フィンランドサウナ旅②湖水地方で体感した「サウナの神髄」

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静かだけど圧倒されるロケーション。もう最高です!

そのユヴァスキュラのさらに郊外エリアへと向かい、たどり着いたのが「Revontuli Resort」。静かな森の中の、大きな湖のほとりにあります。

「Revontuli」とはフィンランド語でオーロラのこと。このハンカサルミはこの目の前の湖面も含め、多くの湖沼に囲まれているのですが、夜間の照度がとても低いそうで、フィンランド国内でも屈指の美しいオーロラが望める地として知られています。実際、近くに研究施設や天文観測台なども存在しています。

雄大な自然の中にポッカリと開けたこの光景。とても静寂です。耳に届くのは風の音と、それがシラカバの若葉を揺らす音。鳥たちのさえずり。

そして、風が吹きわたる瞬間に湖面で起こるさざ波の、ザザ、ザワ、サササ〜という微かなやさしい調べ。それらを聴きながら、湖畔で大きく息を吸い込み、思わず目を閉じたときに感じた「生の実感」。

目の前には湖へと続くいくつかの桟橋。


「桟橋」があるとないとでは、実は大きな違いがあるんですよね。ゆっくりと足先から水に入って深くなっていくのもそれはそれでいいんですが、桟橋からドボンと行ったときの快感は、ホント別物だと思います。サウナから出たあとの気持ちよさを今から想像してしまいますね。

そして、そのうち一つの桟橋には、先端部にベンチが造りつけで置かれていました。

ふと、とあるフィンランドのサウナに詳しい方から以前に聞いた話を思い出します。「桟橋の先にベンチがある。それを見ると『フィンランドだなぁ〜』って思うんですよ」と。

めっちゃ気分がアガってきました。さぁ、サウナへ向かいましょうか。

初体験の“キング・オブ・サウナ”=「スモークサウナ」って……?

湖畔にはタイプや熱源などの異なる数種のサウナ棟や大きなテントサウナが点在しています。そのどれもがハイクオリティーというか気持ちよいのですが、ちょっと別格だったのがこのスモークサウナの棟。

“キング・オブ・サウナ”(サウナの王様)とも言われるスモークサウナ。日本ではほぼ体験できない、「原初のスタイル」のサウナです。

その特徴、定義としては「『煙突のない薪ストーブ』によってあたためるサウナ小屋」、ということになるでしょう。スモークサウナはフィンランド語では「Savusauna」(Savuは英語のスモークと同様、「煙」という意味です)。煙突がないため、薪を燃やすと、室内には煙が充満します。

長時間、薪を焚いて、サウナストーンが十分に熱を蓄めたら炎を消します。そして窓などから煙を追い出し、最初のロウリュで蒸気とともにススぼこりや残った煙を吹き飛ばしたら、ようやく入ることができます。炎を再度おこすと煙が出るため、いわゆる「追い焚き」はしません。あくまでも石に蓄めた“余熱”とロウリュによるアツさを味わうのです。

一般に、サウナの歴史は2千年ほどと言われており、長い間、この伝統的な様式のものが使われてきましたが、数百年前(1700年代と言われています)に、煙突付きの薪サウナストーブがつくられ、さらに1900年代に入って電気が熱源のサウナヒーターが登場。それらの便利さや安全性から、スモークサウナは一気に取ってかわられてしまったそうです。

ただ、なぜ今だに“キング・オブ・サウナ”と呼ばれ、愛されているかというと……石からの“余熱”とロウリュによる蒸気が、とてつもなく気持ちいいから。独特の、どこかやわらかいアツさが感じられるのです。

やわらかな余熱と蒸気。燻された香り……五感で味わう極上の体験。

この「Revontuli Resort」のスモークサウナも、まさに極上の心地よさでした。

扉を開くと、まさしく、やわらかな熱が体を包んできます。室内はとても暗く、ベンチの足元に置かれたランプの明かりだけがほのかに灯っているだけ。目が慣れるまでは、周囲すらよく見えないほどの暗闇の世界です。

室内に漂っているのは、ついさっきまで焚かれていた薪の、そして長い間、煙で燻されてきた壁や座面=木材に染み込んだスモーキーな芳香。いいですね。ものすごく落ち着きます。あっという間にこの静かな空間に没頭できます。

大きなストーブに積まれたサウナストーンに静かにロウリュすると、ジュワーっという音とともに立ち上った蒸気が身体をゆっくり撫でていくのが分かります。たまらない気持ちよさ……。それにしても、なんてマイルドなアツさなんでしょうか。ずっとこうして座っていたいほどです。

まさに五感で感じる心地よさに心ゆくまで全身をゆだねます。一体どのくらいの時間が過ぎたのか……気づけば身体の芯まであたたまり、全身から気持ちいい汗が静かに噴き出していたのでした。

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