さざ波に揺られて、深呼吸。湖面で自然に包まれる
心ゆくまで蒸されたら、あの静かな湖面へ向かいます。桟橋を抜けて、水面に静かに身体を浸すと火照った肌を、一気に清冽さが包んでくれます! のちほど持参した水温計で測ってみたところ、この日の水温は12℃だったのですが、とてもそんな低温とは思えないほどのまろやかな肌感。とにかく水質がやわらかくてマイルドなんですね。聞いてみたところ、この水は飲んでもまったく問題がないほどキレイな水質なんだとか。
水のやさしさを感じながら、顔だけ水面に出し、耳元まで水に浸してプカリと全身を伸ばします。自分の身体のまわりに起こるさざ波に揺られながら目を開けたり、閉じたり。
水面に漂いながら感じる、数分間の無音の世界。聴こえるのは自分の呼吸音と鼓動だけ。もう一度目を開くと、不思議なくらいの静けさの中、自分が水や空気と一つになったような不思議な感覚に陥ります。ついさっき圧倒された大自然に、いま静かに、自分の存在が包み込まれています。
桟橋に上がり、身体を投げ出しての深呼吸。空っぽになっていた頭の中に、徐々にぼんやりと世界が戻ってきて、やがて視界も聴覚もクリアになってきました。
これがフィンランドのサウナか!! 日本のアウトドアサウナ施設でも同じようなシチュエーションは存在するし、気持ち良いのですが……正直に言うと(悔しいですけど)ちょっと別物かもしれないなと感じてしまいます。
木と石と火、水と空気と蒸気。音も光も……いま自分を包み込んでいるすべてが、本当の意味で「自然のもの」で成り立っています。きわめてシンプルなのに、どこよりも気持ちいい。気持ちもカラダも安らぎの極致にいます。
大切なものって一体なんなのだろう? 必要なことやものって、こういうことなんだよな。そんなことをあらためて教えてくれる。それがスモークサウナの素晴らしさなのかもしれません。
ゆっくりと過ぎる時間。冬には空と湖に「Wオーロラ」も!
何度かサウナ小屋と湖をゆっくりと行き来するうちに、太陽が森の向こうに沈み始めます。午後9時半をちょっと過ぎた頃です(※体験したのは5月中旬くらい)。そしてさらに数十分が経過した頃、気づくと湖上の風景がうっすらとピンク色に染まり始めました。
さらに1時間ほどが経っても、湖面も森もこの明るさ。高緯度に位置しているため、夏はこのように「白夜」の状態に近いくらい、明るい時間が続きます。
日付が変わる時間帯になっても、明かりをつけなくても過ごせますし、一度、あたりが闇に包まれた後も、朝の(深夜の?)4時前ごろには、再び明るくなり始めます。
逆に、冬季は日の出が午前9時半過ぎで、午後3時ごろに日没してしまうなんていう(=いわゆる“昼間”が5時間ほどということ……!!)日もあるのだとか。
不思議な気持ちになりますし、自然の凄みみたいなものも感じます。
先述したように、夜がとても暗いこのエリアでは、夏を過ぎればオーロラを眺めながらのサウナ体験も楽しめるそう。なおかつ、湖面が凍らない秋や初冬の時季には、静かな湖面がオーロラを反射する「Wオーロラ」が見られるチャンスもあるのだとか!
極上のサウナ体験とここでしか見られない幻想的な景色。そんなぜいたくな一夜にぜひ立ち会ってみたいものですよね。
最高の環境で過ごした濃密で豊かな時間。心あらわれる1日を、またいつの日か。
湖畔にはほかに、いくつものサウナ棟が点在しています。そちらも覗かせていただきました。
いちばん湖面に近い(徒歩数歩です!)テントサウナは、とにかく巨大! 常設なのでベンチも床面もしっかりと整備されていて、ワイルドさと快適さが共存していました!
サウナストーブもHARVIAのタワータイプ。これ、テントに置くやつじゃないでしょう!! ここも気持ちいいですね……。
こちらはサッカーボールのような形をした、外が見える「ガラスイグルーサウナ」。オーロラはもちろんのこと、サウナの中からすでに風景、自然を眺め放題です。
ご覧のようにロウリュもパワフル。ここも……控えめに言って最高です。
もちろん、オーソドックスなスタイルのサウナ室も数種類があります。モダンなイメージのものも。
ややクラシックな雰囲気のサウナ室も。
それぞれの小屋の前にはこんなグリルがあったりして、ここでマッカラ(=ソーセージ)を焼いたり。
合間や浴後にビールやロンケロ(=「ロングドリンク」という、フィンランドで愛されているお酒。ジンをベースにグレープフルーツジュースで割ったもの。日本で言う酎ハイでしょうか。めっちゃ飲みやすくて美味しいです)をかたむけ合ったり。
皆さん、それぞれ素敵な時間を過ごされているのでした。
また、自然との一体化を感じられるのはサウナ浴中に留まりません。こうしたサウナ棟のほど近くに、全室レイク&スカイビューのガラス張りの宿泊コテージ「ガラスイグルー」が点在しています。
樹々が揺れる音や鳥のさえずり&羽ばたきを聴きながら、ときにはオーロラに包まれながら眠り、陽光に照らされ、青空を見上げながら目覚めることができるんですね。
すべてのサウナは、サウナキーパーさんにより常に最適なコンディションに保たれていて、また、提供される食事なども最高に美味。何より、この環境と『サウナの神髄』を感じさせてくれる“キング・オブ・サウナ”=スモークサウナの存在。
「世界一、しあわせな国」とも称されるフィンランド。その理由を、まるごと体感できる……そんな施設です。
わずか1日の滞在でしたが、とても濃密で、豊かで、心も身体もすっかり浄化されたような気がします。ユヴァスキュラ、そしてこの「Revontuli Resort」への再訪を心に期して、次の目的地へと向かったのでした。
撮影/佐藤佑一、取材・文/編集部