水脈と風を誘うサウナ「SATOYAMA TERRACE」の秘密

12/3(水)に発売したSAUNA BROS.vol.11でも堂々とご紹介させていただいた「SATOYAMA TERRACE」。さらに、SAUNA BROS.WEBでも、その魅力をボリューム感を持って深掘りしました。(未読の方はぜひ→SATOYAMA TERRACE①)今回はなぜ、「SATOYAMA TERRACE」ができたのか、その背景に迫ります。

荒れ果てていた里山に、もう一度風と水の循環を取り戻したい──。そんな思いから生まれた「SATOYAMA TERRACE」は、単なるサウナ施設にとどまらず、土地の再生を軸にした10年規模のプロジェクト。 

そのはじまりの背景を聞くと、「だからこそSATOYAMA TERRACEでのサウナ体験は、単なる“サウナ体験”を超えた、自然と一体になる感覚をもたらしてくれるんだ……」と、妙に納得するのです。 

目次

荒れた土地との出会いから、すべてが始まった 

千葉県・富津。都心から思いのほか近いのに、車で山道を進むほどに空気が変わっていくのを感じます。「SATOYAMA TERRACE」が建つのは、そんな里山の一角です。 

今では風がよく通り、川が流れる穏やかな場所となりましたが、かつては木々が伸び放題で地面は乾き、水も風も巡っていなかったそう。本来の里山が持つ循環が途絶え、竹やぶのように荒れてしまっていたと言います。 

「この土地を再生し、自然とともに育つ場所をつくりたい」。そんな思いから、「SATOYAMA TERRACE」のプロジェクトは動き始めました。 

サウナ施設をつくることがゴールではなく、“里山を10年かけて育て直すための拠点をつくる”が最終的な目標。だからこそ、この施設には、荒れた土地を再生しようとする人々の意思が宿っています。 

良い環境は、水から整う。だから“水脈を守る” 

「SATOYAMA TERRACE」を語るうえで欠かせないのが、“水脈”という視点。良い環境をつくるには、水脈がとても大切です。水が巡らなければ湿度は生まれず、植物も育たず、風の質さえ変わってしまいます。 

そこでプロジェクトの初期段階で行われたのが、土地の水の通り道を整えることでした。宿泊棟やサウナ施設の基礎は、地中の水脈を遮らないように地面をコンクリートで覆わずに束石基礎で点で支え、地面から浮かせる建築方法を採用。雨水は排水として流してしまうのではなく、地中へ自然に吸い込まれるよう導く。そうすることで、土地は徐々に湿度を取り戻したと言います。 

サウナ体験でも、この水脈再生の恩恵を実感できます。それが、水風呂や滝サウナに使われている“里山の水”。 

滝サウナでは、サウナ室内に設えた岩壁を伝い、上から水が落ちてきます。その水は外部から運んだものではなく、里山の水脈で巡った水をポンプアップして循環させているそうです。だからこそ生まれる、心地のよい湿度感。人工的に霧や蒸気をつくるのとは異なり、水が持つミネラルや温度差がそのままサウナ室に反映され、やわらかい湿熱をつくり出し、体をじんわりと温めてくれます。 

また水風呂の水も同様に、里山の自然から引いてきた水を使用しています。土地本来の水を使うことで、湧き水特有のやわらかさ、温度の安定感、肌当たりの良さがそのまま水風呂に現れます。実際に入ってみると、やわらかく深く包まれ、「こういうことなんだ……」と、違いに驚かされます。 

“風を通す”建築で、さらに特別なサウナ体験に 

水脈と同じくらいこだわっているのが“風”。「SATOYAMA TERRACE」は、“風を通すこと”を前提に建築されています。 

サウナ中に外気浴をしていると、風の存在がどんなに大切かに気付かされます。体で感じる風によって休憩の深さや心地よさがまったく違うものになるのは、サウナ好きなら周知の事実。だからこそ「SATOYAMA TERRACEで」のサウナ体験がほかと違うことが、実感できるはずです。 
 

「SATOYAMA TERRACE」では、“風の通り道”をつくるために、柱は必要最小限、天井にはあえて空間が設けられ、風が淀まずに流れるように床は地面からわずかに浮かされています。こうした工夫によって、風は自然と建物の中へ引き込まれ、テラスやデッキでは、上からふわりと落ちてくるような、肌にやわらかにあたる風を感じることができるのです。 

また、施設の山側には“3本の大きな風の通り道”をつくり、外気浴をしながら直にその風を受けられる設計に。寝転ぶと風と共に地面の冷たさや温かさをそのまま感じられるように、山側の芝生には石が埋め込まれています。 

山を越え、木々を揺らし、小川の湿気をまとった風がそのまま建物に流れ込む。実際に体験してみると、その恩恵の素晴らしさを感じます。だからこそ、ここでしか感じられない外気浴の心地よさがあるのです。 

土地に“寄り添う”。集落のように点在する宿泊棟 

サウナ施設と宿泊施設が並ぶ「SATOYAMA TERRACE」。「山サウナ」「滝サウナ」では自然と一体になったような体験ができ、これまでのサウナ体験とはひと味もふた味も違う新しい感覚が味わえます。そして奥に広がる宿泊棟を訪れると、さらに里山と一体になるような感覚を味わうことができます。 

それは、各宿泊棟の配置が工夫されているから。並び方はとてもユニークで、いわゆる“リゾート施設らしい整列”はしておらず、土地に馴染むように配置されています。山の角度、川の位置、風の流れ……。そのすべてを捉えつつ、小さな集落のように棟が点々と建てられ、建物が自然の一部として風景に溶け込んでいます。 

また、客室には神棚が設けられています。「自然への感謝を忘れない場所にしたい」という思いからだそうです。水が湧くこと、風が通ること、植物が育つこと。そのすべてが当たり前ではないという感覚が、ここでは自然と湧いてきます。 

ここから育っていく里山を、共に見つめていく 

「SATOYAMA TERRACE」のプロジェクトは、まだまだこれから。「ここから景色がどんどん変わっていくので、ぜひ見守ってください」というスタッフさんの言葉通り、里山はこれから季節ごとに、年ごとに、どんどん姿を変えていきます。 

風の道は木々の育ち方で変わり、水脈が安定すれば土はやわらかく、湿度は豊かになっていきます。時間をかけてさらに土地の持つ力を再生し続けることで、やがてはサウナ体験をしながら、舞う蛍を見ることができる──。そんな日がくるかもしれません。 

サウナ体験とは、その日の自然の状態を素直に反映するものでもあります。今日の風、今日の湿度、今日の静けさ……。同じサウナ室に入っても、自然が変われば“ととのい”の質も変わります。 

だからこそ「SATOYAMA TERRACE」は、サウナを通じて自然の変化を身体で感じられる、唯一無二の施設。サウナ体験を通じてどんどん変わっていく里山の景色を見守るのも、とても楽しみです。 

SATOYAMA TERRACE 
■住所:千葉県富津市田原898-1
■営業時間:[日帰りサウナ利用]<平日>前10:00〜後10:00<土日祝>前9:00〜後10:00(最終入館後9:00、日帰りサウナは予約不要) 
■料金:平日2時間半 2,970円(税抜)/土日祝2時間半 3,850円(税抜)※延長は30分ごとに550円 
その他の情報は公式Instagram(@satoyama_terrace)と公式HP(https://satoyama-terrace.com/)をご確認ください。 

「SAUNA BROS.vol.11」
●発売日:2025年12月3日(水)
●定価:1,251円
●発行:東京二ュ―ス通信社
全国の書店、ネット書店(Amazon<https://x.gd/EDQ3J>、セブンネットショッピング<https://7net.omni7.jp/detail/1107664915>、楽天ブックス<https://books.rakuten.co.jp/rb/18459982/?l-id=search-c-item-img-01>、Fujisan.co.jp<https://www.fujisan.co.jp/product/1281703515/b/2784818/>ほか)にてご予約いただけます。
<NEW!!>SAUNA BROS.STORE(https://saunabros.stores.jp/items/692970a2b46a37126d9606fa)でも入荷しました!
本誌詳細はこちら(https://saunabrosweb.jp/pickup_saunabrosvol-11/2025/12/03/)から!

シェアお願いいたします
  • URLをコピーしました!
目次