愛媛県JR松山駅前の天然温泉施設「伊予の湯治場 喜助の湯」に「サウナ&スパホテル 喜助の宿 松山駅前店」がオープンしました!
駅徒歩1分という抜群のアクセス。温泉、サウナ、岩盤浴、そして駐車場料金まで、すべてを含んだオールインパッケージをリーズナブルな価格で提供する。そんな駅チカ最強の宿はいかにして誕生したのか? 「喜助の宿」の仕掛け人であるキスケ株式会社エンターテイメント事業部部長・新規事業開発室長の田中誠さんに、プレスリリースには載っていない宿のこだわりや、地元・愛媛県への思いをお聞きします。 ※前回の記事「3/4オープン! 喜助の宿松山駅前店を独占体験&徹底リポート」も合わせてご覧ください。
松山駅前に「喜助の宿」が誕生
――ボウリングやカラオケ、ゲームセンター、パチンコなどが楽しめる複合型アミューズメント施設「キスケBOX」に新設されたのが「喜助の宿 松山駅前店」とのこと。具体的にいつくらいからプロジェクトがスタートしたのでしょう?
「松山エリアにホテルが足りないというお客様からのご要望を受けて『松山駅前店』を作ろうと計画が動き始めたのが2019年の夏ごろで、着工予定は翌2020年の12月でした。ただ、ちょうどコロナ禍になって、その計画が先送りに。ようやく、この3月4日のオープンすることができました」
――併設されている「喜助の湯」で温泉、サウナ、岩盤浴に入り放題。駐車場料金は無料、1万冊もの漫画が読み放題など7つのサービスが用意されていて、1泊の料金は通常価格で1人4300円から。この手厚いサービスとリーズナブルな価格は、どのようにして実現できたのですか?
「チェックインと清算はすべて自動チェックイン機で行う。館内着のほか、タオルなどもセルフで貸し出すなど、極力お客様ご自身ですべてやっていただく。ホテル業界全体が抱える人材不足の問題をクリアするため、少ないスタッフ数でも運営できるよう徹底的な“省人化”を目指した結果、低価格でありながら質の高いサービスを提供させていただくことが可能になりました」
“省人化”しながらも気配りが満載
――ここからは館内の細かな気配りやこだわりをお聞きしたいのですが、まず入口のドアを開けてすぐの壁に貼られたパネルが目に入ります。
「『松山駅前店』の1km圏内にある名所・飲食店などの情報を“ご近所マップ”として貼らせてもらっています。どれも実際にスタッフが行ったことのあるオススメのスポットやお店で、夏ごろめどに、スタッフをガイド役にした周辺の簡単なツアーを企画中です」
――マップには、松山市内にある四国八十八ヵ所霊場の案内も。
「私どもキスケは四国までお遍路さんにいらっしゃるお客様を応援していて、八十八ヵ所霊場が四国で一番多い街が松山市ということもあり、マップに入れさせてもらいました。3300円というお遍路さん専用の格安プランも用意していますし、ここ『松山駅前店』を拠点に、市内にある八ヵ所の霊場を巡っていただくのも一考かなと」
――以前の記事で、四国=お遍路さんから「サウナ神社」を作ることを思いついたとおっしゃっていました(2023年6月9日「『喜助の湯』成長の立役者は3人のサウナ好き社員だった!」)。
「お遍路さんには全国……今では世界中からお客様がいらっしゃっているので、愛媛=サウナという認知度が高まって、地元が盛り上がればいいなと思い作ったんです。また、ゆくゆくは高齢化によってお遍路さんの接待所が減っている現状の中、近隣の温泉施設さんと一緒になってそのお手伝いをしていきたいとも考えています」
――マップの先に見えるフロントには、先ほど出てきた自動チェックイン機が。
「予約時にスマートフォンに送付されるQRコードを機械にかざすと番号が発券されますので、その番号のロッカーで鍵の付いたリストバンドを受け取り、館内着に着替えていただく。リストバンドの番号と同じベッドルームへ向かう。リストバンドにはバーコードも付属していますから、それで併設する『喜助の湯』をつなぐドアを開けて温泉へ……というのが一連の流れです。海外のお客様も想定して、これらの流れはすべてピクトグラムで分かりやすく表示しています」
――リストバンドはロッカーに差し込まれたままなんですね。
「そうですね。スタッフがリストバンドを再びロッカーに差し込むのも手間暇がかかりますから、省人化を考えてそうすることにしました。フロントでリストバンドを受け取り、帰りに再び返すという温泉・サウナ施設が一般的ですが、こちらではロッカーに差しっぱなしでお帰りください」
――館内着はフリーサイズでM~3Lに対応。筒状に丸められているので、棚から取り出す際に崩れません。
「こちらも仕分けなどの手間暇を考えてワンサイズに。Tシャツとハーフパンツが1つにクルクルっと丸まるように作ったところがこだわりですね。他の施設でも館内着がありますが、畳むと上下バラバラになってしまうのが僕自身イヤで(笑)。パンツのポケットの中に紐を付けて、それで上着とパンツが1つに丸まるよう工夫しました。なお、汗をかいたら何回でも新しいものに交換できます」
「快適・安眠」プラス「安心・安全」の寝床
――次は寝床となるベッドルームの紹介です。
「全部で68床あります。全室に32インチのテレビを完備して、指向性の高い(※特定のエリアにのみ限定して音を届ける)スピーカーを設置することでイヤホンなしでもテレビが見られるようにしました。またスマートテレビですので、お客様のIDを入力すれば、さまざまなコンテンツを自由に楽しめます(※当然、無料Wi-Fiアリ)。あと、何度も言いますが、スタッフの手間暇を極力避けたいということで、スマートフォンの充電ケーブルを設置しました。貸し出しをすると、フロントでのやりとりが生まれますからね」
――上下左右の宿泊者を気にせず、リラックスできそうです。
「防音・断熱にも気を配っていますが、もしも他のお客様の音が気になって眠れない……という場合はフロントに耳栓のガチャがありますので、100円でそちらをご利用ください。ちなみに、ksc(※田中さんら3人で2021年に発足したキスケサウナクラブの略)オリジナルのシールが入った当たり付きもありますよ(笑)」
――壁に付いた扉は何ですか?
「セキュリティーボックスですね。ほかにもキスケは“安心・安全”を謳っている会社ですので、煙感知器とスプリンクラーを設置しています。全室にスプリンクラーが付いたカプセルホテルは珍しいと思います」
――肝心のベッド。カプセルホテルとは思えない……というと失礼ですが、寝心地のよさそうなマットレスですね。
「質の高い睡眠が得られるよう高品質の3Dファイバー製高反発のマットレスを設置しました。2月に2度の試泊会を実施した際にお客様から枕に関するご意見もありましたので、枕の貸し出しもあります。硬いもの、やわらかいもの、お好きなものをお選びください」
――試泊会では、宿泊者のアンケートで200以上もの改善点が出されたと聞きます。
「ご要望があったものはできる限り実現したいと、“あったらいいな!”シリーズとして具体化しました。『喜助の宿』1号店である『サウナ&スパ・ホテル しまなみ温泉 喜助の宿』は30床とホテル経験も少ないため、お客様に教えていただいたことを、できる限り反映させていただきました」
サウナ室を模したフリーラウンジ
――で、再びベッドルームから廊下に出まして、こちらのベルトの付いたバーは何ですか?
「ロッカーに入らないキャリーケースは、ここにつないでいただきます。もちろん、鍵付きです。フロントにあずけるところもありますが、これも省人化を目指した結果の1つですね」
――ドライヤーや化粧水、カミソリ、歯ブラシといったやアメニティーも充実。当たり前ですが、トイレ・洗面所とも清潔に保たれていますね。
「館内は裸足でいることが多いため、トイレには新たにスリッパもご用意しました。洗面台奥にはシャワールームも完備していて、鍵付きなので安心してご利用できます。1時間置きにスタッフが巡回して清掃するので、トイレ・洗面所に限らずいつも清潔です」
――そして、エントランスには階段状のフリーラウンジが。木製の立派な作りです。
「『喜助の湯』のサウナ室と同じ職人さんが桧を使って作ってくださいました。座面は1枚1枚の板がかまぼこ型になっていまして、座り心地も最高です。館内は無料Wi-Fi完備、電源も付いていますので、ビジネスマンの方はこちらでお仕事をしていただければ」
――サイドに置いてある枕のようなものは?
「テーブルクッションですね。凝ってかまぼこ型にしたのはいいのですが、ドリンクを置くと不安定で(笑)。こちらも試泊会でのご意見を反映させていただいて設置しました」
――その横にはウエルカムドリンクのコーナーも。チェックインから後7:00までは飲み放題です。
「ソフトドリンクはコーラ、ジンジャーエール、烏龍茶、緑茶など7種類、お酒はハイボールと、えひめみかんサワー、しまなみれもんサワーの3種類をご用意しました。ご旅行やお仕事の疲れを癒していただければ。もちろん、温泉・サウナ後もお楽しみください」
近い将来「喜助の宿」が全国に……⁉
――温泉、サウナ、岩盤浴はこれから体験させていただくとしまして、これから「喜助の湯」が目指すところはどこですか?
「今回、宿を作ってみて思ったのは、『喜助の宿』というブランドでフランチャイズ化できないかなということでした。省人化したことでオペレーションもスムーズに行えますし、サウナ室もデザイナから何から自社でやっていますから、そのままパッケージで持っていけばコストも抑えられます。ほかにもTシャツやサウナハットなどのkscグッズもお渡しできたりする。ホテル経験者ではなくてもある程度できるし、収益も得られるんじゃないかなと」
――各都道府県に「喜助の宿」ができる。全国の温泉・サウナファンが喜びますよ!
「『喜助の湯』の『鬼サウナ』は地元名産の菊間瓦を使用しているのですが、そうした試みを全国でやってみたいです。各地域ごとに特色あるサウナを考えて、地方都市を盛り上げていければうれしいですね」
――「喜助の宿 松山駅前店」は男性専用のカプセルホテルですが、女性も宿泊できる施設も期待されていると思います。
「今回は『キスケBOX』の空きスペースを利用したため空間が限られていたこと、温泉利用者の状況などを鑑みて18歳以上の成人の男性にターゲットを絞ったのですが、これからドミトリーや男女兼用のカプセルホテルについても考えていきたいです。駅前の再開発が完成する2026年ごろに、何とか実現できればと思っています」
――『喜助の宿 松山駅前店』にはいろんな方に訪れてほしいですよね。
「ここ『喜助の宿 松山駅前店』だけで(愛媛訪問を)完結してほしくない。せっかくいらっしゃったからには松山市および愛媛県全体を楽しんでいただきたいとの思いが根底にはありますので、道後温泉のようなメジャーなところから館内の“ご近所マップ”に貼られたディープなところまで、いろんなスポット、お店を巡ってください。心より、お待ちしています!」
試泊会からわずか1カ月少々で200もの改善点をクリアするだけではなく、さらなるお客様ファーストを実現した田中さんの行動力には脱帽するばかり。愛媛全体を盛り上げたい。ひいてはサウナで全国の地方都市も! という志にもグッとくるものがありました。
次回はいよいよ温泉・サウナ、岩盤浴を体験。某サウナランキングで2年連続全国1位を獲得した「伊予の湯治場 喜助の湯」の実力を文字どおり肌で感じてきます!
【プロフィール】
キスケ株式会社
田中誠さん
エンターテイメント事業部部長・新規事業開発室長。愛媛県の専門学校を卒業後、岡山県のアパレル会社などで勤務。1998年、地元へと戻りキスケ株式会社へ入社。同社が運営する大阪のカラオケ店に配属され、その後「伊予の湯湯治 喜助の湯」の支配人などを務めあげた。2021年4月に発足したksc(キスケサウナクラブ)の発起人の1人。
サウナ&スパホテル 喜助の宿 松山駅前店
住所: 愛媛県松山市宮田町4番地 キスケ BOX2階
営業時間:チェックイン=後3:00~11:00 チェックアウト=翌前10:00
料金:予約サイトでご確認ください(楽天トラベル予約サイト)
※男性専用施設 ※連泊の際も1日ごとの精算になります
撮影/山口京和
取材・文/橋本達典