サウナはさらに進化する。「TOTOPA」に見る新たな可能性③

「東京オリンピック2020大会」関連施設などがあった場所が都立公園として再整備される中で、いわばその“中核テナント”として2024年3月22日にオープンした「TOTOPA 都立明治公園店」。
目の前には国立競技場。新宿区と渋谷区のちょうど境目に位置していて、周辺の青山、表参道、千駄ヶ谷といった街は、閑静でありつつ、カルチャーやファッションにも感度の高い人々が多く暮らす、正真正銘、東京の中心エリア。

そうした背景もあって、サウナ好きはもとより、多くの人から注目や関心を集める施設です。
私たち編集部も期待に胸躍らせながらさっそく訪問してみたのですが……そこにあったのは、なんというか、まったく新しい心地よさ!

男性用フロア、女性用フロアともに、いわゆる従来の「サウナ」の楽しみ方のポイントはしっかり踏襲しつつも、さらなる独自の世界観やコンセプトをプラスした、オリジナリティーあふれる空間が広がっていました。

その魅力をリポートする3回連続のシリーズ企画。今回は、そのどれもが個性的で、かつ魅力あふれる3種のサウナ室をはじめ、いい意味で“突き抜けた”ユニークさを感じる男性用フロアをあらためてクローズアップ。どんな狙いで、いかにして生み出されたのかを“仕掛け人”たちへのインタビューから迫ってみたいと思います。
(※「1回目」=前々回記事では豊富なビジュアル=写真とともに男女フロアそれぞれのスペックや体感を詳細に。「2回目」=前回記事では“女性用フロアに込められた思い”を中心にリポートしています。未読の方は、ぜひあわせてお読みください)

目次

女性フロアは“癒し”。男性フロアは“ワクワク”(!?)に、特化した理由

前回記事に続き、まずは東京建物株式会社の黒田敏さんにうかがってみましょう。同社は今回の都立明治公園の整備事業の代表幹事団体であるとともに、(ご存じの方も多いと思いますが)スーパー銭湯チェーン「おふろの王様」を運営してきた実績もある会社です。

――女性用フロアは大分県の「鉄輪(かんなわ)むし湯」をモチーフにされたこと薬草スチームの「蒸し湯」をはじめ、女性が心身ともにくつろげる“癒しに特化した空間”になっているのが印象的です。対して、男性用フロアは、とにかく“斬新”というか、新感覚にあふれているというか……。ととのいながらもワクワクしてしまいました(笑)。

「今回、この『TOTOPA』では“新しいもの”を提案したいと考えていたんです。もちろん、気持ちよさや快適さというのは大前提として、ですが。その最大の理由は、まずは施設の規模感。たとえば私たちがこれまで展開してきた『おふろの王様』という温浴ブランドは、小さくても約700坪くらいの床面積があるんですが、今回は2フロアあわせても約270坪ほどなんですね」

国立競技場を望む公園内にさまざまな店舗等が建つ明治公園。そのうちの1棟に「TOTOPA」は入っています

――なるほど。あらためて数字で示していただけるとすごく分かりやすいですね。半分もいっていない。

「そうです。ここだけでなく、街の中での新規出店となると、従来と同じ発想やコンセプトには限界があるんです。ある意味、なにかに“特化”する必要も出てくるのではないか、と。

それで、これまでに多くのユニークなサウナ施設を手がけてこられたTTNEさん……ととのえ親方(=松尾大さん)にプロデュースに入ってもらったんですよね。

女性側(のフロア)については、より“癒し”の空間にしたいというテーマと『蒸し湯』というアイデアを持っていたので提案したところ、親方にも『“癒し”は、いいですよね』と言っていただいて。限られたスペースの中で、贅沢に広く空間を使っていただいたり、あの雰囲気や体感を具現化するためにいろいろとお知恵をお借りしたんですが……。男性側は本当にゼロから一緒に考えていただいたんですよね。

そうしたら、面白がってくださりながら、次々にアイデアが出てきて。さすがは親方ですよね(笑)。そんな中で『たくさんの“選択肢”があるというのはどうだろう?』という方向性が見えてきたんです」

東京建物の黒田敏さん。都立明治公園の整備事業全体の仕掛け人でもあります

最低でも18通り。新たな“ととのい”を五感で愉しめる空間が爆誕

――「たくさんの選択肢」。男性フロアに、サウナ室や水風呂、休憩スペースがそれぞれいくつも設けられたのは、その発想がスタートなんですね。

「はい。たとえばサウナ室が3種類あって、水風呂も冷たいものとやさしめの温度のものがあれば、それだけで6通りの組み合わせになるじゃないですか。加えて、休憩スペースが3パターンあれば、18通りの体験を楽しむことができるよね、って」

クールなルックスの「左(サ)室」温度は3つのなかでいちばん高めの設定
こちらが「右(ウ)室」マイルドな温度帯で、メディテーション感やチル感が高いですね
中央の「ナ室」流れるBGMがエモく、ドリンク持ち込み可というルールにも“なごみ”要素が

――熱や温度の差もそうですが、視覚的なものや聴覚といった“刺激”や、水風呂でいえば深さの違いみたいに、さまざまな感覚で新しい体験を得られます。

「サウナの好みは人それぞれですが、新たな体験が試せたり、最適解を自分で探せる楽しみみたいなものも提供できる。これは新しいし、可能性があるなと。

その後、ブラッシュアップを経て現在の形になっていったんですが……ここでしか得られないようなものが必ずありますし、デザイン的な斬新さだけでなく、知見からくるテクニックみたいなものも盛りこまれていて。たとえば3つに分かれたサウナ室の中央にあたる“ナ室”はボナヒーターが使われているんですが、そこで生まれる熱は左右のサウナ室にも伝わるんですよね。

いろいろなことが、まさにバチっとハマっていって。“キタ〜”って思いましたね(笑)。もちろん、これまでとはそもそもの発想が違うので、いろいろなご意見や感想、反応があるとは思うんです。でも、いったん提案してみよう、と。今後、引き続き、皆さんの声を聞きながら調整を繰り返していければいいなと思っています」

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