モイ~。
本日はいつもの祖師ヶ谷大蔵駅前マイホームサウナ「自問自答」ではなく、少し遠出をして杉並区高井戸にある「美しの湯」地下レストルームのリクライニングチェアに横たわりスマホでポチポチ原稿書いてます。
基本は「自問自答」なんですけど、気分転換に時々違うサウナに入りたくなります。気分転換に自問自答へ行ってるのに、その気分転換の気分転換で違うサウナに行くってのも良く分からんですけど(笑)。
ここ「美しの湯」は家から自転車で30分くらいですかね、カンパチ(環状八号線)沿いにある蘆花公園を通り過ぎ、八幡山も越えひたすらチャリを漕ぎ続けると高井戸駅過ぎた先にあるスーパーマーケット「OZEKI」の横に姿を現します。
まっ俗にいう「スーパー銭湯」で料金は一番安いコースで大人1,100円(昔はもっと安かった)。このコースだとタオル、バスタオルはついてないので持参しなきゃいけないので荷物増えますけど。「美しの湯」は露天スペースがめちゃくちゃ広くて開放的! 露天風呂や低温スチームサウナも露天スペースに設置されているんですが、人通りも多いにぎやかな駅前にあるとは思えないほど周りを木々が囲み、春は「桜」、夏は「せみ時雨」、秋は「紅葉」、冬は「雪」が楽しめちゃう。露天風呂に浸かっている人ももちろんいますが、それよりも素っ裸で椅子やととのいチェアに身をゆだねてこの解放感をカラダ全身で味わっている人が多数。
僕が「美しの湯」へ行くときは、家族連れの多い休日ではなく社会人ならバリバリ働いている時間=平日昼に行くので、お客さんのほとんどは、仕事をリタイアした高齢の方が多い印象。雰囲気としては表現は悪いですけど、上野動物園のサル山にいるサルみたいな感じなんですよ(笑)。何するわけでもなく、ただただその場でひなたぼっこして時間を消費している、みたいな。この露天スペースだけ時間がゆーーっくり流れている。
そんな中に身をおいていると、いつも仕事のことでガチャガチャ頭の中を駆け巡っている「思考」も、スローダウンして頭の中もととのいチェアに横たわっているかのよう。
「時は金なり」と言いますが、この無駄使いする時間こそが人間には大事なんだろうなと。
室内浴場には20名は入れるだろうサウナがあります。上段はかなり高温でアチチアチチ。10分サウナ→20℃くらいの水風呂に浸かり、露天スペースに移動してボーーっと過ごす。で、この繰り返し笑。3~4ローテして美しの湯を後にする時には、完全に気持ちがリセットできてますからね。
ここまで「美しの湯」に関してのレポートをしていますが、今号では美しの湯ではなく(だったら最初から触れなきゃいいのに)、僕が現在プロモーション部長として活動している【南葛SC】で仕掛けた「南葛サウナクラブ」についてお届けします。
南葛SCのホームタウン・葛飾区新小岩にあるサウナの名店「サウナ&カプセルホテルレインボー 新小岩店」にて7月23日、ついにスタートした南葛サウナクラブ活動=「南葛熱波」。現役選手がサッカー選手としてプレーしながら熱波師としても定期的に活動をするという、一見、サウナ好きの僕が趣味の延長線上、つまり「遊び」でやっているように思われがちなこの企画。でも実際はサウナという「裸の付き合いができるコミュニティー形成にもっとも適した空間」を活用した「遊び心ある地域活動」なんですね。
ただこの「南葛サウナクラブ」のような選手稼働を伴う地域活動は多くのクラブで簡単にできないのが現状です。事業部がこのようなアイデアを出したとしても、「やれたら良いけど、●●から許可が出ないだろうな」で終わってしまうケースが多い。
ならば、上記した「●●」から許可をGETできれば企画は前に進むということ。
今号では、なぜ南葛SCでは今回の企画が実行できたのか。上記「南葛サウナクラブ」の裏舞台をお伝えしたいと思います。
「南葛サウナクラブ」という得体も知れないものをカタチにするために必要だったこと
前の号でも何回か「南葛サウナクラブ」について触れてますが、あらためて経緯を説明しますね。
川崎フロンターレを今年1月に退職した後、2月に自身が代表を務めるスポーツコンサル&コンストラクション会社「TWO WHEEL SPORTS」を立ち上げました。そして同月に東京都葛飾区をホームタウンにJリーグ入りを目指すサッカークラブ「南葛SC」と弊社が契約をし、僕が南葛SCのプロモーション部長として活動することになりました。
現在、JリーグクラブはJ1~J3合わせて全国に計60クラブもあります。実はフロンターレを退職するとなり、いくつかのJリーグクラブからお誘いをいただいたんですね。ただ、それらはすべてお断りしました。理由は僕の考えをカタチにしてしっかり実績を残していくためには、クラブ内「事業」スタッフのみならず、「強化」を担うGM、監督が僕の考えや行動を理解、尊重し、任せてくれないと絶対に不可能だからです。
僕の施策は一見「おふざけ」「お遊び」「選手負担大」「プレーに支障」に感じるんですよ。ちゃんとした理念と考えのもと進めていてもそれを理解、尊重、一任できる経営、運営、強化部トップは残念ながら少ないです。
南葛SCはJリーグカテゴリーではない関東リーグ一部という「J5」に所属しており、現在は専用グランドもクラブハウスもありません。ただロングスパンでクラブを構築していく最大のキーマン=「GM(ジェネラルマネージャー)」に岩本義弘さんが就いていて、ホームタウンとクラブの距離感の重要性、スポーツは「エンターテイメント」であるということを理解している人なんですね。
そしてさらにここに監督として今季から風間八宏さんが就任。風間監督というと攻撃的でエンタメ性の高いサッカーを追及している職人監督というイメージだと思いますけど、風間監督ほどクラブと地域、選手とサポーターの関係や距離感の重要性を理解、把握されている人はいないです。これは皆さん知らないだろうなぁ。
川崎フロンターレ時代、僕は風間監督と2012~2016年の5年間一緒に活動しましたけど、僕が仕掛けたプロモーションイベントで一番勢いがあったのはこの5年間です。なぜなら僕が「こういうことをやりたい」「選手、監督に協力してほしい」と思ったことは、練習場にあるクラブハウス内の監督室に行って(しかもアポなし(笑))、談笑しながら直接風間監督に伝えていました。
当時GMを務めていた庄子春男さんも「八宏と直接話してみてOKというなら進めろよ」と、僕のアイデアや企画をとても尊重してくれる人でした。GMと監督がそんな感じだから進行可否がスピーディーに判明。結果、次から次へと企画が打てましたね。しかも「サッカークラブなのになんでそんなことをやる必要があるんだ?」なんて一度も言われなかったです。風間監督からは「それぞれのポジションのプロフェッショナルがチカラを発揮してクラブは向上する」と言われ、プロモーションに関して細かく口出すことなく、事業の「プロ」として接してくれたのが嬉しかった。調子に乗って「あれもこれも」となると「アマノやりすぎ!」とは言われたけど(笑)。
南葛SCはカテゴリーこそ現在Jリーグではないですが、僕の考えを共有できて、任せてくれる「GM」と「監督」がいるため、自分のチカラを最大限引き出せるなと。特に風間さんが南葛SCの監督に就任すると分かった時は胸が熱くなりました。「また一緒に活動ができる」って。
企画が実行できるか否かは「GM」「監督」との関係性にかかっているので、ここをしっかり見極めてクラブ入りをしないと、「南葛サウナクラブ」みたいな構想を立てても、あれはダメ、これはNGばかりで前に進めなくなっちゃうんですね。
ちなみにGMの岩本さん含む「南葛SC部長会議」でこの「南葛サウナクラブ」企画を説明した際、参加メンバーは好意的でしたけど反応は「薄かった」です。たぶんその先にあるものがイメージできなかったんでしょうね笑。でも大事なのは「リスク」ばかりを並べて企画を潰すのではなく、どうやったらその面白そうな企画を実現できるか「ポジティブ」な要素でミーティングが進むことです。風間監督にいたっては「また変なこと始めたな」と笑ってました。
サッカー選手が「サッカー以外」の活動をするということ
僕がクラブ内で色々仕掛けていく際、「GM」「監督」という強化部2トップの了承が得られても、実際に活動をしていくのは「選手」になります。
クラブによっては、色々な楽しい企画を実行したくても選手の賛同・協力を得られずカタチにできない、といったことが起っていると思います。
でも実はそういうことが起こってしまう多くの理由は「選手側」にはない、と僕は思っています。選手はクラブに入団、加入する時、サッカー以外の活動、例えば地域のお祭りに出るとか駅前でチラシ配布するなどの活動に対して、何のためにその活動が必要なのかをしっかり説明すれば、みんなちゃんと理解してやります。
選手たちの「サッカー以外の活動稼働」に関する考え方は【白いキャンバス】みたいなもので、最初にクラブがその必要性、重要性を説いてクラブの方針として導けば、選手たち自身、自分のキャンバスに「サッカー選手はサッカーだけやってれば良いというわけではない」という画を描きます。
ただし! それを伝えるべきクラブスタッフが「選手にサッカー以外の活動を無理強いすることはできない」とか「サッカー以外のことを選手に求めたら選手に嫌われる」など、地域活動の必要性をしっかり説き、導くことができないと、選手たちは「サッカーだけやってればいい」という考えを自分のキャンバスに描くようになります。
そのため選手による地域活動への参加意識は【クラブスタッフ】が担っていると言えますね。日本の地域スポーツクラブの地域浸透度が遅く低い理由は、地域活動の重要性を伝えるべきクラブスタッフ自身が地域活動の重要性を理解していないこと、していたとしてもそれを伝えきる話術と想いが低調なことだと思っています。地域に必要とされるクラブとして存在するために、選手にウザがられようが嫌われようがプロのスタッフとしてその競技以外の活動の重要性を伝えきるチカラが欠如しているんです。
選手の中には最初から地域活動や社会貢献活動への参加の重要性を理解し行動する者もいますが、それはホント稀有。そういう選手は親の教育や出会ってきた指導者が良かったのでしょうね。僕が川崎フロンターレに27年間携わってきて上記したことを最初から実践できた選手は500人くらい見てきて5人いないですね。
ただ、何も描かれていなかった「白いキャンバス」にサッカー以外の活動の重要性を説きながら実践していくことを繰り返していくことで、選手は確実に理解していきます。パターンとしては、その選手が他のクラブに移籍をして地域活動内容や頻度の比較対象ができたり、現役を引退して社会に出た時に気が付くことが多いですね。在籍中に気が付いてほしいとは思いますけど(笑)。
南葛SCプロ契約選手・大前元紀の存在
今回、「南葛サウナクラブ」の活動を進めるにあたり、まず僕は全選手を集めて「地域とクラブの関係性」の説明と、この先南葛SCが地域に愛される存在になるため必要なアクションについて講義をしました。時間にして30~40分くらいですかね。
選手、スタッフに話すときに常に気を付けていることは「聞いてて眠くなるようなつまらない話をしない」ということです。こちらの伝えたいことが伝わるかどうかは、話し手のスキルが絶対的に必要です。「伝える」と「伝わる」は違いますからね。
ここは「聞き手に興味関心をもってもらう」話術と熱量が必要だと僕は思ってます。
「南葛サウナクラブ」の活動説明に関しては、その講義をした後に「興味のある選手は残ってほしい」と参加は任意としました。
理由は、南葛サウナクラブの活動は一過性のイベントではなく、今後継続してロングスパンで実施する地域活動なので、選手への強要押し付けではやりたくなかったからです。
僕の全体講義を聞いてみて、この後に話す南葛サウナクラブに関して「サッカークラブがサウナで活動するって何か面白いことになるのかな」とか「この人が色々仕掛けると言ってるなら協力してもいいかな」と自発的で前向きな考えの選手と一緒にやることが大事なため「任意」としました。
南葛SCは選手が40名超いて、そのうち外国人選手を含む8選手が「プロ契約選手」、残りの選手は「選手社員」と呼ばれ、練習後に南葛SCの営業を中心に仕事をしています。選手社員たちは普段から地域に出て街の人たちと触れ合い、街スポンサー獲得業務や街清掃活動など「サッカー以外の活動」を行っているため、「南葛サウナクラブ」の活動にも興味を持つ選手が多く、10数人の選手が説明会に残りました。プロ契約選手はサッカーの練習後フリーで、南葛SCの営業などする必要はありません。だからと言って地域活動を何もやらないかというとそんなことはなく、駅での試合告知チラシ配布などは選手社員と一緒に行っています。とはいえ、「南葛サウナクラブ」の活動説明会に任意なのに参加するプロ契約選手は一人もいないかな、と正直思ってました。
すると説明会の中に一人、プロ契約選手がいるじゃないですか! それが、大前元紀選手でした。Jリーグを好きな人ならば大前元紀の名前は聞いたことがあると思います。清水エスパルスのFWとして長年活躍し、その後、ドイツ・フォルトナデュッセルドルフでもプレーした選手です。2022年J1京都サンガでプレーした後、2023年に南葛SCに電撃移籍。現在クラブの中核選手としてプレーしています。説明会に残った選手社員メンバーも嬉しかったけれど、元紀が残ったことに驚きと共に「あっ南葛サウナクラブの活動はこれで波にのって良い方向に進むな」と感じましたね。
元紀は静岡にいた頃、サウナの聖地と言われる「サウナしきじ」のすぐ近くに住んでいたこともあり、頻繁にしきじに通っていたとのこと。もちろん元紀自体、サウナが好きということもありますが、それ以上に「プロ契約選手である自分が参加することで、多くの人にサウナクラブの活動を知ってもらえること」「選手社員だけでサウナクラブという地域活動をやるのではなくプロ契約選手である自分が加わることで選手間の一体感を生む」ということを理解したうえで説明会に残ったんですね。これはめちゃくちゃ嬉しかったなぁ。
説明会では南葛サウナクラブの活動趣旨や具体的な内容を伝えました。クラブにとって大切な地域活動をサウナを活用して「遊び心」をもって取り組む。この目標を説明会参加選手と共有して良いスタートが切れました。
7月23日、「南葛熱波」鮮烈デビュー
南葛サウナクラブを3月に立ち上げ、デビューするまでの足掛け5カ月間、けっこうみっちり熱波のトレーニングを行いました。自分たちだけでトレーニングするのは限界があるため、サウナレインボーで実際に活動をされているプロ熱波師の大森熱狼さん、安寺沢茜さんに我々の熱波師匠に就任してもらいました。お2人からは熱波師としての心得やどうやってタオルを使えば心地よい熱波を送ることができるかなど細かい指導も受け、選手たちは技術だけでなく「利用者の皆さんに安らぎの時間を提供するんだ」という意識も高まったと思います。
とにかくこの師匠の2人がとても明るく楽しいキャラクターだったため、トレーニング期間を楽しく過ごせたのも大きかったですね。実際に師匠たちがレインボーのサウナ室で熱波をする際に「実地研修」と題して助手として活動させてもらった際には「思ってた以上にスペースが狭くて自由にタオルが振れない」「高温のサウナ室内でトークして盛り上げながら熱波するのは見るのとやるののギャップがあり過ぎる」と自信喪失してましたけど(笑)。
7月頭に南葛サウナクラブ情報を解禁。メディアリリースをしましたが、「現役選手が熱波師として活動」「地元葛飾のサウナ施設と組んで地域活動」というのはやはり反響が大きかったですね。反響が大きかった分、7月23日の「南葛熱波」初日は僕も選手たちも相当緊張しました。
14:00、17:00、20:00と一日3回、選手2人1組となって熱波を行うのですが、南葛サウナクラブの活動オープニングを飾る栄えある初回14:00の回を担当した【大前元紀・楠神順平】ペアは本番1時間前から控室でドキドキそわそわ。「緊張しまくり。試合は全然緊張しないのに」と2人でずっと熱波の進行を確認し合ってました。
まぁでもいざ本番を迎えると、何千人の観客の前でプレーしているだけあってお客さんへの声掛けや盛り上げ、熱波も初回としては上々の出来だったと思います。南葛熱波後、お客さんに感想を聞いてみましたけど「実際に選手から熱波をしてもらうと、その選手に親しみがわくし、応援しに行きたくなる」、「想像以上にしっかり扇げていて気持ちよかった」など好反応! もちろんこれから色々課題は出てくるとは思いますが、まずは「クラブと地域との密接な関係づくり」をサウナを活用して展開する一歩目は進められたかなと。
えっ!? 「アマノはいつ南葛熱波デビューするのか?」ですって?
基本的に選手優先で「南葛熱波」は展開しますが、選手のスケジュールが組めなかった回は、南葛サウナクラブにクラブスタッフとして加わっているプロモーション部アマノと営業スタッフの能登(のと)のコンビで参戦させてもらいます!
日程は来月【8月13日(火)20:00回】デビュー予定なので、皆さんふるってご参加ください!(野次厳禁!)
それでは皆さんモイモイ~
サウナ&カプセルホテルレインボー新小岩店
■住所:東京都葛飾区新小岩1-49-1
■営業時間:24時間営業
■料金:3時間コース=1,700円(延長料金=30分につき250円)、普通コース(前5:00〜深0:00)=2,300円(深0:00以降深夜料金1,200円加算)、朝風呂1時間コース(前5:00〜9:00)=1,000円(延長料金=30分につき250円)
※その他、詳細はこちらからご確認ください
美しの湯
■住所:東京都杉並区高井戸西2丁目3−45
■営業時間:前9:30~後:11:30(最終受付後11:00)
■料金:[平日]大人=1,100円(深夜料金後10:00〜=900円)、子供=800円[土曜日・日曜日・祝祭日]大人=1,300円(深夜料金後10:00〜=1,100円)、子供=1,000円
天野春果(あまのはるか)
東京都出身。1993年からワシントン大学でスポーツマネジメントを学ぶ。帰国後は富士通川崎フットボール(現川崎フロンターレ)に就職。以降、”J最強企画屋”としてサポーターに愛されてきた。27年間勤めた川崎フロンターレを退社後、新会社Two Wheel Sports(略してTWS)を設立。代表取締役社長に就任した。
※天野春果連載「企画屋アマノ〜アイデアのととのえ方〜」はこちらから