フィンランドサウナ旅⑤コティハルユン・サウナで見た「豊かさ」

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シンプルな床やベンチと巨大ストーブがつくる超ストロングな熱。これは最高!

……アツいです。フィンランドのサウナは、温度的には日本ほど高くはないのですが(だいたい80℃台後半から90℃ちょっとくらいという感じ。もちろん、その分、ロウリュの蒸気で体感温度を調整します)、ここは別格でした。おそらく110℃くらいは軽くありそうです。

床はタイルで、ベンチはコンクリート。無骨で飾らない造りですが、そうした素材の影響もあるのでしょう。

室内の温度だけではなく、慣れないうちは足の裏がめっちゃ熱くて、ぴょんぴょんと跳ねるように移動するしかありません。そういえば、ロッカールームにサンダルが置いてあったのを思い出しました……。


そしてお尻の下に、やはり用意されている木の簀子(すのこ)を敷いて座ります(人によっては足の下や背中の後ろにも)。

ストロングな熱さを生み出しているのは、この巨大なストーブ。高さは2メートルを軽く超えていて、ストーブというよりは、もはや焼却炉とでも呼びたくなるほどのド迫力。

上下にあるそれぞれ小さな扉は、「下の扉」が薪を放り込む用。「上の扉」がラドルでロウリュを投げ入れる用です。

ロウリュの扉は高い位置にあり、また熱いため、開けたいときは、この大きめなラドルの柄を器用に使って留め金を外します。

見てください、この赤く熱せられたストーンを! ここまで熱するために、毎日オープンの4〜5時間前にはストーブに薪をくべ始めるそうです。その薪も、長さおよそ1メートルほどはありそうなジャンボさ!

なお、扉内部から外に伸びる細い鉄管をたどっていくと、下部にレバーが見えますが、実はこのレバーをひねると鉄管に水が流れるようになっています。扉を開いたり、ラドルを使ったりすることなくロウリュが出来るような仕掛けだそうです。いいですね。

ただ、女性サウナ室ではこのレバーを使う人も多いそうですが……。男性はほぼ使わず、もっぱらラドルで投げ入れるスタイルが多いようです。私も不器用ながらラドルで扉を開いて、数杯をロウリュさせていただきました!

利用客同士で互いを思い合う。ロウリュのたびに感謝の言葉が飛び交うやさしい空間

さて。このコティハルユン・サウナには、ちょっとしたローカルルールというか、独自の風景がありました。それは、サウナ室に入った人が(また、退出する人も)、室内に向かって「ロウリュするかい?」と声をかけるというもの。

こんなに大きなサウナ室で、なおかつ、ほとんどの人が、頭が天井スレスレに位置するような上段に座ります(なんと6段目!)。また、もっと“特等席”といえるエリアもあります。
(下の写真の向かって左側奥の部分に、いわゆる“熱だまり”になる、暗めのロフトのようなスペースがあるのです)

ここ、本当に最高のアツさでした。平然と座っている常連さんたち、本当にスゴイです。ただ、ここにポジションをとると、出入り口付近にあるストーブからの位置が遠いため、自分ではロウリュができません。


そのため、お互い、ストーブに近寄ったタイミングで「いま、心地よい状態かい? 俺がやれることはあるかい?」と聞くということなんですよね。


ロッカールームでもそうですが、サウナ室内でも、たいてい多くの方が和やかに会話をしています。そんななかで、室内に入ってきた人(あるいは出ていく人)が、「ロウリュするかい?」と声をかけると、あちこちから返答が。

そのリクエストに応じてラドルで水が投げ込まれると、一瞬の間とともにアツい蒸気がサウナ室内に満ちていきます。すると、室内のあちこちから「kiitos!」(キートス=ありがとう)と、感謝の言葉があがり、そのロウリュを静かに味わうように、しばし静寂が訪れます。

そうして、しばらく経つとまた会話が再開されるのです。

誰もが装飾を脱ぎ捨て(裸になって)、自由にくつろぎ、楽しむ場所。そしてお互いに心地いい空間をつくるために、さりげなく気を配り合い、その配慮に感謝し合う光景。そんな文化が生まれ、守られ、継承され続けているって、なんだかすごくいいなぁ、豊かだなぁ、と思わされました。

なんとも印象的なシーンでした。

まさに身も心も……芯からすっかりあたためられた全身にシャワーを浴びて、店頭へ。ベンチに腰掛けて目を閉じると、日本に比べて空気がカラッとしていることもあり、ひんやりした空気がとても心地よいです。

思わず顔をあげて、目を開くとこの景色。風に吹かれながら、今日ここで目にしたもの、感じたものを、もう一度頭の中で反芻します。

さっきのシーン、やっぱり良かったなぁ……。本当に「hyva」(ヒュヴァー=最高、素敵)な場所です。

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