京都銭湯特集/旭湯①プール級の水風呂を生み出す南区の地下水

最新刊SAUNA BROS.vol7の「京都銭湯サウナ特集」から「旭湯」を紹介します。本誌では紹介しきれなかった魅力を2回にわたって紹介。SAUNA BROS.vol.7には載せきれなかったアザーカットもたっぷりお届けします!

京都を代表する景色のひとつである東寺の五重塔。その南側を東西に九条通が通っています(京都府外の方からすると国道1号線の方がなじみがありますね)。国道1号線を西に進み、羅城門遺址を通り過ぎて100mぐらい、細い道を南に曲がると「旭湯」さんが見えてきます(車の場合は一方通行にご注意下さい!)。

目次

昭和36年創業「南区の旭湯」

「旭湯」さんは羅城門跡からほど近いこの南区で、創業以来63年という歳月を銭湯として町に明かりを灯し続けてきました。ちなみに、以前は近くにもう1軒旭湯を経営しており、実はそちらが1号店だったとのこと(なので1号店から数えるともっと長い歴史になります)。今は現在の「旭湯」のみとなり、2代目の蒔田洲治さんと息子の3代目敏博さんを中心に、家族で経営されています。

2代目店主の蒔田洲治さんと息子で3代目店主の蒔田敏博さん

「旭湯」という名前の銭湯は、京都市内に現在3軒あります。「旭」という言葉は、太陽が昇る様子を思わせ、新しい一日の始まりや、諸事登り調子でうまくいくなどの良いイメージがあり、銭湯に限らず昔から屋号にするお店が多かったようです。ですので「旭湯」だけだと、京都ではどこの「旭湯」のことか通じないこともあり、最近は「南区の旭湯」と名乗ることも多いそうです。

「旭湯」の入口。太陽が昇るような赤いカラーとシルエットが印象的

銭湯としては規格外!? 大きなサウナ室と水風呂

そんな「旭湯」さん、皆さんにお伝えしたい魅力がたくさんあり、どこから紹介しようか迷う程なのですが、やはりサウナに関連する所からご紹介していきましょう! 「旭湯」さんのサウナの魅力、それはサウナ室や水風呂の広さにあります。そして外気浴もしっかり露天風呂のスペースに作られているのも魅力的。

男女サウナ室

サウナ室ですが、銭湯サウナとしては広めの15名は入ることができる大きさ。2段のイスが長方形の部屋にズラッと設けられています。温度計を見ると85度程(体感温度はプラス15〜20度くらいになるそうです)。遠赤外線サウナが身体を芯から温め、じわじわと汗がが出てきます。湿度もあるのでヒリヒリするような熱を感じず、ストレスなく汗をかくことができるのも魅力です。

サウナストーブの上には、専用の芳香剤がさりげなく置かれ、リラックスできる空間作りをしていました。

「今はコーヒーやヒノキの香りを試しています。今は色々試しながら模索している段階ですね。今後もお客さんに喜んでもらえるような空間になるよう、試行錯誤していきたいと思ってます」

と話す3代目の敏博さん。お客さんの反応を見ながら、あれこれ考え作っていくのが楽しい様子で、ワクワクした雰囲気がこちらにも伝わってきました。「旭湯」さんは京都の銭湯としてはかなり早い時期にサウナを導入していましたが、当時のサウナ室は3〜4人が入れる程のサイズだったそうです。サウナ室の大きさも、店主たちの試行錯誤の末に今の大きさになりました。

椅子の下のすき間から大量の蒸気があふれ出します

ちなみに「旭湯」さんにはミストサウナもあります! 銭湯でサウナが選べるというのはぜいたくですよね。

水風呂の横にひっそりとあるミストサウナ入口

ミストサウナ室の中は正方形に近い空間で5〜6人程が入れる広さ。温度は60度程なのですが、8〜10分程度に1度、大量の蒸気が発生します。蒸気が放出されると視界は真っ白になり、向かいに座っていた人がどんどん蒸気の中に消えてゆく……。全身を大量の蒸気でくるまれとても気持ちいいです。

さて、「旭湯」さんの特徴のひとつとも言える、この大きな水風呂もご覧ください。

広い浴槽。もう、見た目はプールに近いです。頭から飛び込みたくなります(……飛び込まないでくださいね)。実際、筆者が「旭湯」さんの水風呂と相対する時は、プールの前に立った時のようなワクワク感があります。週末の夕方時になると、プール用の水中ゴーグルを付けた、地元のちびっ子たちを見かけたことがあります(笑)。大人の感覚でプールに見えるならば、子供たちには完全にプールに映るんでしょうね。

広いだけでなく深さもあ

そしてしばらくすると、身体が冷えたのか、ゴーグルを付けた子供がお父さんとサウナ室で温まっていたりします(笑)。そんな光景を見ていると、微笑ましいと同時に「こうやって銭湯文化が、次世代に引き継がれて行くんだな」と感慨深い気持ちになりました。
といっても、決して水風呂を泳ぐことが公認されているわけでなく、あくまで黙認。水風呂でのゴーグルの光景も、「旭湯」さんでは昔から見慣れた光景でもあり、親御さんも常連さんも、通ってきた道なのだと思います。なので、「自分も子供のころ泳いだな」と皆さんあたたかい目で見ていることが多いそうです。

3代目の敏博さんにお話を伺うと、ご自身もやはりそういった経験をされてきたようで
「正直私も子供の頃は、友達呼んでバシャバシャしてましたね(笑)。それで常連さんに怒られたりして(苦笑)。今は、自分の子供が友達連れてきたりしますけど、店主の子供がバシャバシャ人様に迷惑かけるわけにもいかないんで、そこは注意してます」
と苦笑いしながら話してくれました。

高くから落ちる打たせ水が滝のように飛沫をつくる

ちょっと違うぞ、南区の水

水風呂の水は、やはり京都の地下軟水です。今回の京都取材を通じ(これまでの京都銭湯特集の記事はこちらから読めます)本当に京都の地下にはたくさん水があるんだな、ということが改めて分かりました。

取材開始時の事前の予習で京都の地下に琵琶湖と同じくらいの水量があると知り、
「本当にそんなにあるのかな?」と半信半疑だった筆者ですが、施設さんを訪れる度に掛け流される大量の地下水を目の当たりにし続け、今では完全に信じ、なんだったらその水量にちょっと恐怖しています(過去の京都銭湯の記事はこちらから読めます)。「旭湯」さんの水風呂は大きいので、特にたくさんの水が必要になります。どれくらい深いところまで掘って水を汲み上げているんだろうと伺うと、昔は地下130mだったとのことですが、数年前改めて調査をしたところ、水位が上がり、わずか地下7mから取水できるということでした!

「以前は隣に工場があって、工場が地下水をたくさん使ってたんですが、今はなくなって、それで一気に水位が上がったんですかね(笑)。まぁでも、この辺りは元々川が流れてましたし、セリの田んぼもいっぱいあったりして、水が豊富な場所なんですよ」
と話す2代目の洲治さん。比叡山から流れてくる水が、地下に潜り、水脈が大阪方向に向かって対角線に伸びているのですが、「旭湯」さんはちょうどその線上に位置するため、特に水が豊富とのことです。

「旭湯」さんのある南区は、京都駅より南側に位置し京都駅北側にある市内中心部の銭湯さんとは少し離れた場所にあります。そのため水源が微妙に違うのか、地下水の温度も市内中心部よりも冷たく汲み上げ時の温度は14〜15度とのことです。それを一度タンクに入れ、少し置いて20度程にして掛け流しの水と合わせて水風呂に入れ、入りやすい温度にしているとのことです。私たちが何気なく使用している水にも、そんな「ひと手間」がかけられていたんですね。

掛け流しの水と一度寝かせた温めた水、それぞれ違うはき出し口から出ている

そういった背景もあるからか、「旭湯」さんの湯船は、水風呂だけでなく浴槽が深めです。

そもそも、京都は「深湯」が必ずと言ってほど設けられているのですが、「旭湯」さんは特に深い気が。ちょっと水深を測っていただきました。

深い! ちなみに深湯の良いところは、自然と水圧がかかることで、第2の心臓ともいわれるふくらはぎが刺激されること。下半身の末端から血液が心臓に戻りやすくなり、血流が促進され体に良いとされています。こういった利点があるからこその深湯だったんですね。

今回はサウナと水風呂、そしてその水質に関するところだけのご紹介となりましたが、「旭湯」さんの紹介ポイントはまだまだたくさんあります。次回は、種類の違う露天風呂や個性的なタイル絵、そしてオーナー家族が作り出す居心地のよさなど、「旭湯」さんの魅力を、さらに詳しくご紹介していきたいと思います!

現在発売中のSAUNA BROS. vol.7では、ダイナミックな写真とともに「旭湯」の魅力を特集しています。是非そちらも併せてご覧ください!

旭湯
■住所:京都府京都市南区唐橋羅城門町20
■営業:平日=後2:30~深0:00 (日曜=前8:00~深0:00)
■定休:月曜
■料金:490円(サウナ込み)

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