フィンランドサウナ旅⑥街もサウナも心安らぎ胸躍る @ヘルシンキ

今夏発売した「SAUNA BROS.vol.8」。その巻頭特集にて掲載しているフィンランドへの旅の模様を振り返る追想記を、あらためてお届けしています。6回目の今回は、ヘルシンキ市内のいくつかのサウナと街について振り返ってみたいと思います。

前回記事でリポートしたヘルシンキ市内の最古の公衆サウナ「コティハルユン・サウナ」は、創業からまもなく100年とあって、さすがの風格と味わいでしたが、近年につくられた公衆サウナ、ホテルのサウナなどは、モダンでクールなデザインのものや機能などに最新の技術を取り入れたもの、ラグジュアリー感を強く感じる施設もありました。
ヘルシンキに滞在したのはわずか3日間。なので、もちろんごくごくほんの一部というか、わずかしか触れられなかったとは思いますし、また“取材”ではなく一人の“利用客”として訪問したため、サウナ室の写真などもない施設も多いのですが……見たもの感じたものを綴っていきますので、ぜひご想像いただければと思います。


(なお、この集中連載のこれまでの記事はこちらからまとめてご覧いただけます。 ←よろしければぜひ併せてお読みください)

目次

まずは都市型アーバンサウナ「アッラス・シー・プール」へ!!

「アッラス・シー・プール」は、バルト海に面したヘルシンキ有数の人気スポット=「マーケット広場」の対岸に2016年にオープンしたお洒落な都市型アーバンサウナ。埠頭の陸地部分に「母屋」的なメイン棟があり、海上に浮かぶ広いフローティングデッキと行き来しながら楽しめる、その名の通り、プールとレストランが併設された複合型施設です。

この本館の“2階”部分に本格レストランがあるのですが……
“1階”のサウナ&プールエリアにも、
ドリンクや軽食が楽しめるカフェが!
サーモンのベーグルもサラダも
シナモンロールもコーヒーも……美味でした

いや、私たちがサウナ好きだから、“プールが併設”と考えてしまうのかもしれず、フィンランドの人にとっては、あくまでもプールがメインの施設なのかもしれません。それが証拠に、フローティングデッキに設けられた温水(27℃ほど)の広いプールでは、地元の方がかなりな真剣モードというか、結構な勢いでスイムしまくっています(そういえば、私たちは訪問しませんでしたが、市内にある伝統的な公衆プールにも当然のごとくサウナは併設されているそうです。映画「かもめ食堂」で撮影に使われた「ウルヨンカトウ市営プール」のサウナも、ヘルシンキの人たちに愛されているとか)。

ちなみに、この「アッラス・シー・プール」のすぐ横にそびえている観覧車が、あの“ゴンドラのひとつがサウナ”になっていることで有名な「SkyWheel Helsinki」です。

最も高い位置は地上から約40メートルで、めちゃくちゃ眺めが良いんだそうですが、この「アッラス・シー・プール」も開放感がたまらない施設でした。

海と街を見ながらのロウリュ。3種のサウナ室で快適に蒸される

エントランスを入りフロントで受付を済ませると、ICタグのついたリストバンドが手渡されます。これがサウナ&プールエリアに行くことのできる“カギ”がわり。

更衣ロッカーの施錠もこのタグで行えるのですが、便利だしすごくいいなと思いました。手首に着けていても軽いし、汗や水に濡れてもサラっとしていて全然不快感がない! なにより金属製のカギなどのように肌に触れても“アチ〜っ”とならない!! いま思えば、この施設で快適さや“開放感”にすっかり浸れてしまったのには、このタグも大きく寄与していたかもしれません。

さて、この「アッラス・シー・プール」には3種のサウナ室があります。メインの建物にある広い(20〜30人は入れそうです)男女共用のサウナ室にはやはり広くとられた大きな窓が。ベンチに座ると目の前にバルト海の大パノラマが広がります。これがなんとも絶景! ずっと見ていられます。
このサウナ室にはもうひとつ面白い特徴が。ストーブ上にオートロウリュのノズルっぽい水の射出口があるのですが、なんと、ベンチに何カ所か設置されているボタンを押すと水がストーンに噴射されるという仕掛け! つまり、ストーブから離れた場所に座ったままでロウリュができるんです。
この“遠隔ロウリュ”装置を日本のとある施設で見かけたことはありましたが、このシステムをフィンランドのサウナ室で目にしたことは自分の中ではちょっと意外でした。でもよく考えてみると……日本にある快適なものがサウナの“母国”にあるのは当たり前ですね。伝統的な従来のやり方にこだわらない“進化”に貪欲な施設もあるはず。

そのパノラマサウナのすぐ横には、やや小ぶりながら奥行きのあるサウナ室も。こちらは、室内中央に鎮座するストーブに普通にラドルでロウリュするトラディショナルなスタイル。ややコンパクトなつくりのお陰でしょうか、ほどよいアツさと蒸気がめっちゃ気持ちいいサウナ室でした!!

3種めのサウナ室というのは、フローティングデッキ上に並んだ黒い3つの小屋の中に。それぞれ男性用、女性用、ユニセックスとなっていて、各室ともつくりは同じだそう。

8人くらいは入れるでしょうか。こちらもややコンパクトな、2段の座面が向かいあう形になったサウナ室です。円筒形の大型HARVIAストーブが床面=足先よりやや深い位置に埋め込まれていて、足元の空気もしっかりあたためる構造。海側は全面が大きなガラス張りになっていて、目の前を大きな船がゆっくり行き交う情景を見ながらただただリラックスすることができます。

どのサウナ室でも、地元の人たちが楽しげに談笑しながら、ロウリュをバンバン繰り出します。いい蒸され具合を常に楽しむことができたのでした。

キンキンの海水プールで……シャキーンとクールダウン。潮風とカモメの鳴き声もたまりません

そしてこの施設最大の特徴といえるのが、フローティングデッキ上の3棟の小屋のすぐ横に設けられた、バルト海の海水が引き込まれたプールです。

海水を使ってはいるのですが、目の前の海ではなくかなり沖合いから引き込んできた水を濾過処理しているそうで、なんとこの日の水温は8℃!

夏季はほんの少し温度は上がるそうですが、それでも十分にキンキンでしょうね(逆に冬季はどれほど下がるのか、想像しただけでシビれます♪)。
ヘルシンキっ子たちは威勢よく入水していましたが、水深1.8メートルという表示と水温にややビビった私は、恐る恐るステップを降りて、そっと首まで浸かったのでした。
……バルト海の水は強烈です。ロウリュで火照った身体がほんの数秒で見事にクールダウン! 十数秒後には「うひょ〜っ」という声とともにプールからデッキへと飛び出していたのでした(笑)。

ただ、サウナ好きの方なら想像できるかもしれませんが、この強いクールダウンがこのあと素晴らしい効果をもたらしてくれます。広いデッキにはリクライニングできるチェアやベッドがズラリと並び、潮風に吹かれての外気浴を堪能できるのですが……つい先ほど、あれだけ冷たい水に入ったこともあり、この風に吹かれている時間はむしろ全身がぽっかぽか。目を閉じれば、海の音、そしてカモメたちの鳴き声が耳に飛び込んできます。ふぅ〜っ。最高ですね。

ヘルシンキでは、多くのサウナ施設が午後遅めや夕方からの営業開始なのだそうですが、ここはうれしいことに午前中……というよりも早朝から営業スタート(平日は午前6時半から、土日は午前8時から)。この連載の初回でも記したように、日本からの直行便は、朝イチでヘルシンキ・ヴァンター国際空港に到着します。

ヘルシンキでの最初のサウナとして旅程に組み込んでみるのもいいかもしれません。 

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