夏季限定! 「島のサウナ」も愉しめます
スオメンリンナから小さな船で10分ほどのところに、ロンナ島という直径わずか150メートルほどの小島があります(※マーケット広場から直通の水上バスもあります)。かつてこの島は水上機雷除去部隊の拠点として使われていたそうで、その名残りの線路やレンガ造りの建物などが今も遺っているのですが……その一角に夏季(5〜9月)限定で楽しめるサウナがあります。
その名も「ロンナ・サウナ」。レンガの小さな建物で受付を済ませ、その横に新たにつくられたサウナ棟に向かいます。
やっぱりセンスがいいんですよね。小さく「SAUNA」と書かれた扉を開くと、まずは身体や髪を洗うエリアが。目の前の階段を上っていくと、2階にあたるロフト部分に大きなスペースが広がります。1階部分にあるサウナストーブから立ち上る熱とロウリュの蒸気をここでしっかりと受け止めることができます。
海側の壁には大きな窓があり、蒸気の向こうにぼんやりとバルト海が! ベンチに腰かける地元の皆さんも和気あいあいと過ごしたり、静かにアツさを味わったり。
すっかり蒸されてアチアチになった身体を、もちろんその海に投げ出してクールダウンすることができるのですが……外洋に近いからでしょうか、これが冷たい! 一瞬でシャキーンとまさに目が覚めるかのよう。「アッラス・シー・プール」のあの海水プールよりもさらに強力な気がします。
たまらず海から上がると、ほのかに身体があたたかくなってくる不思議な感覚はここでも同様。
夏のバカンスを、島のサウナ付きコテージで過ごす人も多いというのも……おおいに頷けます。
じっくりサウナを愉しんで、カフェレストランで食事をしたり、小さな島を隅々まで散策しながらバルト海をぼんやり眺めたり。
気がつけば午後9時半過ぎ。ヘルシンキ方面に美しい夕陽が沈むまで、島でのひとときを満喫したのでした。
継承と革新……。スタイリッシュな最新の公衆サウナ「ウーシ・サウナ」も最高の空間。最高の居場所
ヘルシンキで印象に残った公衆サウナは、ほかにもまだたくさん。「ウーシ・サウナ」もそのひとつです。
「ウーシ」とは、フィンランド語で「新しい」という意味。その名の通り、2018年にオープンしたそうなのですが……。
いやぁ、くつろいだ雰囲気が実に心地いいですね。もう、フロントのすぐ横がドリンクやフードを頼めるカウンター。まるでカジュアルなバーのような空間で、実際にお酒を手に語らい合う人たち。フィンランドの国民的スポーツ、アイスホッケーの画面に見入る人たち……。
そのすぐ先には、趣味のいいファブリックでゆったり休憩できる……そんな快適なスペースが随所に。
ここのオーナーは、かつて人気バンドのメンバーとして活躍し、その後、ヘルシンキ市議なども務めた人物。カルチャーに造詣が深い一方で、街や市民への愛情も深い方だそうですが……古き良き公衆サウナの大ファンで、ヘルシンキ市内でも2番目に古い「サウナ・アルラ」という公衆サウナの経営も引き継いでいたとか。
その「サウナ・アルラ」は、前オーナーの趣味もあって、ギャラリーとして絵や写真の作品展示をしたり、建物内の一角がアトリエやサロンのようになり、さまざまな人たちの文化的交流の場としても機能していたそうです。
「ウーシ・サウナ」の壁にも、あちこちにポートフォリオや絵が飾られ、どこかアートやカルチャーの“薫り”が漂っていますね。実際に、時折、ここで個展なども開催されるそうですし。
男性用、女性用、男女共用とサウナ室は3つ。
男性用サウナ室は、設備などは新しいものの、アツさの質は「コティハルユン・サウナ」と同じく質実剛健。実に好ましい空間でした。
男女共用のサウナ室も、熱さや体感温度……熱の総量はややマイルドながら、ロウリュのたびにアツく心地よい蒸気が身体をじっくりとなぞってくれる快適な居心地。
建物の中央には、清涼な夜の外気で身体を冷ますことができるスペースが広がっています。
古き良き「空間」の素晴らしさは受け継ぎつつ、快適な「機能」は最新のものにーーヘルシンキの公衆サウナの“ウーシ”で“現在進行形”なスタイルが垣間見えた気がしました。
なお、残念なことに……「サウナ・アルラ」はロシアのウクライナ侵攻の影響によるガスなどの高騰を受け、2022年に惜しまれつつ閉店してしまったそうです。
気に入ったら連泊も良し。いろんなところを訪ねるも良し。 ホテルのサウナも百花繚乱!
市内のホテルのサウナもご紹介させていただきましょう。日本のホテルの「大浴場」のように、フィンランドのホテルも各室のシャワーのほかに、宿泊者が利用することができるサウナがあるのですが……。
風格とモダンさをあわせ持つ「HOTEL St.GEORGE」には、「St.GEORGE CARE」というスパ施設が。ものすごく広いスペースに、快適に過ごせるさまざまな設備が並んでいます。
適温が保たれたサウナ室には桶とラドルももちろん完備されているのですが……「アッラス・シー・プール」同様の、押すとストーンに水が射出される“遠隔ロウリュ”ボタンも設置。
また、フィンランドではほとんど見かけないスチームのサウナ室もありました。
さらに、この施設には大きなプールのほかに、なんと……水風呂も!
プールはおそらく20℃台後半の水温なのに対して、この深い鍵穴型の浴槽の水はもっと普通に冷たくて……水風呂文化しか知らない我々をとても狂喜させたのは言うまでもありません。冷々交代浴だって、イケちゃうわけですし……。
ゆったりとした休憩ラウンジ。かたわらにナッツや飲み物などがさりげなく置いてあるのも……いいですねぇ。
最新のものや、ほかにはないものも大胆に取り入れているこのラグジュアリーなスパ施設。ホテルのメインエントランスとは別動線の入り口もありました。きっとビジター利用する方もめちゃくちゃ多いんだろうと思います。
また「ウーシ・サウナ」のある新興住宅街エリアに建つスタイリッシュなホテル「Clarion Hotel」には、最上階フロアに“超眺望”なサウナが。
清潔で明るい待ち合いスペースを抜けていくと……サウナ室にも光が燦々と差し込むつくりで、ゆったりとリラックスして蒸されることができたのですが、やっぱり特筆すべきは外気浴。
実はフィンランドに行くまで「水シャワーと外気浴だけで、本当に満足できるのかな?」と、水風呂依存気味な私はやや思っていたのです。まぁ、それはまったくの杞憂に過ぎず、ここを訪れる前に他のさまざまな施設で「ぜんぜん大丈夫やんけ! むしろ外気浴だけで快感!!」とわかってはいたのですが……。でも、ここの外気浴はとにかく最高でした! 目の前に海=運河があることや、そもそも地上からの高さがあるので、風の通りがものすごくいいんです。
スポーツジムレベルの大きな温水プールもあるので、陽光揺らめくその水に浮かんで“荒熱”をとったあとに、ここに座れば……日本と違い、本当に空気がベタベタしていないので、それはもう、はかどりまくりのリチャージが可能!
朝からじっくりとサウナを満喫し、新たな1日をスッキリとスタートすることができました。
いやぁ。気がついたら、書きたいことが多すぎて、かなりの長文になってしまいました。サウナも街のスポットも、出会う人々もやさしく、とにかく魅力的な街、ヘルシンキ。できればもっともっと長期滞在したい……いや、住んでしまいたいと本気で考えてしまったほどです。
撮影/佐藤佑一、編集部