる六甲山系の山のお水ですよね。

「そうですね。六甲山は地層的に大部分が花崗岩で出来ているそうなんですが、この花崗岩というのは本来、非常に硬い一方で、マグネシウムやカルシウムといったいわゆるミネラル成分を豊富に含んでいるそうなんです。

その上で、六甲山の場合は、本当に太古の時代……数千万年前から、何度も大きな地殻変動があったそうで、硬い岩にたくさんの割れ目が出来たり、細かく砕かれて、砂礫層が生じたりしたんだそうです。

その層に長い時間をかけて染み込んでいった地中のお水は、先ほど言ったマグネシウムやカルシウムを豊かに含んでいて、硬度的にも、硬水と軟水のちょうど中間……“中硬水”と呼ばれる水質なんですよね。

こちらを、もちろんフィルターで丁寧に濾過はしていますが、煮沸(しゃふつ)などは一切せずに、まさに“生”のままで使わせていただいているから、飲んでも本当に美味しいし、お湯や水風呂で皆さんにもそう感じていただけるんではないかと思います」

――いわゆる「フレッシュ」なまま。余計なことは、一切、されていないからということですね。やわらかさやなめらかさの一方で、どこかシャキッと、すっきりした清冽さがあるのも……本来は水が染み込まない花崗岩の岩盤に、裂け目や砂の層が出来たという奇跡的な恵まれた地勢からなんですね。

「はい。細かな成分は地域によって異なると思いますが、宮水(※「灘の宮水」と呼ばれる、名水百選に選ばれた天然水)を使ってお酒造りが盛んなのも、全国的にファンのいらっしゃる『にしむら珈琲店』さんのお水やコーヒーが美味しいのも、神戸クアハウスも……やっぱり神戸という街は、六甲山のお水の恩恵を受けていると思います」

神々しいまでに大きな水風呂に込められた“思い”

――男性浴室の水風呂に使っておられる、あの大きな木の浴槽も本当に味わいがあります。

「あれは創業当初から、ずっと変わらずにあそこにあります。本当に浴室の真ん中にド〜ンと(笑)。温泉の浴槽に浸かった方も、サウナ室で体をあたためられた方も……どんな方も使いやすいように、と」

――はい。その動線の良さもさることながら、あのサイズとともに木製の浴槽ならではの“やさしさ”みたいなものや、年季の入った感じも気持ち良さにつながっている気がします。

「手前味噌のようで、私たちが言ってしまうのもなんですが、いいですよね(笑)。本当に33年前からのものなので、良く言えば味わいも出てきていて(笑)。

あの水風呂の浴槽も創業社長のこだわりだったんです。高野槙(こうやまき)という、船や橋にも使われるほど水に強い、貴重な木材を使っているんですが、あれも、最初見たときには、みんなびっくりしました。『こんなに大きいの?』『すごくいい香りね』って」

「女性浴室の方も大きな樽の形の水風呂ですが、こちらも同じく高野槙で、やはり創業以来ずっと同じ浴槽です。とにかく社長が『全身で味わってほしいんや』と、あ〜んなに大きなものを作られました(笑)。

あの……熱波師さん、アウフギーサーの五塔熱子さんに『全身が夏野菜になったみたいに気持ちいい』っておっしゃっていただいたこともあって」

――うわっ! 見事に言い当てられていますね。あの大きな樽の水風呂の魅力を(笑)。盛大な、かけ流しの水量もあって、あの樽の浴槽には男性も入りたいくらいです。

「男性の方はそうおっしゃいますし、逆に女性の方は、あの男性浴室の四角い浴槽に入りたいとおっしゃいますね。『あの大きさにスゴく憧れるし、浸かりながら、滝のような打たせ水の仕掛けも頭から浴びたい』って(笑)」

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