モイ~。
本日も祖師ヶ谷大蔵駅前にあるマイホームサウナ「自問自答」のととのいチェアに横たわりながらこの原稿をスマホでポチポチ書いています。
自問自答がオープンした2年前から設置されていたととのいチェアが遂に破損。横たわる部分の布とチェアのつなぎ目部分に体重がかかるんですよ。最初から「ここ切れそうだなぁ」と怪しく思っていて。サウナ→水風呂入った後って一刻も早くととのいチェアに横たわりたいじゃないですか。なので皆さんどちらかというと「ドカッ」と横たわるので、その度にミシミシと少しずつ千切れていってたんです。
いったいどの利用者が「最後のテープカット」儀式のようにすべて千切り終えて、横たわった時に底が抜けて「ドカッ」と床に尻モチをつくか密かに楽しみにしていました。
ただ僕以外の利用者もそのととのいチェアの状況を把握しているため、近頃は横たわるときに、フェザータッチのごとく「ソォ~」と横たわるんですよ。「黒ひげ危機一髪ゲーム」の如く、最後ととのいチェアを完全に破損させるのは誰だ!? みたいな(笑)。
店のスタッフにも言ったんですよ「チェアが完全破損する瞬間を見たいから、手入れしないでそのままにしておいて」と(笑)。
でも残念なことにその歴史的瞬間に立ち会うことはできませんでした。仕事が忙しくて10日間ほど自問自答に行けなかった時にその「時」をむかえたらしく、次に行った時には新しいととのいチェアに代わっちゃってましたね。まぁ新しいチェアのほうが断然気持ち良いのでいいんですけどね。
えーさて、今回はそんな破損チェアの話とは全く関係のない、大分県豊後大野市で今月開催された「サウナ万博2024 in豊後大野」に参加した時のレポートをしたいと思います。見どころ、感じどころがあり過ぎて写真沢山掲載しちゃいます。
ポジティブクレイジー沼田さんがまたやってくれた
今回、豊後大野市で開催されたサウナ万博2024に参加することになったのは、もうこの連載では何度となく登場している僕のポジティブクレイジー仲間・フィンランド政府観光局の沼田さんがまたしても声をかけてくれたからです。
「別府とか湯布院など温泉で超有名な大分県にあって、温泉が出ない街・豊後大野って場所があるんですよ。温泉が出ないことを逆手にとって官民一体となって【サウナのまち】として地域活性をしていてめちゃくちゃおもろいポジティブクレイジー達がいるから豊後大野行きましょう!」とまたいつものニタリ顔でアマノを誘ってくれました。
沼田さんがスゴイのは、豊後大野ツアーをプライベートツアーで訪れるのではなく、「ちゃんとお仕事」として訪れられるよう設計しちゃうところ。
10月19~20日に豊後大野で開催される「サウナ万博2024」の前夜祭として18日の夜に豊後大野市主催で「サウナトークショー」を実施。【繋がるフィンランド~サウナでつながるポジティブクレイジーたち~】という演題のもと、サウナのまち・豊後大野がサウナ大国フィンランドから学びを受けよう、という会が実施されました。
沼田さんはその講演会第一部で基調講演を行い、そして僕は第二部にトークショーパネラーの一人として登壇するという場面をいただきました!
フィンランドには2年前に1回行っただけ。サウナを絡めたイベントを川崎フロンターレ時代に実施して、今は葛飾区をホームタウンにJリーグ入りを目指すサッカークラブ・南葛SCで選手が熱波師としてサウナ施設で活動する「南葛サウナクラブ」を立ち上げ。あとは平均週5回サウナ「自問自答」に通うただのサウナ好きおじさん・アマノをこんな素敵なステージに「お仕事」として招聘してくれた沼田さん、ホント多謝! ワタクシ、サウナカマにめちゃくちゃ恵まれています。
反対されてもやっちゃった神秘「稲積水中鍾乳洞サウナ」
10月18日朝7時に羽田空港に集合し、8時の便でいざ大分へ!
9時半には大分空港に到着し、予約していたレンタカーでまず向かった先は「稲積水中鍾乳洞」。「いなずみすいちゅうしょうにゅうどう」って読みます。空港から1時間40分くらいですかね。今回の極楽サウナ旅・・・いや、仕事(キリッ!)のいきなりメインディッシュの一つがもう登場です。
稲積水中鍾乳洞は、今からおよそ2億数千年前、それこそ恐竜が生きていた時代に鍾乳洞のもとになる形(洞窟)ができたと考えられている超歴史ある場所。
鍾乳洞の入り口が発見されたのは、そんなに昔の話ではなく1976年に潜水探検隊のダイバーによる潜水調査がスタートしたとのこと。調査すればするだけどんどん奥に新たな鍾乳洞が発見され、いまだ調査中らしいです。
そんな太古の歴史を感じるミステリアスな稲積水中鍾乳洞では、何と何と併設されているサウナに入った後、鍾乳洞内の地下水に「水風呂」として入水できちゃうんです!!
稲積水中鍾乳洞に到着すると、そこには沼田さんのポジティブクレイジー仲間2人が我々を待っててくれました。
一人は豊後大野で「LAMP豊後大野」という宿泊サウナ施設の支配人をしている高橋ケンさん(通称:ケンちゃん)。ケンちゃんは豊後大野市で発足したアウトドアサウナ協議会=おんせん県いいサウナ研究所のメンバーで「サウナ万博」の仕掛け人。
もう一人は、この稲積水中鍾乳洞の支配人で「ここにサウナ作って鍾乳洞を水風呂として利用しよう!」と思いついちゃった青島善輔さん(通称:アオさん)。
もうね、容姿から放たれているポジティブクレイジーオーラに「あっオレこの人たちと気が合う」って分かっちゃう笑。なんなんですかね、このサウナ好きな人に共通するWe are the world感。
稲積水中鍾乳洞って「中国かよ!」って言うくらい全部漢字で少し堅苦しいイメージあるじゃないですか。ぜひ皆さん行ってみてください、ビックリするくらいユルイ雰囲気ですから!すごい歴史ある鍾乳洞なのに、入口をくぐるとブッダみたいな銅像が出てきたり、お寺の鐘があったり(しかも自由に突いてOK)、極めつけは「昭和レトロな映画館」風の建物があって、中に入ると映画「男はつらいよ」の寅さん映画宣伝看板がたくさん掲出されているんです。現在、葛飾区をホームタウンにするサッカークラブ・南葛SCでプロモーション部長やっている僕にとっては馴染みのある寅さんですけど、豊後大野って寅さん関係ありましたっけ??しかもその建物を通らないとサウナ、鍾乳洞に行けないという!
これ設計した責任者、熱海にある「秘宝館」の影響、絶対受けてますわ笑。良く言えば「鍾乳洞という神秘的な世界へ時空を超えてタイムトリップする」演出効果抜群、悪く言えば「何がコンセプトなんじゃい!」と突っ込みを入れたくなるつくり・・。でもこのカオス感に僕は好感持ちましたね。
そんな空間を通り抜け、施設内にあるサウナへ。サウナは全て完全予約制で1日5枠。1枠1組貸切とのこと。テントサウナを常設用に改造したサウナエリアと先月オープンした木造建物のサウナ室があります。我々はこの出来立ての木造サウナ室を利用させてもらいました。中は上段下段があり広々していて20人は入れそう。サウナは薪サウナでスタッフのアオさん自ら温度調整してくれます。「わたし、最初サウナ全然興味なかったんですよ。それが知り合いから誘われて入ったサウナ1発目でガンギマリしまして……」と薪をくべながら笑顔で話してくれます。
「そこから何とかこの鍾乳洞の水をサウナの水風呂に出来ないかと親会社に相談、交渉したのですが反対、反対で……」。
この鍾乳洞は来場された観光客の方がもちろん「歩いて見る」スポット。神秘的な鍾乳洞内部を歩いていたら、いきなり裸の人たち(もちろん水着は着用してます)が「ウヒョ~キモティ~!鍾乳洞水風呂サイコ~!」なんて言って入水していたら驚かれるし、不謹慎だと会社から反対されたそうです。
うん、そりゃそうだ。
会社の言うことは正論なんですよね。
でもそれをあの手この手でひっくり返そうとするアオさん。
最初は、サウナの水風呂としての活用ではなく、鍾乳洞内でスキューバダイビングを実施したそうです。観賞以外に「入水」した活用事例をつくってスキューバー→水風呂へ。
満場一致じゃない中で、でもとりあえずサウナ→鍾乳洞水風呂をやってみたらこれが大バズリ!!新聞、テレビなどメディアに多く取り上げられて、稲積水中鍾乳洞の認知度がグンっと上がったそうです。
これ、全国にあるどの鍾乳洞でもできるわけではなく、稲積水中鍾乳洞は全国で唯一「民間」が管理運営している鍾乳洞だから一般人の入水が可能なんですって。
豊後大野はとてつもない有効活用できる自然資源を持ってますよねー。でもその力を引き出すのは人であり、アオさんみたいな最初NGをくらっても心折れず、鍾乳洞に入水してととのった利用者の顔を思い浮かべながら企画実現のため楽しく苦労するポジティブクレイジーの存在なんですよね。
サウナ室で80℃15分間しっかり汗をかき、20mくらい先にある鍾乳洞入水ポイントへ移動。鍾乳洞内はブルーの照明でライトアップされており、さながらイタリアの青の洞窟の雰囲気。・・・・イタリア行ったことないけど笑。聞けば鍾乳洞内の水温は一年間一定で「16.3℃」なんですって。もう最高な水風呂水温じゃん!暗いので転ばないように慎重に入水。冷たすぎず温すぎずで本当に気持ちいい!暗さに目が慣れてくると水の中で動いている物体を発見。アオさん曰く「ヤマメ」とのこと。水が綺麗なところにしか生息しないヤマメが泳いでいることでどれだけ水質が良いかが分かります。しかもこのヤマメ、サウナ利用者に慣れているのか自ら僕の身体に寄ってきてツンツンしてきます。もうヤマメじゃなくてドクターフィッシュかと思いましたよ笑
今回、フィンランド大使館で働く沼田さんの同僚・フィンランド人女性のインカさんも同行していたのですが、「フィンランドには鍾乳洞自体がないので今回の体験は初めて!フィンランドでも体験できないサウナが豊後大野にある。とても素晴らしい!」とめちゃくちゃ感動してました。サウナ王国フィンランドの人をも魅了する鍾乳洞サウナは僕にとっても未体験の素晴らしい世界でした。
地域創生に必要な人材はあんがい「部外者」
鍾乳洞サウナを堪能した後、豊後大野市役所を訪れ、市長の川野文敏さんと面会。サウナを活用した街づくりについて意見交換をおこないました。豊後大野市、何がすごいって商工観光課の中に【サウナ推進室】なる部署が存在!!
職員の方と名刺交換するとサウナ推進室って名刺に記載されているんですよ。僕は自分の名刺に熱波検定Bを取得しているので「熱波師」と入れています。理由は、「熱波師」と入れているだけで受け取った側の人がこのワードに食いついてきて会話が弾むきっかけになるからです。でもこの熱波師なんかよりも「サウナ推進室」のほうがインパクトあって受け取った側が「ナヌ!?」ってなりますよね。スーパーストロングホットワード「サウナ推進室」。あ~オレも次名刺つくる時、サウナ推進室って意味もなく入れよっと。
豊後大野市は前述した通り、おんせん県大分にあって温泉が出ない街。でもそれを逆手にとって「サウナ」で街の活性を行政だけでなく、民間だけでなく、両者がタッグを組んで推進。聞けばこの取り組みを始めたのは、ほんの3年前の2021年からだと言うじゃありませんか。この推進力を担っている一人がLAMP豊後大野の支配人のケンちゃんです。ケンちゃんはもともと豊後大野の人間ではなく茨城県から移住してきました。
僕は仕事柄、色んな土地の「地方創生」の話を聞いたり見たりしてますが、多くのエリアがなかなか苦戦していますよね。理由は、その街が持ち合わせている資源をどのように活用すればよいか、一番分かっていそうな地元の方って逆に近すぎ&当たり前すぎてその資源に価値があることに気が付いていないからだと思ってます。「灯台下暗し」とでも言いましょうか。むしろ「おおっこれは資源だ!」って感じるのは、長らくその土地にいる住人の方ではなく、外の人、つまり部外者なのではと。
ケンちゃんは言ってしまえば豊後大野の部外者。でも部外者だからこそ「温泉が出ない」=「資源」と捉えることができて、温泉が出ないからこそ引き立つ「サウナ」というコンテンツを駆使して自治体、街の人を明るく楽しく繋げて巻き込んでいる感じがしました。
その活動っぷりはとても刺激になりましたね。
サウナ万博を満喫
サウナ万博2024当日はあいにくの小雨模様。
野外イベントで一番避けたいのは「雨」。長年僕が携わっているサッカーって野球と違って雨でも試合は行われるじゃないですか。一応、観客スタンドに屋根は付いてますけど、少し風が強ければめちゃくちゃ吹き込むし、昔ながらの「国体のためにつくりました」スタジアムだとメインスタンドの中央に、加藤茶のちょび髭程度しか屋根がありません。多くの人は合羽を着て試合観戦になります。まっその前に雨が降っちゃうと観客は3割くらいは減っちゃいますね。
冒頭に「あいにく」と書きましたけど、これ「サウナイベント」だとあてはまらないことが分かりました。特に「小雨」だと逆に気持ち良くて好条件って感じ!どっちにしろ水着だし、サウナ入った後に外気浴しながら上空からシトシト雨が降ってくると3割増しの多幸感が押し寄せます。
サウナ万博の会場は「里の旅リゾート・ロッジきよかわ」というアウトドアサウナが体験できる施設。施設の目の前には日本百名山の一座である祖母山を水源とした奥岳川が流れていて、この清流が今回のサウナ万博でサウナを堪能した後の水風呂となります。
全国各地から特色あるテントサウナが20基ほど集結。奥岳川沿いにずらっと並び建つテントサウナ群は圧巻です。もちろんどのテントサウナにも時間内入りたい放題となるため、もう入る前からワクワクが止まんなかったです。そうですねぇ例えるなら今年7月に宿泊した石川県金沢にあるドーミーイン「加賀の宝泉 御宿 野乃金沢」の朝食ビュッフェでカニイクラマグロ新鮮海鮮食べ放題の時の心境です。
時間内、全てのサウナに入り切ることはできなかったのですが、最高だったサウナをいくつかご紹介します。まず一つ目が「Mad saunist」スーパヒーティッドスチームというテントサウナ。テント内には2つのサウナストーブがあり、熱いんですけど名前のごとく湿度がとても高く発汗が半端ない!スチームサウナのストロング版ですね。ストーブも見たことのない形状してました。
2つ目が「AMBER」羽釜というテントサウナ。中は「和風」でイスではなくおしゃれな畳が敷いてありました。サウナストーブに釜めしのような釜と蓋がされていて、こちらも湿度高め。
サウナストーンに直接、お寺の香り=白檀の粉末をかけて、その上からロウリュするという初めてのスタイル。ナンマイダー。
3つ目が「陰キャZONE」のテントサウナ。「えっ!?何?陰キャZONEって?」ってなりますよね。今回のサウナ万博で奥岳川の一番上流側の端っこに設置されていたエリアなんですけど、テントサウナ自体はロシア製「モルジュ」のよく見かける代物だったんですが、この端っこのあまり参加者が行かないエリアにあえて「普通」のテントサウナを設置して「陰キャZONE」と称して括ることで興味をそそるという主催者側のハイセンスが素晴らしかったです。自分がもしこのエリアに名称を付けるとしたら「陰キャ?ZONE」なんて浮かばないワードですよ。
サウナ万博に大阪から一人で参加していた20代の女性と一緒になったテントサウナの中で「どのテントサウナが良かったですか?」と尋ねたら「陰キャZONEの誰も人がいないポツンと入れるサウナ」と言ってましたからね。ワードセンスで需要を生み出す術が素晴らしい!
会場となったロッジきよかわには常設の小屋サウナ(なばサウナ)もあり、これもとても良かったです。キノコの形をした建物の中に8人くらいが同時に入れるんですが、ドイツ製のこれまた見たこともない形状のサウナストーブがサウナ室の真ん中に鎮座していて、多湿なんですよ。でも高温ではないから結構長くゆっくり入っていられます。あ~将来的にこういうサウナと空間を自分の家の敷地に建てたいなー。
蒸された後に火照った身体を浸す奥岳川はこの時期水温が17~18℃。自然との一体感が素晴らしくて、頭の中にギュギュと詰まってる考え事が川の流れと共に下流に流されていく感じがしました。しかめっ面の人なんて皆無ですよ皆無。みんなトロトロにとろけた良い表情してました。
今回、豊後大野でまたまた素敵なサウナ体験ができました。
サウナが好きでなければフィンランドに興味を持たなかったし、フィンランドに興味を持たなかったらフィンランド政府観光局の沼田さんとも出会ってないし、沼田さんと出会ってなければ豊後大野には来られなかった。稲積水中鍾乳洞サウナのアオさんともサウナ万博を仕掛けているLAMP豊後大野支配人のケンちゃんとも出会ってない。
これはサウナに限らずですけど、自分の「好き」を突き詰めていくと明るく楽しい仲間との出会いや素敵な経験が待っている。これは偶然のようで実は必然出会えているような気がします。
出会いこそ、人生の全て。
それではモイモイ~。
おまけ1
おまけ2
トークショーのパネラーとして参加された「サウナ西の聖地」湯らっくす・西生社長と夜遅くまでサウナ談義。「新しいサウナ施設を手掛けている若い人たちはキラキラしていて刺激になる。今に安住せず自分ももっと前に進みたい」っていう言葉には刺激を受けました。オレももっと前進しよう!
天野春果(あまのはるか)
東京都出身。1993年からワシントン大学でスポーツマネジメントを学ぶ。帰国後は富士通川崎フットボール(現川崎フロンターレ)に就職。以降、”J最強企画屋”としてサポーターに愛されてきた。27年間勤めた川崎フロンターレを退社後、新会社Two Wheel Sports(略してTWS)を設立。代表取締役社長に就任した。
※天野春果連載「企画屋アマノ〜アイデアのととのえ方〜」はこちらから
自問自答 祖師ヶ谷大蔵店
■住所:東京都世田谷区祖師谷3丁目32−14 YAMATOYA BLD 1F
■営業時間:24時間営業
※男性専用、会員制のサウナ施設
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