銭湯にケロサウナ。常識を超え続ける「改良湯」の最新アップデート

やっぱり、銭湯って身近な存在なんですよね。毎号、多くの反響や好評をいただくので、12月3日に発行した「SAUNA BROS.vol.11」でも、またまた「銭湯サウナ」特集を掲載させていただいています。

今号では3軒の銭湯を訪問・取材させていただいているのですが、そのキーワードは、ずばり「アップデート」!

まずは、2025年11月に女性浴室のサウナ設備をリニューアルするやいなや、大きな話題となっている東京・渋谷の「改良湯」を、このSAUNA BROS.WEBでもご紹介しましょう。もちろん現在発売中の誌面でもたくさんのビジュアルとともにダイナミックに紹介しているので未読の方はぜひそちらもご覧ください!

目次

時代に応じて“改良”を重ね、銭湯サウナの概念も進化させ続けてきた老舗

2025年は「昭和100年」にあたることで、さまざまなモノや事柄、場所などが多くのメディアで取り上げられてきましたよね。時代に応じて変わるもの。一方で変わらないもの。それぞれの大切さが、あらためて見直された年だったと思います。

さて。改良湯は創業がなんと大正5年(1916)。実に100年=1世紀以上もの間、人々をずっとあたためてきてくれている銭湯です。
その歴史は、お店の名前の通り、改良=アップデートの歴史でもあります。それも、極めて大胆で、“事件”ともいえるエポックメイキングなアップデートの歴史。

花の都・東京の中でも、文化・流行の発信地でもある渋谷エリアですから、その影響力は決して小さくはありません。

直近のものだけでも、2018年に建築家・今井健太郎氏の設計&デザインによる大改装を実施。旧来の「街の銭湯」のイメージを軽く超越した雰囲気や設備は大きな話題となり、銭湯を初めて訪れる若者たちを増やしたように思います。

光の演出などを駆使したスタイリッシュな世界観で
若年世代にも銭湯やサウナの良さを知らせる存在に
’22年のリニューアル前の男性サウナ室と水風呂です。
ちょっと懐かしくて……載せちゃいました
こちらも’22年のリニューアル前の男性サウナ室
温度と湿度のバランスもめちゃめちゃ良くて、
これはこれで気持ちよかったですよねぇ……

そして2022年には男性浴室を再度アップデート。サウナ室を広げて大型のロッキーサウナを導入し、外気と光を味わえる休憩エリアも誕生させました。人口が多く、土地にも限りがある東京の中でも、渋谷/恵比寿というエリアはちょっと特別です。そのど真ん中で外気浴ができる銭湯サウナ……これも、従来の常識を覆す、いい意味で想定外のトピックスでした。

2022年に男性サウナ室が大きく拡張。
“サウナ待ち”を緩和するとともに
没入感たっぷりの現在のロッキーサウナに
たっぷりのオートロウリュ
没入感ばかりではなく、
セッティングももちろん最高なんですよね
しっかり体の芯まであたたまったあとは、
水風呂とゆったりとしたスペースでクールダウン
渋谷と恵比寿のちょうど真ん中で、外気浴!
従来の“限界”を超えた「改良」でした

時代や社会の変化や進化に応じて、ときには大胆に“改良”することで、変わらぬ大切なものを提供する。

その挑戦は、アツく支持され、改良湯にさらに多くの人を集めるばかりか、その後、街の中で新規オープンやリニューアルを果たした他の多くの施設にも、少なからぬ影響を与えたように思います。

木の宝石こと「ケロ」を使ったサウナ室が銭湯に! これまた日本サウナ史上の事件です! 

とはいえ、今秋に敢行されたリニューアルについては、その計画を改良湯の代表・大和伸晃さんから初めて聞いたとき……ちょっとにわかには頭の中で消化できず、一度聞き返してしまいました。「え? ケロサウナを造るんですか?」と。

そうなんです。女性浴室のサウナ室が、サウナの本場・フィンランドでもサウナ造りに最適とされる超希少な木材=ケロで造り替えられたのです。

壁も天井も、ワイルドだけど美しい木目。
アツさや香りだけでなく、美しさも“宝石”級です!

サウナ好きなら一度は聞いたことはあるかもしれませんが、「ケロ」というのは、フィンランドでも北極圏以北のラップランドなど本当に厳しい自然環境にある地で採取された、樹齢200年以上のシルバーパインが立ち枯れたものを指します。
厳寒の地ゆえ、本当にゆっくり成長することから幹内部の密度がとても高く、ケロ材は断熱や蓄熱に優れています。そして芳醇な香りも特徴。ごくごくわずかしか採取できないコトもあって、「木の宝石」とも称され、その心地よさは全国でも数えるほどしか体験できる施設はありません。

お金の話になってしまうとちょっと下世話ですが、その価格は通常よく使われる木材の、軽く十数倍はすると言われています。また、とても希少なため、まとまった数を輸入することはかなり難しくなってきているそうです。(したがって、今後、新たにケロサウナを造るのは非常に難しいらしい、とも聞いたことがあります)


壁や天井はもちろんのこと、(端材もうまく生かす形で)砂時計に至るまで、そんなケロ材にこだわりまくって造られたサウナ室。ワクワクしながら一歩足を踏み入れた瞬間……これはたまりません!

この砂時計もケロならば、窓枠だってケロなんです
この味わいある取っ手も、もちろんケロで

熱と香りにまさに全身を包まれるような体感。う〜ん。もう、まさに至極です。

美しく、最高のアツさで、香りも良い空間。これぞまさに「熱の宝石箱」!?

リニューアル前から、改良湯の女性サウナ室は座面の広さが好評でした。

こちらはリニューアル前の女性サウナ室
やはり、これはこれでいいサウナ室でしたよね。
特に座面の奥行きが最高でした……
その良さが、全く損なわれてません。
広い!座りやすい!気持ちいい!
さすがです!!

その長所は引き継がれ、しっかりと生かされたまま。あぐらでも体育座りでも、周囲や前後を気にせずに好きな姿勢で、ただただこの美しくも心地よい空間で“没入”できるんです。(※なお、座面だけは、アツくなり過ぎてしまうと危険や逆効果かもしれないということで、熱伝導率が低いアバチ材をあえて使用しているそうです)

繰り返しになってしまいますが、とにかく香りがスゴいんですよね。ふと壁や天井に目をやると、あちこちから、今もなお樹液がしみ出しているのが見えます。

表皮は立ち枯れていたとはいえ、大木の中は生きているんですね。自然のスゴさ、あらためて感じます!

そんな樹液の香りでしょうか。どこか甘くて、また森林浴中のような爽やかさが本当にたまりません。ここは別世界です。

ケロサウナと「イズネス」の相性が素晴らしい! 高性能ガス遠赤外線ヒーターの魅力を再確認 

ケロサウナというと、たいていの施設ではセルフロウリュのできるストーブを採用していますが、改良湯ではオートロウリュ機能のある遠赤外線ガスヒーター「イズネス」が前面に鎮座。毎時20分と50分の2回のタイミングで、満載のサウナストーンにじわじわと水が射出されます。

そのせいもあってか、ゆっくりと長い時間、蒸気が室内を対流するので、本当にじっくりとアツさを愉しむことができます。それもこの心地よさの秘密かもしれません。

ちょっと話は変わりますけど……セルフロウリュができる施設での「ロウリュしていいですか?」という、周囲とのやりとり。良いものではありますが、人によっては「実は苦手」なんていう方も少なくないかと思います。また「こんなにたくさんの量をかけてしまったらアツいかな?」とか「1杯だと、皆さん不満かな?」「3杯かけるのはアリかな?」みたいに、ちょっとドキドキしてしまったり。
(もう慣れてますよ、という方も、最初のうちはドキドキしたのでは?)

そうしたことを一切気にすることなく、ただひたすらアツさ、気持ちよさを享受できる。オートロウリュ機能の「イズネス」をチョイスしたのは、改良湯ならではの利用客への心遣いかもしれませんね。


また、「イズネス」は遠赤外線ヒーターですから、蒸気と熱い空気が体表をなぞるだけでなく、体の深部に直接届く形で遠赤外線=輻射熱も発しています。外から、そして直接体の芯にも……このサウナ室での全身のあたたまり方がスゴいのは、壁や天井のケロ材が保ってくれている熱のみならず、このヒーターもおおいに影響しているかもしれません。

ストーンが満載なのも、野趣に満ち溢れていて、いいですよね

ケロサウナ=セルフロウリュのストーブという、なんとなく「常識」っぽかった概念も、ひょっとしたら今後、さまざまな施設で覆されていくかもしれません。

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