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古くから東西を結ぶ交通の要所と栄えてきた滋賀県大津市。国土交通省認定の古都指定都市としても知られ、比良の山並みと白砂湖畔に代表される風光明媚な琵琶湖の景観が人々を魅了しています。
「8 Seas Sauna HIRA」は、そんな大津で2024年7月に誕生した関西圏では希少なアウトドアサウナ施設です。
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“湖都”で自然のぬくもりにひたるサウナ
森に囲まれた本格派フィンランド式サウナ、圧倒的熱量を誇る3台の薪ストーブ、地下水を使用した広大な水風呂……キーワードを並べるだけで行きたくなったという人も多いのでは?
「HIRA」の名が付くよう、「8 Seas Sauna HIRA」があるのは、大津の象徴である琵琶湖の西側に位置する比良地区。車であれば琵琶湖西縦貫道路「南小松」出口から3分、JR湖西線「近江舞子駅」から徒歩10~15分ほど。雑木林の中を走る2車線の道路に立っている黄色い看板が目印です(※まだGoogleマップストリートビューには反映されていないので、ご注意を! 2025年1月現在)。
その看板を「南小松」出口から来た場合は右に、「近江舞子駅」から来た橋は左に曲がって200mほど進むと右手に見えてくるロッジ風の建物がお目当ての場所。手前には、無料駐車場が30台分。正面左手には自動販売機と喫煙スペースが用意されています。
建物の正面にある扉の窓は、施設名の「8 Seas」にかけて8角形にカットするこだわりぶりで、同じく8角形のエンブレムなどデザインもおしゃれ! 玄関の両脇にはうず高く詰まれた薪が気分を盛り上げ、取材時は枯れ葉舞い散る季節であったにも関わらず、エントランスはきれいに掃除されています。そういえば、自動販売機も景観を損なわないよう木目調のラッピングが――。
“神は細部に宿る(細かい部分まで妥協せずこだわり抜くことで、全体としての完成も高まる)”と言いますから、きっとそういうことなんでしょう。今から拝見するサウナ&水風呂のクオリティに期待が高まるばかりです。
こだわりは、得てして独りよがりにもなりがちですが、出迎えてくれた支配人の長島健さんに話をお聞きすると、「8 Seas Sauna」が、いい意味でのこだわりが詰まった施設であることがうかがえました。
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ありのままの自然の中で楽しむフィンランドサウナ
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聞けば長島さんは、所属する会社(台湾や日本で飲食事業を展開する「8 Seas 株式会社エイトシーズ」)のサウナ事業の立ち上げにあたって、日本はもとよりフィンランドなど、90ヵ所(!)もの施設を視察したヘビーサウナー。
視察を重ねるごとにサウナの魅力にハマっていき、最終的に「サウナ事業を長く続けるためには、サウナ好きから愛される施設にしよう」と、本場フィンランドをリスペクトしたサウナ施設に振り切ったのだとか。
ちなみに、施設を案内する道路の看板も長島さんがフィンランドで見た鹿注意の標識にインスパイアされたもの。ほかにも、そこかしこでサウナ好きを唸らせる仕掛けが散りばめられています。
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受付を終えて、さっそくその先にある更衣室へ。4桁のパスワードを自分で設定するロッカーが男性34人分、女性24人分。シャワースペースは4室、洗面台は5台。シャンプーやコンディショナーのほか乳液など、当然のようにアメニティも充実。女性にはうれしいクレイツイオン ドライヤーを完備するほか、ウォーターサーバーもありと至れり尽くせり。玄関周りと同様、こちらも清潔に保たれています。
そして着替えを済ませると(アウトドアサウナ施設ですので水着かサウナウェア着用です、念のため)、小物用のバッグとサンダルを持って外へ。扉の外には、本場フィンランドを思わせる自然豊かな景色が広がっていました。
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まあ、とか言って、フィンランドには行ったことがないんですけど! いや~、そんなの関係なしに、とにかく絶景。 でもって圧倒的! 更衣室から奥に向かって伸びていく300㎡もの広大なスペースが目の前に現れます。駐車場に着いて建物を見たときには想像もできなかった眺望なので、友達などを連れて行く場合は情報を伏せておいた方がいいでしょう。
渓流? 棚田? 水路? 段々になって上に向かっていく水風呂の先にはサウナ小屋が見えます。左右は雑木林に囲まれ、見上げると秋の青空。晴天の中そよぐ、ちょっと冷たい風が水風呂の後のととのいにはもってこいだろうな……と想像するだけでテンションが上がりますね~。
長島さんによれば、この傾斜はもともとあったこの土地の形状を活かしたもので、これを見て段々になった水風呂の上から下に向かって水が流れ落ちる仕組みを考案。雑木林も施設を建てる前からあったもので、そのまま手を加えずに借景に。水風呂を囲む巨大な石も、整地する際に掘り出された岩石なんだそうです。
ありのままの自然の中でサウナを楽しむ――。こんなところからも、長島さんが影響を受けたフィンランドの精神が感じられます。
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地下30mから汲み上げた井戸水かけ流しの水風呂
水風呂は大きく3段で構成され、上段にある窪状の場所の最深部が1.2m。浅めの場所では寝転がってくつろげるのが、いい感じですね~。
なお、水は井戸水のかけ流しで、地下30mまで掘って湧き出した比良の天然水を使用。水温は季節によって異なりますが取材時(10月上旬)は16~17℃。
「水が下段にいくにつれて少しずつ温まるため、下の方は17~18℃くらいです」(長島さん)。
※2月現在は下段にいくにつれ水温が下がり最下段10℃だそうです!!
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水風呂の周りの外気浴スペースには、アディロンダックチェアが14脚、フルフラット可能なインフィニティチェアが12脚、ベンチが6脚と申し分なし。上下、左右、座る場所によって違った自然の表情が楽しめ、「晴れた日は上段から薄っすらと琵琶湖畔も望めます」(長島さん)。
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ちなみに、長島さんのお気に入りの場所は。琵琶湖まで望めるサウナ小屋の横のシャワー前だそう。確かにココは、上段から施設のすべてが見渡せる絶好の位置。訪れた際は、ぜひ試してみてください。
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で、いよいよサウナ室へ……。こちらの建物も扉の窓が8角形です。入口にはビート板、小物用バッグやタオルが置ける棚もうれしいポイント。言い忘れましたが、屋外履きのリカバリーサンダルのフィット感が地味〜によかった! こうしたアウトドアサウナ施設でサンダルがブカブカだと足元が不安になっちゃいますからね。
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3台の薪ストーブから放たれる熱と炎が迫力!
☆薪ストーブ正面
扉を開けると、入ってすぐ目の前にはレンガ作りの重厚な擁壁がお目見えします。どうやらこの壁によって、中が仕切られている模様。人が出入りした際に室内の熱が逃げずにすみますし、ここであえてワンクッション置くことで、“いざ未知の世界へ……”という期待が高まり、なんならフィンランドへテレポートしたような気分になれるから不思議。ありそうでなかなかないこのギミックにも、長島さんのこだわりと遊び心、そしてサウナ愛を感じました。
壁を回り込むと、3段のベンチが。定員は24名。粗目のレンガと木製の壁材によって蓄熱性も高そうです。わずかな間接照明と採光用の窓から入ってくる明かりのみが照らす空間が何とも落ち着く~。
振り返ると、そこには3台(!)もの薪ストーブが鎮座しております。これがものすごい迫力!
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薪ストーブは、日本が誇るストーブメーカー「MOKI製作所」の「茂暖(モダン)MS70」。長島さんいわく「広めのサウナ室を温めることになるため一気に3台を導入」。サウナ施設のオープンまでは少し不安もあったようですが、「十分に80℃以上まで温度を上げることができて安心しました」。
先の視察の折り、北海道釧路市にある「THE GEEK」の薪ストーブが心に刺さり、すぐに同じ「MOKI製作所」のものを探したそうで「サウナ室から見える北海道の雪景色、無骨なストーブのデザイン、丸窓から見える炎が印象的で、『8 Seas Sauna HIRA』には“これしかない!”と思いました」とは、長島さん。
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惚れ込んで導入した薪ストーブだけに、3台が同時に並ぶ姿は圧巻で、燃え盛る炎は、ゆらゆらでもメラメラでもなく、ゴウゴウという感じ。蒸気機関車の機関室を思い浮かべてくれたらわかりやすいでしょうか。
天井高は2.5mほどあるため開放感も抜群で、段差によって温度の違いも。10分毎のオートロウリュもあって体感はさらに上昇。スタッフが頻繁に薪をくべてくれるからこその安定した熱が体の芯からじんわりと温めてくれます。
上段に座って見下ろすストーブの炎も得も言われぬ安らぎを感じて、気づいたらあっという間に10分が過ぎてしまいました。
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和気あいあいと気軽に本格サウナを楽しめる
というわけで、シャワーで汗を流すと、先ほど通ってきた水風呂へ向かいます。
地下水なだけに、水のよさは言わずもがな。そして、改めて眺めがいい! 水に浸かって辺りをグルッと見渡せば、目の前すべてが緑、緑、青い空。プールのように広々とした水風呂は並ばずにOK。ととのいイスの数も十分だから、選び放題なのがまたよし。
ライトアップされた夜には昼間とはまた違った雰囲気が味わえて、SAUNA BROS.WEB連載「スケートときどきサウナ」で「8 Seas Sauna」を訪れたフィギュアスケーター、友野一希選手の言葉をお借りすれば「日が落ちた後は虫の声も鮮明に聞こえてきて。木々の音、草木の匂い……すべてに癒されました。五感で楽しめるサウナでした」という極上のととのいがココに。
「グループもいれば、カップルもいて、1人でいらっしゃった方もいて。広いので会話もしながら、それぞれがそれぞれの楽しみ方をしている。薪ストーブに、広々とした空間。これぞアウトドアサウナの醍醐味だなと思いましたね」とは友野さんの感想ですが、さすがはスケーター界随一のサウナ好き。言い得て妙です。
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実際、支配人の長島さんも視察で本場フィンランドのサウナ文化に触れて、家族や友人、あるいは地元の仲間同士が、性別や年齢に関係なく楽しみ、憩いの場として、当たり前のように生活の一部にある様子に感激。自分も「和気あいあいとみんなで気軽に本格的なサウナを楽しめる施設を作りたいと思った」というから、その思いが伝わったということでしょう。
ほかにも取材時に「サ室が広いので、気兼ねなく会話できてうれしい。京都から車で1時間ほどで来れるのでリピートしたいと思います」(Instagramを見てやってきたサウナ好きカップル)。「関西ではアウトドアサウナ施設があまりないので、ありがたいです。“映え”ます!」(地元滋賀県在住の女性2組)、「月に1~2回ほど利用させてもらっています」(お近くに住むソロの男性)など、「8 Seas Sauna」の誕生を喜ぶお客さんの声が印象的でした。
最後に「ヘビーサウナーのお客さまが気に入って、リピートしてくださっていると聞くと、本格志向のこだわりが伝わったようで私もうれしいです。今後もお客さまからのご要望もお聞きしながら少しずつ整備していければと考えております」とは長島さん。
これからの季節、連載で友野選手もご所望していたポンチョも作る予定とのこと。この辺りは冬場に雪が積もるそうなので、サウナ後は雪にダイブ――なんて、新たな楽しみが待っているかもしれません。
8 Seas Sauna HIRA
■住所:滋賀県大津市南小松1695-1
■営業時間:前10:00~後10:00(最終受付は後8:00)定休=月曜、月曜が祝日の場合は営業、翌火曜が定休に
■料金:平日=120分1,760円、180分=2,420円、土日祝=2,420円、180分=3,630円 貸切利用=平日180分58,080円(10名まで。それ以上は1名につき+5,808円)※貸切は平日のみ
全国の書店で発売中のSAUNA BROS.vol.9でも8 Saes Sauna HIRAを紹介しています。
ネットでのご購入はこちら(https://zasshi.tv/products/48306/)から
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