谷川岳のふもと「日本一のモグラ駅」でアウトドア薪サウナを楽しむ

山間の無人駅に、改札から一歩も出ることなくアウトドアサウナを楽しめる施設がある! 谷川岳のふもと、ぐるりと見渡せば、四季折々で表情を変える山、山、山。雪の白から木々の緑へ……。そしてまた式を迎える。そんな自然に囲まれて状況で、薪サウナで汗をかいて、水風呂は利根川の源流。雪解け水が流れ、新緑が芽吹く中での外気浴は、冬とは趣が異なり、またひと味違う心地よさがあります。そして何より施設そのものがユニークで……楽しみは盛りだくさん。その魅力のすべてを今、ここで明らかにします。

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486段の階段を下りると、そこは……

鉄道ファンの間では昔から知られていたJR上越線の土合駅。その理由はユニークな駅の構造にあります。改札を抜けたら線路とホームが。一見、のどかな山間部の普通の駅ですが、実はものすごく独特。地上にあるのは上り線のホームのみ。下り線のホームは地下深くに潜ったトンネルの中にあるのです。

上りと下り、ホームの標高差は70メートル! 486段の階段があり、歩いていると、だんだん地底探検しているような気分になってきて、日本一のモグラ駅と呼ばれることが納得できます。

もともと単線で、上り列車も下り列車も同じ線路を走っていた上越線が、日本の高度成長期に新潟と関東を行き来する人が増えたことから複線化を決定。上り線はそのまま地上のホームを使用し、下り線は輸送時間を短縮するためにトンネルを掘って走らせることになったそうです。そのトンネルが土合駅の下にあったため、地中深くに下りホームが作られました。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という書き出しで知られる川端康成の雪国。そのモデルとされるのは上り線の新潟・湯沢寄りにある清水トンネルで長さは約9700m。土合駅の下りホームが設けられたのが新しく掘られた新清水トンネルで全長は1万3500m。清水トンネルの1.4倍の長さがあります。

下り線の地下ホームまでは改札から歩いて10分ほどかかります。薄暗く、空気はひんやり。コツコツコツ……、足音だけが響きます。ミステリアスな雰囲気が漂い、スリル満点、サスペンスドラマのようなシチュエーションに胸が高鳴ります。怖がりな人なら冷や汗をかいてしまうかも。サウナだけでなく、ぜひ体験していただきたいお楽しみです。

地下ホームのかつての運転事務室は今、ビールを熟成する貯蔵室になっていて、2022年5月にDOAI VILLAGEで開催された「もぐらビアキャンプ」では、長期熟成されたクラフトビール・もぐら熟成ビールが解禁されたそう。2023年の開催は残念ながらありませんでしたが、さて2024年は……。みなかみの水で仕込まれたビール、どんな味がするのでしょうか。興味深々、のどが鳴ります。

駅務室の名残をとどめるカフェで昭和にタイムスリップ

グランピング施設とサウナのチェックインは、かつての駅務室の名残をとどめる駅喫茶(えきっさ)「mogura」で済ませます。切符売場のカウンターがあり、壁には1985年に無人駅になる前から貼られていた駅務員向けの掲示物が。売店で販売されていた少年マンガなど、当時の雑誌が残されていて、手に取って読むことができます。まるで時が止まったまま。週刊誌のグラビアなど不適切にもほどがある気がしますし、昭和にタイムスリップした気分に浸れます。

レトロな雰囲気を満喫しながら、ゆったりくつろぐカフェとして過ごすのにもうってつけ。メニューもありきたりではありません。ここだけでしか味わえないオリジナルのラインナップが揃っています。

コーヒー、紅茶は豆、茶葉を厳選。ブルーベリースカッシュ、リンゴジュースに使われている果実はみなかみ町産。地元の工房が地元食材をベースにして作ったクラフトコーラ「源流コーラ」、ブドウのシロップ「アグリーダ」のミルクorソーダ割りといったドリンクも気になります。地ビールのラインナップも複数あり、選ぶのに悩みます。

フードメニューで人気のオリジナルホットサンドには、地元で愛されて高い支持を集めるホテルジュラクの食パンと育風堂のハムが使用されています。土日祝のみ提供されるスパイシーチキンカレーも好評。杯数限定で売切必至です。水良きところにうまいものあり。訪れた人だけが味わえる地産地消のおいしさ。食べたらわかります。無意識で笑顔になっているから。

まるで巨大なマシュマロに泊まるグランピング

グランピングエリアは中央広場を中心に、巨大なマシュマロのような「インスタントハウス」という宿泊用の部屋が弧を描くように並んでいます。なぜインスタントかというと、袋状のテントシートに空気を送り込んで膨らませ、内側をウレタンフォームで固めれば、4時間ほどでできあがるため。東日本大震災をきっかけに日本で開発され、グランピング施設での導入はDOAI VILLAGEが初めて。最大の特長は高い断熱性で、能登半島地震の発生後は被災地に1000棟以上が建てられ、住居、集会所、ボランティア拠点として活用されているという優れモノです。

宿泊時の夕食は中央広場でBBQ(秋~冬は屋内で地元食材すき焼き鍋)に舌鼓。地元産の食材が中心で、旬の野菜にイワナなどの川魚の串焼きを炭火で味わえます。そしてメインはすばり、群馬県が誇るブランド牛の上州牛! センターハウスに用意されたドリンクはアルコールを含めて飲み放題。冷蔵庫にはキンキンのビール、チューハイ、ソフトドリンクがずらり。ワイン、焼酎も用意されています。ここは天国ですか? そうでなければ楽園ですか?

モーニングは卵、ハム、野菜、チーズなど、好みの具材を挟むホットサンドを自らの手でこしらえます。コーヒーはハンドミルで、DOAI VILLAGEオリジナルブレンドの豆を、自分で挽いて味わいます。セルフだからこその楽しさ、面白さ、おいしさがあり、満たされた気持ちになれることうけあいです。

ベストなサウナ空間を自分たちで完成させる

サウナは「SAUNA BROS.vol.7」でご紹介した通り、本場フィンランドのサウナ小屋を再現したMETOSのサウナモッキで、センターハウスのすぐ横に。グリーンの外観が木々の緑と見事に調和しています。まさに自然に囲まれたサウナという佇まい。薪ストーブで煙突から出る煙もいとおかし。気分が盛り上がります。

燃料の薪はサウナ小屋の横に積み上げられていて、そこにはハンマーと薪割り台が。自分たちで薪を割り、ストーブにくべて、好みの温度に調節します。セルフロウリュができて、アロマを持ち込むのも自由。サウナに入る。それだけではありません。自分たちが楽しむのにベストな空間を、自分たちの手で完成させる。そんなサウナ体験ができるのです。間違いなく、かけがえのない思い出になるでしょう。

水風呂には谷川岳を水源とする地下水をくみ上げた天然水が満たされています。基本的にサウナ利用時は常にホースで水を注ぎっ放し。まろやかな肌当たりの軟水をかけ流しで堪能できます。

利根川の水源は町内にある谷川連峰の大水上山といわれ、冬に積もった雪が山にしみ込み、少しずつ流れ出しています。DOAI VILLAGEのすぐそばを流れる湯檜曽川も同じく谷川連峰の朝日岳を源流としていて、利根川に合流し、水の恵みを首都圏にまで届けています。「関東の水瓶」といわれるみなかみ町だけに、楽しめるのは利根川源流の水風呂。ぜいたく極まりないことです。

外気浴はグランピングエリアの好きなところにリクライニングチェアを並べて、気分を全開放! 植えられているのは湯檜曽川で発見された日本固有のヤナギ・湯檜曽柳。視線を上げれば新緑萌える谷川連峰。耳には風にゆらぐ木の葉の音、鳥のさえずり、湯檜曽川のせせらぎ。大きく伸びをして、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込めば、自然に溶け込むような感覚に。デトックス。カタルシス。普段とは違っているような時間の流れに身を任せていると、自分が生まれ変わったように感じられます。

上り電車が通る時には、車窓から手を振ってくれる人も。そうだった、ここは駅ナカだった……。駅構内にあることを忘れてしまうくらい、アウトドアにどっぷりハマれるサウナ。宿泊、日帰り利用ともに、バスタオル、フェイスタオル、ポンチョに、薪を扱うための手袋が付いていて、準備に手間暇かけずに出掛けられます。大自然の中で薪サウナを体験したい。そんな人に、ぜひ知っていただきたい施設です。

それにしても……どうやって、こんなにエモい施設が作り上げたのか? 次回はこのDOAI VILLAGEの運営会社・VILLAGE INCのチームリーダー・大木さんへのインタビューを掲載。施設の誕生秘話、みなかみ町への思いをお届けします。

DOAI VILLAGE
■住所=群馬県利根郡みなかみ町湯檜曽218-2.JR上越線 土合駅
※そのほかの詳細は公式HPよりご確認ください

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