みなかみを元気に! DOAI VILLAGEの数々の仕掛けとは

谷川岳のふもと、大自然の中で薪サウナを楽しみ、四季の移ろいを満喫! とにかくぜいたくな時間を過ごせるグランピング施設が群馬県みなかみ町にあります。JR上越線が走る土合駅構内のDOAI VILLAGEで、駅自体が「日本一のモグラ駅」と称されていてユニーク。「駅から近すぎサウナ!」のDOAI VILLAGEを運営する株式会社VILLAGE INCのチームリーダー・大木陽平さんに、無人駅にグランピング施設を開業することになったいきさつ、ここならではのサウナの楽しみ方、理想の過ごし方を聞いたインタビューをお届けします。

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無人駅の活用で地域活性化。グランピング×サウナで予約殺到!

――「日本一のモグラ駅」を体感するために、トンネルの中にあるホームへ。暗い通路を歩くのは地下要塞や秘密基地を探検しているみたいでスリル満点ですね。地上までたどり着いたら、太陽の光が差していて明るく、360度の大自然。まるで視覚の交代浴です。そもそも、なぜこの土合駅にサウナ付きのグランピング施設を開業することになったのでしょうか。

「無人駅を活用した地域活性化のアイデアが求められていたのです。応募して私たちの会社が選ばれ、約1ヵ月の実証実験を経て2020年11月に正式にオープンしました」

――選ばれた理由は何だったとお考えでしょうか。

「私たちは以前から全国でキャンプ場やグランピング施設を手掛けてきました。いわゆる僻地や秘境と言われるような場所に人を呼ぶプロデュースをしていて、そこで提供してきたサービスが無人駅の活用という課題にマッチすると感じていただけたのでしょう。駅舎が無人のままだと防犯面の心配もありますので、誰か常駐していれば、それだけでプラスになりますし、魅力を創出して、より多くの人に訪れてもらえるようになれば良いよね、と期待していただけたのだと思います」

足を運んでくれる人がいるのか……。マイナス要素をサウナでプラスに!

――すんなり運営事業者に決まり、開業まではスムースだったのですか。

「いいえ。この辺りは豪雪地帯で、冬はすごく雪が降ります。だから人を呼ぶのは難しいのではないかという声が結構ありました。しかし逆転の発想で、グランピングとサウナを組み合わせてアピールしたら、予約申込が100%になったのです。すぐに新型コロナが流行してしまったので、実際の来場は60%になってしまいましたが、実証実験としては成功で、これならやっていけそうだ、となり、正式にゴーサインが出ました」

――サウナはグランピング施設とセットで、最初から設置されていたのですね。

「そうです。春は森の木が芽吹いて、夏は避暑地として最適、秋は紅葉が美しい。みなかみは魅力的な観光地で、足を運んでくださる人がたくさんいます。しかし冬は……、心配する声が多かった通り、本当に雪が多い! 辺り一面が真っ白になって、何もないように思えてしまいますから。そのマイナス要素をサウナでプラスに転換することができました。サウナを出て、そのまま雪にダイブできるようにすれば、たくさんの人に面白そうだなと感じてもらえるので。グランピングにサウナを組み合わせることで付加価値が生まれたのです」

グランピングエリアのスペースにはもともと何があったのですか。線路のすぐ横で、車窓からよく見えますよね。インスタントハウスは巨大なマシュマロみたいで見た目のインパクトが強烈です。上り列車に乗っていたら「何あれ?」と気になってしまうでしょう。

「草が生えた荒れ地でした。そこに中央広部をつくり、センターハウスとサウナ、それに宿泊用のインスタントハウスを建ててスタートしました。インスタントハウスは2棟でスタートして4棟になり、現在は6棟。夏場には仮設のテントを設置して宿泊設備は8棟になります。順番としては、まず駅務室だったスペースを活用したカフェの駅茶(えきっさ)moguraが一番先にオープンして、その後にグランピングエリアを整備して開業しました」

温度調節もロウリュも自由な薪サウナ、水風呂には谷川連峰の水

――煙突屋根のサウナ小屋が、周りの風景ともすごくマッチしていて素敵ですね。METOSのサウナモッキを設置した背景には何かあるのでしょうか。

「会社が運営している他の施設にもサウナを設置していて、METOSさんとはもともとお付き合いがありました。それで、薪ストーブのサウナ小屋を設置していただきました。うちはグランピング施設としてはちょっと変わっていて、あえて至れり尽くせりにしていません。バスタオル、フェイスタオル、ポンチョ、薪を扱うための手袋はこちらで用意しますが、体験していただくことを重視していて、サウナストーブの火入れも、薪割りも、できるだけお客様にやっていただくようにしています。サウナのみ利用の場合は2時間の制限があるので、私たちが火入れをすることが多いですが、ストーブに入れる薪はご自身で割って、自由に温度調節していただいています」

――サウナのみの利用は宿泊のチェックインとチェックアウトの間の時間帯に1~4人の貸切で楽しめますから、温度調節も、ロウリュも、本当に自由にできますね。薪はこの辺りで伐採された木材が使われているのでしょうか。

「そうです。間伐された木材を使わせてもらっていて、広葉樹が多いです。水風呂は汲み上げた地下水で、冬は凍って桶が割れてしまうので撤去します」

――冬は雪ダイブ、春から秋は冬は水風呂で谷川連峰を水源とする地下水を掛け流しで楽しめるという……。どっちもぜいたく! たまらないですね。澄んだ空気に包まれる中での外気浴も抜群の心地よさ。間違いありません。これから先、何か考えていらっしゃることはあるのでしょうか。

「そうですね……、データを取っていて、サウナに期待して足を運び、宿泊していただける方が通年で多くいらっしゃいます。しかしサウナ小屋の定員が最大4名ですから、もう1棟増やすなどして、より多くの人にゆっくり楽しんでいただきたいというのがあります。キャパシティが大きくなれば当然、サウナのみ利用のお客様の受け入れ枠も増やせます。もっとうまく回せるようにして、いろんな人に私たちのサウナを体験していただければ」

インスタントハウスを導入した日本初のグランピング施設となった理由

――「日本一のモグラ駅」そのものが立派な観光資源と感じられます。土合駅に列車で到着されるお客様は、どのくらいいらっしゃいますか。

「すべての方にお聞きできるわけではないので、サウナのみ利用のお客様のデータはあまり取れていませんが、宿泊のお客様には結構いらっしゃいますね」

――列車を降りて、そのまま駅構内でグランピング。しかも泊まるのは、あのインスタントハウスです。ばっちり思い出に残りますよね。インスタントハウスを導入した日本初のグランピング施設ということですが、どのような経緯で採用に至ったのですか。

「設置が決まったのは、インスタントハウスが開発されたばかりの時期でした。建てるのが簡単で、かつ断熱性に優れているというものの、実際に雪国に設置されたことはなかったので、メーカーさんとやりとりする中で、試験的に置いてみましょうか、となったのです。今ではDOAI VILLAGEのシンボルのような存在で、インスタントハウスに泊まってみたいとお越しいただける方がたくさんいらっしゃいます」

四季折々の魅力が! みなかみの良さに気付く入口に

――夕食は食材は地元産が中心で、メーンの牛肉はみなかみ町で有名な精肉店・育風堂から仕入れているそうですね。ユニークな空間で、サウナでリフレッシュして、地元食材をふんだんにつかったおいしい料理を味わって……。貴重な経験ができて、食事の時などに顔を合わせたグループの人たちが仲良くなったりすることも多いのでは。

「その通りです。複数のグループが初めて顔を合わせる時には、間に入って、会話が生まれるようにも促しています。グランピングエリアは中央広場に人が集まるように設計されていて、大きなたき火を囲み、同じ時間を過ごす中で、人それぞれに体験したことの感想を話してもらう。そこにコミュニケーションが生まれ、また楽しい思い出が増えていく。そういった流れをつくることを意識しています」

――季節によって風景が変わり、春、夏、秋、冬とそれぞれ異なる趣がありますよね。この場所ならではの魅力があり、かけがえのない体験ができて、リピーターになる人がたくさんいそうです。

「みなかみの良さに気付いていただけるきっかけに私たちがなれて、地域が盛り上がっていけば何よりうれしいことです。サウナやグランピングが目的でDOAI VILLAGEに来ていただいた人が、町自体に興味を持って、次は温泉に入りに行こうとか、町の飲食店で食事をしてみようとか、山歩きをしてみようとか、ラフティングやバンジージャンプなどのアクティビティをやってみようとか、そんなふうに広がっていくことが理想ですね。本当に魅力にあふれている町ですから」

土合駅構内のDOAI VILLAGEは、しっかり地域とつながり、みなかみの魅力を伝える入り口になっています。

駅から近すぎるサウナ! 秋の連休に、いや次の休日にでも向かっちゃうか……。悩みどころです。

DOAI VILLAGE
■住所=群馬県利根郡みなかみ町湯檜曽218-2.JR上越線 土合駅
※そのほかの詳細は公式HPよりご確認ください

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